58 / 171
第一章 ― 優 ―
遥斗先輩の事情③
しおりを挟む
真奈美先輩は、校庭を通り、裏門を出る。
学校から出るとは思っていなかったので、「あのー」と真奈美先輩に問いかけると、先輩はすぐ前の大きな倉庫みたいなところを指差し、「あそこ、家なの」と言った。
倉庫の前の駐車場にはトラックが並び、出たり入ったりしている。
そうか、真奈美先輩のお家は仕出し弁当屋さんだって言っていたな。
倉庫の横の小さなドアを開けると階段になっていて、そこを登っていく。
二階は居住スペースになっているようで、真奈美先輩は無言でドアを開け、リビングに通してくれた。
「今の時間は誰もいないの。リンゴジュースしかないけど」
ダイニングテーブルの前に座らされて、ジュースを出してもらう。
真奈美先輩も向かい側に座って、両手でブリッジを作って、その上に顎を乗せた。
「私ね、高校デビューだったの」
唐突に話し出した真奈美先輩の意図がわからず、はぁと頷いた。
「高校に入ってすぐ告られて、有頂天になって付き合った人がいたの。1年も付き合ったのよ? 処女も捧げて、尽くして、わかったのは二股かけられてたってこと。しかも、私の方が遊びだった……。バカみたいよね?」
初恋もまだなお子さまな私にはどう返していいかわからず、首を横に振った。
「私、悔しくて悔しくて、なにを思ったのか、その頃、超美形だって騒がれてた遥斗に彼氏のフリを頼んだの。遥斗はちょうどその頃いろいろ困っている時期だったみたいで、食事と引き換えに引き受けてくれた。それが始まり」
それを聞いて、真奈美先輩がここに連れてきた意味がようやくわかった。
遥斗先輩のことを話してくれているんだ。
「その頃、私はやけになっていたし、傷ついていたし、自信をなくしていた。それで、遥斗に抱いてって頼んだの」
ひゅっと息を呑む音が聴こえた。私が立てた音だった。
こないだの喘ぎ声が頭の中で蘇る。
私は頭を振った。
そんな私の様子を見つめながらも、お構いなく真奈美先輩は話を続けた。
「遥斗は妙に律儀で、食べ物をもらっているから逆らえなかったんでしょうね。嫌嫌、本当に嫌嫌、私を抱いてくれたわ。それが元カレにバレて、おもしろおかしく言いふらされたの。遥斗は食べ物をあげると抱いてくれるんだと」
貼り付けたような笑みを浮かべて真奈美先輩は淡々と語る。
学校から出るとは思っていなかったので、「あのー」と真奈美先輩に問いかけると、先輩はすぐ前の大きな倉庫みたいなところを指差し、「あそこ、家なの」と言った。
倉庫の前の駐車場にはトラックが並び、出たり入ったりしている。
そうか、真奈美先輩のお家は仕出し弁当屋さんだって言っていたな。
倉庫の横の小さなドアを開けると階段になっていて、そこを登っていく。
二階は居住スペースになっているようで、真奈美先輩は無言でドアを開け、リビングに通してくれた。
「今の時間は誰もいないの。リンゴジュースしかないけど」
ダイニングテーブルの前に座らされて、ジュースを出してもらう。
真奈美先輩も向かい側に座って、両手でブリッジを作って、その上に顎を乗せた。
「私ね、高校デビューだったの」
唐突に話し出した真奈美先輩の意図がわからず、はぁと頷いた。
「高校に入ってすぐ告られて、有頂天になって付き合った人がいたの。1年も付き合ったのよ? 処女も捧げて、尽くして、わかったのは二股かけられてたってこと。しかも、私の方が遊びだった……。バカみたいよね?」
初恋もまだなお子さまな私にはどう返していいかわからず、首を横に振った。
「私、悔しくて悔しくて、なにを思ったのか、その頃、超美形だって騒がれてた遥斗に彼氏のフリを頼んだの。遥斗はちょうどその頃いろいろ困っている時期だったみたいで、食事と引き換えに引き受けてくれた。それが始まり」
それを聞いて、真奈美先輩がここに連れてきた意味がようやくわかった。
遥斗先輩のことを話してくれているんだ。
「その頃、私はやけになっていたし、傷ついていたし、自信をなくしていた。それで、遥斗に抱いてって頼んだの」
ひゅっと息を呑む音が聴こえた。私が立てた音だった。
こないだの喘ぎ声が頭の中で蘇る。
私は頭を振った。
そんな私の様子を見つめながらも、お構いなく真奈美先輩は話を続けた。
「遥斗は妙に律儀で、食べ物をもらっているから逆らえなかったんでしょうね。嫌嫌、本当に嫌嫌、私を抱いてくれたわ。それが元カレにバレて、おもしろおかしく言いふらされたの。遥斗は食べ物をあげると抱いてくれるんだと」
貼り付けたような笑みを浮かべて真奈美先輩は淡々と語る。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる