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第一章 ― 優 ―
遥斗先輩の事情④
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「そのうち、真に受けた子が遥斗のところに来るようになったわ。そして、遥斗はそれを受け入れた」
「遥斗先輩はどうしてそこまでして……?」
「知らないわ。聞いても教えてくれないし。遥斗は誰にも心を開かなったのよ。抱くのも丁寧だけど必要最低限のことしかしないし、キスさえしてくれないのよ?」
生々しい話に私は首を横に振り続けることしかできなかった。
「聞きたくなかった? こんな話? 軽蔑する?」
真奈美先輩は色っぽく笑った。
聞きたくはなかった。でも、軽蔑するとは違う。
私は黙ったまま、また首を横に振った。
「そんな状態が続いて、私たちは感覚が麻痺していた。あなたが来るまでは」
「私?」
「そう。健全の塊のような優ちゃんがあそこに出入りするようになって、遥斗は急速に変わったわ。なんか人間らしくなった。そして、この状態の異常さに気づいてしまった」
真奈美先輩はふうっとため息をついた。
「だから、こないだはイジワルをしちゃったの。あなたが来るとわかってて、遥斗に抱いてって言ったの。遥斗は焦っていたわ。悪いことしちゃった」
わざとだったんだ……。
私に気づかれるように。
でも、なんで?
私が真奈美先輩を見つめると、先輩は真剣な表情になって言った。
「あんなイジワルをしておいて言うのもなんだけど、遥斗を見捨てないであげてほしいの」
「えっ? 見捨てるつもりはありませんよ?」
「でも、もうすぐ約束の1ヶ月が経つでしょ? それに、さっきみたいな子たちが来ても大丈夫?」
言われて、そんな約束だったことをすっかり忘れていたことに気づく。
「あー、遥斗先輩に期限延長するって言ってなかったです。……さっきみたいなことは、遥斗先輩が不本意なら、止められるようにします」
「どうやって?」
視線を鋭くして真奈美先輩に問われる。
そっか、それを止めるってことは真奈美先輩とも……。
真奈美先輩はやっぱり遥斗先輩のことが好きなのかな? 好きじゃないと毎日お弁当を持ってこれないよね?
と考えて、自分も同じことをしているのに気づいた。
いやいや、私はまだ1ヶ月も経ってないし、そういうのと違うし。
「私はもういいのよ? そろそろちゃんとした彼氏もほしいし、来年卒業だから、そんなに遥斗にかまってられないし」
「遥斗先輩はどうしてそこまでして……?」
「知らないわ。聞いても教えてくれないし。遥斗は誰にも心を開かなったのよ。抱くのも丁寧だけど必要最低限のことしかしないし、キスさえしてくれないのよ?」
生々しい話に私は首を横に振り続けることしかできなかった。
「聞きたくなかった? こんな話? 軽蔑する?」
真奈美先輩は色っぽく笑った。
聞きたくはなかった。でも、軽蔑するとは違う。
私は黙ったまま、また首を横に振った。
「そんな状態が続いて、私たちは感覚が麻痺していた。あなたが来るまでは」
「私?」
「そう。健全の塊のような優ちゃんがあそこに出入りするようになって、遥斗は急速に変わったわ。なんか人間らしくなった。そして、この状態の異常さに気づいてしまった」
真奈美先輩はふうっとため息をついた。
「だから、こないだはイジワルをしちゃったの。あなたが来るとわかってて、遥斗に抱いてって言ったの。遥斗は焦っていたわ。悪いことしちゃった」
わざとだったんだ……。
私に気づかれるように。
でも、なんで?
私が真奈美先輩を見つめると、先輩は真剣な表情になって言った。
「あんなイジワルをしておいて言うのもなんだけど、遥斗を見捨てないであげてほしいの」
「えっ? 見捨てるつもりはありませんよ?」
「でも、もうすぐ約束の1ヶ月が経つでしょ? それに、さっきみたいな子たちが来ても大丈夫?」
言われて、そんな約束だったことをすっかり忘れていたことに気づく。
「あー、遥斗先輩に期限延長するって言ってなかったです。……さっきみたいなことは、遥斗先輩が不本意なら、止められるようにします」
「どうやって?」
視線を鋭くして真奈美先輩に問われる。
そっか、それを止めるってことは真奈美先輩とも……。
真奈美先輩はやっぱり遥斗先輩のことが好きなのかな? 好きじゃないと毎日お弁当を持ってこれないよね?
と考えて、自分も同じことをしているのに気づいた。
いやいや、私はまだ1ヶ月も経ってないし、そういうのと違うし。
「私はもういいのよ? そろそろちゃんとした彼氏もほしいし、来年卒業だから、そんなに遥斗にかまってられないし」
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