全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

おせっかいな優②

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 実際にここに行って、絵が描けたら、楽しいだろうな。
 さわやかな空気感を味わい、はしゃぐ優がいて……。
 いや、ないな。

 できもしない妄想をして、顔をしかめる。
 それに気づかず、優は熱心に写真の説明を続けた。

「あ、そうだ。この写真。ここに写っているカフェから見下ろした景色なんですよ。いい眺めでしょ? 先輩にも見せてあげたかったなぁ」
「……俺はこれで十分だ」

 旅行など行けるはずもない。
 優の楽しそうな様子を垣間見るだけで十分だ。

 優は、散々写真を解説したあと、満足したように「また明日!」と帰っていった。

 明日って土曜日だろ。
 そそっかしい優に苦笑する。

 優が置いていった写真をまた眺める。
 俺が描くとしたら、これかな?
 
 写真を見ながら、スケッチしてみる。

 これはこれで練習にはなるな。
 やっぱりどこかスケッチしに行ってみようか。人があまり来ないところに。

 風景画を描いていると、リアルな景色を描きたくなってきた。
 そうしていると真奈美が弁当を届けにきた。

「めずらしいわね。写真を模写してるの?」
「あぁ、たまにはこうした風景画を描きたくなったんだ」
「優ちゃんの撮った写真?」
「あぁ、なかなかセンスあるよな?」
「……ずいぶん、仲がよくなったのね」

 絵を描きながら、問われるがまま答えていたが、そんなことを言われて、チラリと真奈美を見る。

「別に仲はよくないだろ」
「そうかなー? 仲いいじゃなかったら、ずいぶん気を許してるのね」
「そうか?」

 真奈美には疑問形で答えたけど、言われてみれば、そうかもしれない。
 気をつけないと足を掬われそうだ。
 優にではなく、自分の心に。

「ふーん、ま、いいけどね」

 興味を失ったように真奈美はつぶやくと、「じゃあ、またね」と立ち去った。





 翌朝、昨日スケッチした絵を油絵で描いてみようと思い、キャンバスに下絵を描いていると、「おはようございまーす!」といつものように優が来た。
 だけど、今日は土曜日だ。

 驚いて見やると、優も制服ではなく、裾の長いシャツにジーンズ姿だ。
 やっぱり色気はないなと思いつつ、「どうしたんだ? 忘れ物か?」と聞く。

「ふふっ、いろいろいいもの持ってきました!」

 優は楽しそうに笑って、部屋の中をキョロキョロした。そう言う通り、大きな紙袋を持っている。

「ここ以外にコンセントってないですか?」
「こっちにあるが……」
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