全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

ゴールデンウィーク③

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 いい考えだと思ったのに、叔父さんは渋い顔をする。

「そうなの? 遥斗先輩はいろんな賞を取っているみたいだけど、宣伝にならない?」
「うーん、多少はなるかもしれないが、そういうもんじゃないんだよな。まだネットで売った方がいいんじゃないか? 手っ取り早くお金を稼ぐなら」
「ネット?」
「今は個人が直接売れるサイトがいくらでもあるだろ? 手作りサイトでもいいし。あざといやり方だが、この顔なら、描き手の写真でも載っけとけばいい値段で売れるんじゃないか?」

 なるほどー。それは考えもしなかった。

「それにギャラリーだと、それなりの大きさのものが必要だが、額付きでせいぜい数万円にしかならないが、ネットなら小作品でも額なしで売れるし、なんなら絵を取り込んで印刷してポスターにしてもいいんじゃないか?」
「叔父さん、すごい!」
 
 次々と提案が出てきて、尊敬の眼差しで見ると、叔父さんは照れたように笑った。

「いや、大した知識じゃないから、やるならちゃんと考えてやらないといけないけどな」
「そうだ。子どもだけでやらないで、ちゃんと大人と相談しろよ?」

 黙って聞いていたお父さんも付け加えた。

「俺の知り合いに手作りサイトで稼いでいるやつがいるから、今度聞いといてやるよ」

 お兄ちゃんもそう言ってくれる。
 大人が加わるとこんなにも心強い。
 遥斗先輩の周りにもこんな大人たちがいたらよかったのに。



 軽井沢での滞在はいつも通り楽しかった。
 ちょうど桜が満開でお花見をして、写真を撮って、展望カフェからの眺めを楽しんで写真を撮って、もちろんみんなの楽しそうな写真も撮った。三脚を立てて、毎年恒例の全員集合の写真も撮った。
 毎日温泉に入って、肌がつるつるだし、のんびりした。

 おみやげも買った。
 菜摘ちゃんとさやちゃんには、キャンディみたいにカラフルな包装紙に包まれている丸いチョコレート。見た目がむちゃくちゃかわいくて、しかも美味しいの。
 遥斗先輩にはもうちょっと腹持ちが良さそうなものと思って、ラスクを選んだ。
 あ、真奈美先輩にもチョコを買った。タイミングが合えば渡したいな。

 楽しかった旅行もあっという間に終わって、連休の最終日のお昼に家に帰ってきた。
 あー、明日から学校かー。
 やだなぁ。

 勉強がそれほど好きじゃない私は、ちょっと憂鬱。でも、友達に会えるのはうれしい。

 ふと、あの綺麗な顔が思い浮かんだ。
 この休みの間に心は落ち着いた。
 真奈美先輩とどうあれ、私は遥斗先輩を放っておけないんだから、仕方がない。
 遥斗先輩は、このお休みはバイト三昧だったのかなぁ。それとも、やっぱり絵を描いていたのかな?

 翌日、そんなのん気なことを考えていた自分を呪った。
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