全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

なにそれっ!②

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「私のことじゃ、ないの。あとで話すね」

 心配してくれる菜摘ちゃんにどうにかそれだけを告げると自分の席に座った。
 まもなく授業が始まる。
 菜摘ちゃんも頷いて、席についた。



「で、どうしたの?」

 聞きたくて仕方がなかったようで、お弁当を広げるやいなや、菜摘ちゃんが口を開いた。
 朝の私たちのやり取りを知らないさやちゃんはポカンとしている。

「朝ね、優が泣きそうな顔をして教室に入ってきたの。理由はあとで説明するって」

 菜摘ちゃんがさやちゃんに補足する。

「なるほど。で、なにがあったの?」

 さやちゃんは頷いて、優しく聞いてくれた。

「あのね……朝、遥斗先輩のところに行ったら、連休中あんまり食べてなかったみたいでぐったりしてたの」

 その様子を思い出して、私はギュッと目をつむった。
 考えるだけで泣きそうになる。
 冷静になろうとしながら、遥斗先輩から聞いた話をした。

「そうなんだ。そんなことが……」
「でも、優が悪いわけじゃないじゃん」
「そうだよ。かわいそうだけど、優が落ち込むことないじゃん」

 衝撃を受けたような二人の表情。それでも、私を慰めてくれようとする。

「でも、私はもしかしたらと思っていたのに確かめなかったの。バイトに行くって言ってたから大丈夫かなと思って」
「そこまで優が責任感じなくてもいいんじゃない?」
「そうそう。ただの先輩でしょ?」
「だけど……」
 
 私は俯いた。
 そう、知り合ったばかりのほとんどなにも関係ない先輩。でも、でも……。

「優しいね、優は」
「おせっかいなだけだよ…。でも、今回はもっとおせっかいをしたらよかった」
「しょうがないよ。今度、連休があったら気にしてあげたらいいじゃん」
「うん……そうだね。ごめんね。連休明けに暗い話になって」

 ゴールデンウィークの楽しい話をしたかったはずなのに、私に付き合ってくれていた優しい友達に私は謝る。
 二人は笑って首を振った。

「そんなの全然いいよー、友達でしょ?」
「そうだよ。優が落ち込んでるのは嫌だし」
「ありがと! 二人とも大好き!」

 私はようやく笑顔になった。

「そうだ、おみやげ持ってきたの!」

 話題を変えようとして、軽井沢のおみやげを取り出した。

「なにそれ、かわいい!」
「いろんな味のチョコなの」
「えー、楽しみ! 私も沖縄のおみやげを持ってきた」
「私も買ってきたよ」
「菜摘ちゃんはどこみやげなの?」
「そうだ! どこに行ったの?」

 私たちは今度は菜摘ちゃんの恋バナに夢中になった。

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