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第一章 ― 優 ―
心配してくれてた?②
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写真の加工の仕方を先輩に教えてあげる。
先輩は呑み込みが早くて、すぐにサクサクと加工できるようになった。
まぁ、明るさや色味、歪みを調整するだけだしね。
プロフィール写真には、あざといけど、遥斗先輩の横顔を貼ってみる。
「遥斗先輩、詳しくは明日お兄ちゃんの友達に聞くけど、ここのプロフィールのところに受賞履歴を書いておきましょうよー」
「そんなのいちいち覚えてない」
「えぇー! 賞状とかないんですか?」
「賞状か……。それだったらある」
先輩は暗室の方に行って、ゴソゴソやってから、いくつもの筒を抱えて戻ってきた。
「もしかして、全部賞状なんですか?」
「あぁ」
「すごーい!」
私は先輩が筒から賞状を出して広げるのを見て、片っ端からサイトのプロフィールページに写していった。
「なんか立派なプロフィールになった! こうなったら、作品も登録したくなりますねー」
私は目についた油絵の写真を貼りつけた。
「先輩、ここにこの絵の説明を書いてください」
私は椅子を先輩に譲って、後ろから覗き込む。
淡い色から暗い色までの青のグラデーションが綺麗な水の中の絵みたい。キラキとした波紋も美しい。
ここは深海。
誰もいないし、誰も来ない。
ひとりきり。
誰にも邪魔されないで
僕はここで自由を享受する。
「わー、先輩ってポエマーだったんですねー」
「……ポエマー。お前、バカにしてるだろ?」
「全然! あー、消しちゃダメ! 素敵じゃないですか! 全部このテイストで行きましょうよ」
「結構めんどくさいな」
「売るために、手間を惜しんじゃいけません」
「まぁ、たしかにそうだな」
先輩は絵の説明のあとに、サイズや額なしなどの条件も書き込んでいく。
他に絵を売っている人のを参考にしている。
「売り値はどうするんですか?」
「さっぱり検討もつかないな」
実際、売っている絵を見ても数千円から十万円越えのものもあって、まちまちだ。
「叔父さんのギャラリーだといくらぐらいなんだ?」
「うーんと、新人だと一、ニ万円ぐらいかな? でも、絵の大きさにも依るんですよね。う~ん、ニ万円にしてみたらどうですか? どうせ油絵は客寄せだし」
「そうなのか?」
「本命は水彩画なんです。これが定期的に売れたらよくありません?」
「そりゃいいが、そんな簡単に……」
「だから、明日詳しい人に聞くんですって。遥斗先輩も来ます?」
「明日は一日バイトだ。悪いな」
「いいえー。私がしっかり責任持って話を聞いてきますね!」
任せてくださいと力強く胸を叩いた私の頭を、先輩はくしゃっとなでた。
先輩は呑み込みが早くて、すぐにサクサクと加工できるようになった。
まぁ、明るさや色味、歪みを調整するだけだしね。
プロフィール写真には、あざといけど、遥斗先輩の横顔を貼ってみる。
「遥斗先輩、詳しくは明日お兄ちゃんの友達に聞くけど、ここのプロフィールのところに受賞履歴を書いておきましょうよー」
「そんなのいちいち覚えてない」
「えぇー! 賞状とかないんですか?」
「賞状か……。それだったらある」
先輩は暗室の方に行って、ゴソゴソやってから、いくつもの筒を抱えて戻ってきた。
「もしかして、全部賞状なんですか?」
「あぁ」
「すごーい!」
私は先輩が筒から賞状を出して広げるのを見て、片っ端からサイトのプロフィールページに写していった。
「なんか立派なプロフィールになった! こうなったら、作品も登録したくなりますねー」
私は目についた油絵の写真を貼りつけた。
「先輩、ここにこの絵の説明を書いてください」
私は椅子を先輩に譲って、後ろから覗き込む。
淡い色から暗い色までの青のグラデーションが綺麗な水の中の絵みたい。キラキとした波紋も美しい。
ここは深海。
誰もいないし、誰も来ない。
ひとりきり。
誰にも邪魔されないで
僕はここで自由を享受する。
「わー、先輩ってポエマーだったんですねー」
「……ポエマー。お前、バカにしてるだろ?」
「全然! あー、消しちゃダメ! 素敵じゃないですか! 全部このテイストで行きましょうよ」
「結構めんどくさいな」
「売るために、手間を惜しんじゃいけません」
「まぁ、たしかにそうだな」
先輩は絵の説明のあとに、サイズや額なしなどの条件も書き込んでいく。
他に絵を売っている人のを参考にしている。
「売り値はどうするんですか?」
「さっぱり検討もつかないな」
実際、売っている絵を見ても数千円から十万円越えのものもあって、まちまちだ。
「叔父さんのギャラリーだといくらぐらいなんだ?」
「うーんと、新人だと一、ニ万円ぐらいかな? でも、絵の大きさにも依るんですよね。う~ん、ニ万円にしてみたらどうですか? どうせ油絵は客寄せだし」
「そうなのか?」
「本命は水彩画なんです。これが定期的に売れたらよくありません?」
「そりゃいいが、そんな簡単に……」
「だから、明日詳しい人に聞くんですって。遥斗先輩も来ます?」
「明日は一日バイトだ。悪いな」
「いいえー。私がしっかり責任持って話を聞いてきますね!」
任せてくださいと力強く胸を叩いた私の頭を、先輩はくしゃっとなでた。
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