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第二章 ― 遥斗 ―
希望①
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その日の夕方から、優と一緒に手づくりサイトに登録して、ページを作り始めた。
優が絵を写真に撮って、データをパソコンに移した。
歪みや明るさを修整できるらしい。簡単な加工の仕方を教えてもらう。
プロフィール写真も優が撮ってくれた。
顔が載ると自分のページだって認識になる。
プロフィールのところに受賞歴がいるというので、賞状を引っ張り出し、優が片っ端から入力してくれた。
こう見ると、結構取ったなぁ。
『頑張りすぎだ』という郁人先生の言葉を思い出す。
コンクールに出さねばという切迫感に襲われていたが、もう少し余裕を持ってもいいのかもしれない。
「なんか立派なプロフィールになった! こうなったら、作品も登録したくなりますねー」
そう言って、優は油絵の写真を貼りつけた。
「先輩、ここにこの絵の説明を書いてください」
優が言うので、俺はその絵を描いたときの気持ちを文にしたら、「わー、先輩ってポエマーだったんですねー」と評された。
「………ポエマー。お前、バカにしてるだろ?」
「全然! あー、消しちゃダメ! 素敵じゃないですか! 全部このテイストで行きましょうよ」
「結構めんどくさいな」
「売るために、手間を惜しんじゃいけません」
「まぁ、たしかにそうだな」
他人がこんなに一生懸命になってくれているのに、本人が頑張らなければどうするというんだ。
俺は優に言われるがまま、絵の説明文やサイズ、条件を入れていった。
「売り値はどうするんですか?」
「さっぱり見当もつかないな」
他のページを見ても安いのからべらぼうに高いものまであって、価格はあってないようだ。
優と相談して、油絵は2万円、水彩画は2500円にしてみた。
これで売れるのかとつぶやくと、明日詳しい人に話を聞く手配をしていると言う。
さすがの行動力だ。
「遥斗先輩も来ます?」
「明日は一日バイトだ。悪いな」
行きたくはあったけど、バイトは休めない。
「いいえー。私がしっかり責任持って話を聞いてきますね!」
任せてくださいと力強く胸を叩いた優の頭を、くしゃっとなでた。昨日郁人先生がやってくれたように。
優が帰ってからも、できるところの作業は進めた。
新しいことを始めるのは楽しい。
しかも、登録料無料だから、プラスはあってもマイナスはない。
土曜日もバイト以外は、ほとんどこの作業をしていた。
日曜日の朝、割と早くから優が来た。
また朝食のおにぎりを持って。
「だから、そんなことしなくていいって言っただろ?」
「いいじゃないですか。私が一緒に食べたいんです!」
そう言って、パッと顔を赤らめるから、俺も照れて妙な雰囲気になる。
「な、なんでもいいから食べましょう!」
「あ、あぁ」
優が絵を写真に撮って、データをパソコンに移した。
歪みや明るさを修整できるらしい。簡単な加工の仕方を教えてもらう。
プロフィール写真も優が撮ってくれた。
顔が載ると自分のページだって認識になる。
プロフィールのところに受賞歴がいるというので、賞状を引っ張り出し、優が片っ端から入力してくれた。
こう見ると、結構取ったなぁ。
『頑張りすぎだ』という郁人先生の言葉を思い出す。
コンクールに出さねばという切迫感に襲われていたが、もう少し余裕を持ってもいいのかもしれない。
「なんか立派なプロフィールになった! こうなったら、作品も登録したくなりますねー」
そう言って、優は油絵の写真を貼りつけた。
「先輩、ここにこの絵の説明を書いてください」
優が言うので、俺はその絵を描いたときの気持ちを文にしたら、「わー、先輩ってポエマーだったんですねー」と評された。
「………ポエマー。お前、バカにしてるだろ?」
「全然! あー、消しちゃダメ! 素敵じゃないですか! 全部このテイストで行きましょうよ」
「結構めんどくさいな」
「売るために、手間を惜しんじゃいけません」
「まぁ、たしかにそうだな」
他人がこんなに一生懸命になってくれているのに、本人が頑張らなければどうするというんだ。
俺は優に言われるがまま、絵の説明文やサイズ、条件を入れていった。
「売り値はどうするんですか?」
「さっぱり見当もつかないな」
他のページを見ても安いのからべらぼうに高いものまであって、価格はあってないようだ。
優と相談して、油絵は2万円、水彩画は2500円にしてみた。
これで売れるのかとつぶやくと、明日詳しい人に話を聞く手配をしていると言う。
さすがの行動力だ。
「遥斗先輩も来ます?」
「明日は一日バイトだ。悪いな」
行きたくはあったけど、バイトは休めない。
「いいえー。私がしっかり責任持って話を聞いてきますね!」
任せてくださいと力強く胸を叩いた優の頭を、くしゃっとなでた。昨日郁人先生がやってくれたように。
優が帰ってからも、できるところの作業は進めた。
新しいことを始めるのは楽しい。
しかも、登録料無料だから、プラスはあってもマイナスはない。
土曜日もバイト以外は、ほとんどこの作業をしていた。
日曜日の朝、割と早くから優が来た。
また朝食のおにぎりを持って。
「だから、そんなことしなくていいって言っただろ?」
「いいじゃないですか。私が一緒に食べたいんです!」
そう言って、パッと顔を赤らめるから、俺も照れて妙な雰囲気になる。
「な、なんでもいいから食べましょう!」
「あ、あぁ」
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