全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

広がる世界①

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「今日は打って変わって、しらすご飯です。カルシウム取ってくださいね」と続けるので、そんなに俺に心を砕いてくれなくていいのにと思う。



 その日の夕方、真奈美が用があるからと、いつもより早くに弁当を届けに来た。
 そこへ優がやってくる。
 
 優と俺とのやり取りに真奈美が目を丸くする。

「驚いたー。遥斗が食べ物の感想を言うのを初めて聞いたわ」

 『躾けられてる』なんて言われて、ムッとする。

 真奈美が去ると、優は写真をプリントアウトし始めた。
 気になって見ていると、空の写真が見えた。

「いい色だな」

 その色がとても綺麗で思わず口に出してしまった。

「でしょでしょ? 私、春の空って好きなんです。この淡い綺麗な色が」
「あぁ、いいな」

 うれしそうに優が言うから、つられて顔がほころぶ。
 絵に活かしてみたい色で、「それ、貸してくれないか?」と言うと、優はこくこくと頷いた。

「遥斗先輩も空が好きなんですか?」

 先輩も、ということは優も空が好きなのか?
 そういえば、初めて会ったときには朝焼けを撮りに来ていたな。

「そうだな。ここから見える一番美しくて変化があるものが空だからな」
「確かにそうですね。私、いろんな空が好きですけど、一番好きなのが夕方の辺りが一瞬青く染まる瞬間なんです。あれ? 空ではないかな?」
「あぁ、わかる。この教室も一瞬青くなるときがある。暗くなる直前なのか、いつもそうなるわけではないが……」

 夕方のそんな瞬間が、俺も好きだった。
 その感覚が共有できるのはうれしい。

 俺はパレットの色を混ぜて、キャンバスに塗った。

「こんな感じの色だろ?」
「わぁ、まさにそうです! でも、描きかけの絵に塗っちゃっていいんですか?」
「こういうテイストで塗っていってもおもしろいかと思ってな」
「へー、ステキですね」

 この色で塗ったことはなかった。
 優と話していると自分の世界が広がる気がした。
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