全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

胸が痛い⑤

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「あぁ、わかっている。女房はただ担任として大人として遥斗に一生懸命だっただけだし、もちろん遥斗にはそんなつもりは毛頭なかった。ただの子どもだったのに、俺が勝手に嫉妬していただけなんだ。最低だな」

 先生……。

 大人は思ったより万能じゃない。思ったより悩みもがいていることに気がついて愕然とする。

「女房に頼まれて、この高校の理事長に口を利いたんだ。俺の叔父だから。そうして出てきた条件がこないだ言ったコンクールで賞を獲れというものだったんだ。できて間もないこの高校に箔をつけるために」
「そうだったんですね……」

 本人に断りもなく事情にふれてしまうのは遥斗先輩に悪いと思いながらも、聞けてよかったとも思ってしまう。
 それに、迷惑だ、嫉妬していると言いながら、和田先生はちゃんと遥斗先輩の居場所を作ってあげていたんだ。

「それでも、俺なりに遥斗のことは気にしていたつもりだったが……全然足りなかったんだな。せめて画材や出品料のことは理事長に掛け合うよ」
「ありがとうございます! 食べ物のことは佐伯家が全面バックアップするので大丈夫です」

 私が胸を張ると、和田先生がギョッとした顔をした。

「佐伯が、じゃなくて、佐伯家が、なのか?」
「はい! 両親公認です」

 それを聞いた先生が笑い出した。

「ハハハッ お前っておもしろいなー」

 私の肩をバンバン叩いて、笑い転げる。
 そんなに笑うとこあった?

「そういえば、先生、あのパソコンで手づくりサイトに登録して、絵を売る許可がほしいんですが」

 先生が笑いを治めたところでそう聞くと、しげしげと私を見つめて、先生が言った。

「お前、いろいろ考えつくなぁ」
「だって、絵が売れたら遥斗先輩はもっと自由になれるじゃないですか」
 
 それに嫌なこともしないで済む。

「それだったら、俺が許可しよう。写真同好会の活動の一環として」
「そんなの、いいんですか?」
「いいさ。写真を撮ってアップするんだろ? 社会勉強にもなって、いいんじゃないか?」
「ありがとうございます! それじゃあ、早速登録してみよう」
「出た、電光石火! 俺もお前に負けないように、画材代をもぎとってくるよ」

 和田先生はまた快活に笑った。
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