46 / 171
第一章 ― 優 ―
おせっかいは迷惑なものです③
しおりを挟む
「あ、先輩、パン屋さんは? パン屋さんなら居座られることもないし、パンをもらえるし、いいんじゃない? おにぎり屋さんっていうのもありますよ?」
「それはいいな。ここから近いし。あ、でも、電話かweb登録か……」
「電話かけるなら貸しますよ?」
私はスマホを取り出した。
「ありがとう」
先輩は他のバイト先の情報を見たあと、やっぱりおにぎり屋さんがよかったようで、そこに決めたようだ。
私はスマホのロックを解除して、電話ボタンを押して、先輩に渡した。たどたどしい手つきで先輩は番号を入れていく。
スマホを使ったことがないみたいに。
電話すると、今日の午後に面接に来てほしいと言われたらしい。履歴書を持って。
「履歴書だったら、ここでダウンロードできるみたいです。ついでに入力しちゃえば? あ、写真撮ってあげる」
スマホで写真撮って、データをパソコンに読み込ませようとして、はたと止まった。
送れない。
「遥斗先輩、ついでだから、メールアドレス取っちゃいましょう」
遥斗先輩の名前でwebメールを登録する。
「先輩、パスワードを入れてください。なんでもいいけど、ちゃんと覚えておいてくださいね」
遥斗先輩が入力する間、目を逸らす。
「よし、メールアドレスできた! これを履歴書にコピーして……」
早速、できたてのメールアドレスに写真を送る。
「先輩、ここをこうするとメールが見れますから。ほら、私のメールが来た」
私は、写真をダウンロードすると、ソフトで加工して、履歴書に貼り付けた。
「はい、じゃあ、履歴書に入力してください」
そう言って、席を替わる。
「お前って本当に行動力すごいな……」
気がつくと、あっけにとられた先輩がいた。
あー、また突っ走っちゃった……。
「すみません。猪突猛進って、よく言われます」
「お前のための言葉みたいだな」
遥斗先輩が吹き出した。
あ、ウケた。
今日はよく笑うね、先輩。
先輩が入力した履歴書をプリントアウトする。
「便利だな」
「そうですよ。せっかくあるんだから、使わなきゃ」
「そうだな」
これで面接の準備はバッチリだ。
私は満足げに頷いた。
「あ、そうだ。先輩って、水彩画描けますか?」
「そりゃ描けるが、今度はなにを企んでいるんだ?」
疑わしそうに先輩は私を睨めつけた。
それに答えずに、さらに質問する。
「得意?」
「まぁまぁな」
「じゃあ、水彩画描いてください!」
「画材がない。だいたいなんで……」
「じゃあ、明日持ってきますから!」
「明日も来るんかよ」
先輩が顔を顰める。
そんな顔しても無駄ですよー。
「お弁当持ってくるから、描いてくださいね! あ、これ、今日のお弁当。それじゃあ、私はもうそろそろ行きますね。面接頑張ってください」
言いたいことだけ言って、私は荷物をまとめると、「ちょっと待て」とか言っている先輩に手を振り、家に帰った。
「それはいいな。ここから近いし。あ、でも、電話かweb登録か……」
「電話かけるなら貸しますよ?」
私はスマホを取り出した。
「ありがとう」
先輩は他のバイト先の情報を見たあと、やっぱりおにぎり屋さんがよかったようで、そこに決めたようだ。
私はスマホのロックを解除して、電話ボタンを押して、先輩に渡した。たどたどしい手つきで先輩は番号を入れていく。
スマホを使ったことがないみたいに。
電話すると、今日の午後に面接に来てほしいと言われたらしい。履歴書を持って。
「履歴書だったら、ここでダウンロードできるみたいです。ついでに入力しちゃえば? あ、写真撮ってあげる」
スマホで写真撮って、データをパソコンに読み込ませようとして、はたと止まった。
送れない。
「遥斗先輩、ついでだから、メールアドレス取っちゃいましょう」
遥斗先輩の名前でwebメールを登録する。
「先輩、パスワードを入れてください。なんでもいいけど、ちゃんと覚えておいてくださいね」
遥斗先輩が入力する間、目を逸らす。
「よし、メールアドレスできた! これを履歴書にコピーして……」
早速、できたてのメールアドレスに写真を送る。
「先輩、ここをこうするとメールが見れますから。ほら、私のメールが来た」
私は、写真をダウンロードすると、ソフトで加工して、履歴書に貼り付けた。
「はい、じゃあ、履歴書に入力してください」
そう言って、席を替わる。
「お前って本当に行動力すごいな……」
気がつくと、あっけにとられた先輩がいた。
あー、また突っ走っちゃった……。
「すみません。猪突猛進って、よく言われます」
「お前のための言葉みたいだな」
遥斗先輩が吹き出した。
あ、ウケた。
今日はよく笑うね、先輩。
先輩が入力した履歴書をプリントアウトする。
「便利だな」
「そうですよ。せっかくあるんだから、使わなきゃ」
「そうだな」
これで面接の準備はバッチリだ。
私は満足げに頷いた。
「あ、そうだ。先輩って、水彩画描けますか?」
「そりゃ描けるが、今度はなにを企んでいるんだ?」
疑わしそうに先輩は私を睨めつけた。
それに答えずに、さらに質問する。
「得意?」
「まぁまぁな」
「じゃあ、水彩画描いてください!」
「画材がない。だいたいなんで……」
「じゃあ、明日持ってきますから!」
「明日も来るんかよ」
先輩が顔を顰める。
そんな顔しても無駄ですよー。
「お弁当持ってくるから、描いてくださいね! あ、これ、今日のお弁当。それじゃあ、私はもうそろそろ行きますね。面接頑張ってください」
言いたいことだけ言って、私は荷物をまとめると、「ちょっと待て」とか言っている先輩に手を振り、家に帰った。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
僕《わたし》は誰でしょう
紫音
青春
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※第7回ライト文芸大賞奨励賞受賞作品です。
※表紙イラスト=ミカスケ様
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ノーパン派の沼尻さんが俺にだけ無防備すぎる
平山安芸
青春
クラスメイトの沼尻(ヌマジリ)さん。ちょっとミステリアスな雰囲気が魅力の美少女。
クールビューディー、学校のアイドル、高嶺の花。そんな言葉がよく似合う、文句のつけようがない完璧な女子高生。
ただし露出狂である。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる