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第一章 ― 優 ―

おせっかいは迷惑なものです④

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 家に帰ると、部屋をごそごそ漁って、水彩画セットを取り出す。

 あ、パステルもあった。
 先輩使うかな?

 叔父さんの影響で、一時期絵を描いていた。っていうか、すぐ壊滅的に才能がないのがわかって、ほとんど画材を集めていただけな感じだったけど。
 そもそも、絵を見ることは好きだけど、別に描くことは好きじゃないと気づいて止めた。
 ちょうどその頃、あの写真に出会って、カメラに転向したんだった。

 そうだ、油絵具もあったから、遥斗先輩にあげよう。
 そういえば、画材って結構高いけど、先輩はどうしているんだろう? キャンバスも先輩が使っているようなサイズのものは高いよね……。
 もしかして、だからよりいっそうお金がなかったりして。
 ……そうかも。
 やっぱりお金を稼ぐ必要があるわ!

 お兄ちゃんから、来週末、手作りサイトで稼いでいるという友達を紹介してもらうことになった。
 絵を売るなら、描くのに時間がかかって高価になる油絵より、量産できそうな水彩画がいいんじゃないかと思って、先輩に描いてもらおうと思ったのだ。

 題材はどうしようかな。
 ふと庭を見ると、お母さんが育てている薔薇が目に入った。ちょうど満開だ。
 お花がいいかも!
 いろんなお花を描いてもらおう!
 華やかになるし、いいわ。

「お母さーん、明日庭のお花をちょっともらってもいい?」

 リビングにいたお母さんに話しに行く。

「いいけど、どうするの?」
「遥斗先輩に描いてもらおうと思って」
「あら、それは素敵だわ。お母さんも見てみたい」
「私も遥斗先輩が描く水彩画を見たことがないから楽しみ! それにお花を描いているのも見たことないし」

 遥斗先輩はいつも風景画か抽象画を描いている。気分で変えているのか、描きかけの絵がいくつも壁に立てかけてあった。

「明日持っていくの?」
「うん、そのつもり」
「じゃあ、お花はお母さんが用意してあげるわ。優に任せると大味な花束ができそうだし」

 反論しようとしたけど、自分で想像してもそうなりそうだったから、ぶーたれる。

「……じゃあ、お花は任せるよ」

 ついでにお花の写真を撮ろうっと。

 私は庭に出て、みずみずしい春の花たちの写真を撮った。



 翌日も朝早く起きて、お弁当作り。
 目覚めはいい方なので、早起きは苦にならない。

「優が自らお料理する日が来るなんて思わなかったわ」

 お母さんが感動している。
 朝ごはん用に今日はおむすびを握っているから、ついでに家族分も作ってあげる。
 三角おにぎりを握るのは粘土遊びのようでおもしろい。
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