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第一章 ― 優 ―

心配してくれてた?③

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 土曜日、お兄ちゃんと待ち合わせしたカフェに向かう。
 店内を見回すと、先に来ていたお兄ちゃんが手を上げた。
 隣には綺麗な女の人が微笑んでいる。

 友達って、女の人だったの!?
 さてはお兄ちゃん、私をダシに使ったな。

 お兄ちゃんがやたらと協力的だった意味がわかった。
 隣に並んで座っているお兄ちゃんがうれしそうだ。

 とはいえ、紹介してくれた彼女はさすがに手づくりサイトに詳しくて、私は作ったばかりの遥斗先輩の商品ページを見せて、アドバイスをもらった。

「本当に綺麗な子ねー。これだけ美形なら顔出しはありだけど、もうちょっと顔が隠れた方がいいかな。トラブルの元だし。商品紹介の文は雰囲気あっていいわね。こういう風に商品に特徴づけるのが肝心なの」

 方向性は間違っていなかったみたいで、ほっとする。
 でも、遥斗先輩の写真は撮り直そう。これ以上トラブルはいらないから。
 
 その他にも細々とアドバイスをもらって、ノートに書きとめる。
 先輩にちゃんと説明しないといけないからね。

 はー、すごく勉強になった。
 
 お礼を言って、二人と別れた。
 お兄ちゃんは「お礼に飯を奢るよ」と彼女に言っていた。
 頑張れ、お兄ちゃん!


 
 私は帰るついでに、川辺に寄ってみた。
 こないだ満開だった桜並木は、すっかり新緑に変わっていて、さわやかな風景になっていた。
 
 そうだ、遥斗先輩と新緑を見に行こうって約束していたわ。
 明日、商品ページを作ったら、先輩と一緒にここに来るのはどうかな?
 先輩だって、あの部屋に閉じこもりっきりは身体に悪いよね。




 「あーっ、肩こった! これくらい作り込めばいいんじゃないですか?」

 翌日、朝から部室に来て、遥斗先輩と並んでパソコンの前に座って、昨日もらったアドバイスを元に作業をしていた。
 とりあえず、今写真に撮ってある絵はすべてコメント付きで登録した。

「そうだな。十分だ」

 先輩も伸びをしながら答えた。慣れない姿勢で身体が固まったらしい。

「ねーねー、先輩。じゃあ、これから川辺に新緑を描きに行きませんか?」
「はぁ? じゃあって、どっから出てきたんだ」
「昨日、帰りに寄ったら、新緑がとても綺麗だったんです。新緑が綺麗なのはこの一瞬だけですよ?」

 そう言うと、先輩はちょっと心惹かれた顔をした。
 よし、もうひと押し。

「それに前に約束したじゃないですか!」
「あれはお前が勝手に……」
「お弁当も持ってきたし、あそこで食べましょうよ。新緑をバックに遥斗先輩の写真も撮りたいな」

 そう言うと、先輩はしぶしぶ頷いた。「まったくお前は次から次へと……」とぶつぶつ言いながら。

「やった!」

 気が変わる前にと、先輩を急かして、イーゼルや画材の準備をしてもらう。

 あ、水彩絵の具を持っていくんだ。
 水は? と思ったら、ちゃんとペットボトルに水を汲んで持っていくようだ。



 先輩と一緒に外に出る。
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