上 下
35 / 171
第一章 ― 優 ―

ゴールデンウィーク②

しおりを挟む
 お母さんが促すと、「あ、そうそう、いつもと一緒じゃなかったわ。優にはひとり部屋を用意して、正人さんたち夫婦の部屋も用意したんだった」と叔母さんが慌てて言った。
 去年までお母さんと私が一緒の部屋で、お父さんとお兄ちゃんがひとり部屋だったのだ。

「優はもう高校生だもんね」

 そう言われるとなんだか面映い。

「あんまり変わってないけどね」
「そんなことないもん!」
 
 お兄ちゃんがからかうように笑うから、私はムキになって否定した。
 あー、これが子どもっぽかったかも。

「もう少し落ち着きが出たら……いや、優にはそのままでいてもらいたい気もするし……」

 叔父さんがそうつぶやいた。
 なんか菜摘ちゃんたちに言われたのと同じようなことを言われてる。

(私……もう少し大人になろう!)

 そう心に誓った。



 それぞれ荷物を部屋に置いてきて食堂に集合すると、夕食を食べながら、お互いの近況を報告し合った。

「それで、写真同好会は楽しいか?」

 食後のコーヒーを飲みながら、叔父さんは途中だった話を振ってくれた。
 私は飲んでいたカフェオレのカップを置くと、部屋から持ってきていたファイルを取り出した。

「すごく楽しいよ! 部室に高性能なプリンターがあって、見て、こんなに綺麗にプリントアウトできるの!」

 叔父さんにファイルを渡して、写真を見てもらう。

「確かに、これは綺麗だな。しかも、優、腕を上げたじゃないか。どれもいい写真だ」

 叔父さんに褒められて有頂天になる。叔父さんはプロだから、良くないと思ったものを決して良いとは言わない。

「やったぁ! ちょっと自信あったんだ。特にこれとこれ。こっちは市のコンテストに応募したんだよ」

 例の遥斗先輩の横顔の写真を指差す。

「うん、雰囲気があっていいな。それにしても、この子はどこかのモデルか? ずいぶん綺麗な顔だな」

 それを聞いて、お父さんが苦笑する。

「その子はうちの家族の目下の関心事なんだよ。優も恵子も夢中でな」
「夢中じゃないわよ!」
「お父さん!」

 お母さんと私がお父さんに抗議する。

「だって、毎日その子の話題ばかりじゃないか」
「お父さん、焼きもち?」
「そうじゃない!」

 キョトンとしている叔父さんに、遥斗先輩のことを話した。
 そして、叔父さんにはさらに遥斗先輩の絵の素晴らしさを見てもらおうと、撮ってきた絵の写真を見せる。

「なるほど、これは早熟だな。これで高校生とは恐れ入る」

 叔父さんは絵を見て唸った。

「実物はもっと迫力があるのよ!」

 当たり前だけど、写真ではなかなかリアルな絵の良さが伝わらない。

「実物を見てみたいな」

 仕事の顔つきになって、叔父さんはつぶやいた。
 それを見て、私はひらめいた。

「先輩の絵を叔父さんのギャラリーに置いてもらうことはできない?」
「置くことはできるけど、申し訳ないが、売れないぞ?」

 遥斗先輩に圧倒的に足りないのはお金。それを好きな絵で稼げればいいんじゃないかと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

Y/K Out Side Joker . コート上の海将

高嶋ソック
青春
ある年の全米オープン決勝戦の勝敗が決した。世界中の観戦者が、世界ランク3ケタ台の元日本人が起こした奇跡を目の当たりにし熱狂する。男の名前は影村義孝。ポーランドへ帰化した日本人のテニスプレーヤー。そんな彼の勝利を日本にある小さな中華料理屋でテレビ越しに杏露酒を飲みながら祝福する男がいた。彼が店主と昔の話をしていると、後ろの席から影村の母校の男子テニス部マネージャーと名乗る女子高生に声を掛けられる。影村が所属していた当初の男子テニス部の状況について教えてほしいと言われ、男は昔を語り始める。男子テニス部立直し直後に爆発的な進撃を見せた海生代高校。当時全国にいる天才の1人にして、現ATPプロ日本テニス連盟協会の主力筆頭である竹下と、全国の高校生プレーヤーから“海将”と呼ばれて恐れられた影村の話を...。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

[1分読書]彼女を寝取られたので仕返しします・・・

無責任
青春
僕は武田信長。高校2年生だ。 僕には、中学1年生の時から付き合っている彼女が・・・。 隣の小学校だった上杉愛美だ。 部活中、軽い熱中症で倒れてしまった。 その時、助けてくれたのが愛美だった。 その後、夏休みに愛美から告白されて、彼氏彼女の関係に・・・。 それから、5年。 僕と愛美は、愛し合っていると思っていた。 今日、この状況を見るまでは・・・。 その愛美が、他の男と、大人の街に・・・。 そして、一時休憩の派手なホテルに入って行った。 僕はどうすれば・・・。 この作品の一部に、法令違反の部分がありますが、法令違反を推奨するものではありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...