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第一章 ― 優 ―
ゴールデンウィーク①
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連休初日、お兄ちゃんが下宿先から帰ってきた。
お兄ちゃんが住んでいるのは千葉だから、1時間半くらいで帰ってこれる。
明日から旅行だから、お母さんが帰ってくるなりお兄ちゃんを捕まえて、買ったけど使ってない服とか小物はないか問いただす。
なんのことだかわからないお兄ちゃんは目を白黒させていた。
でも、押入れをあさると、出てくるわ出てくるわ。
シャツ、ジャージ、キャップ、下着まで、値札がついたままのものがわんさかあった。
「なんでこんなに着ないのに買うの!」
お母さんがちょっと怒り気味に言った。
お兄ちゃん、とんだとばっちりだね。
こないだのことがあって、普通に服を差し入れられる気がしない私は静観していたんだけど、お母さんの勢いにびっくりした。
結局、大きな紙袋いっぱいになった衣類の山に途方に暮れた。
(どうしよう……)
翌日から私たち家族はお父さんの車で軽井沢に出発した。
渋滞を避けるために午後遅く出発したけど、やっぱり道は混んでいる。
昨日は、訳もわからず荷物あさりをされたお兄ちゃんに事情をぽつりぽつり語る。
「まだ高2なのにそれは気の毒だなぁ」
基本的にうちの家族はお人好しだ。
お兄ちゃんも同様で、遥斗先輩の状況にとても同情してくれて、なんなら部屋に置いてあるもので必要なものがあれば持っていっていいと言う。
さらに「どこか出かけたいところがあるなら、車を出してやってもいいぞ?」と言ってくれる。
さすがお兄ちゃん! 優しい!
招待券がある美術館とか連れていってくれたら、遥斗先輩の負担もなく絵が楽しめるよね?
お父さん、お母さんに頼むのは遥斗先輩的にハードル高いだろうし、お兄ちゃんぐらいならうんと言ってくれるかな?
と、思いかけて、それより気まずいことになっているのを思い出す。
あー、私、本当にバカだなぁ。普通にしていたらバレなかったはずなのに。動揺しすぎ……。
連休が明けたら、元に戻れるかな?
夕食前に着いた軽井沢のペンションでは、一年ぶりの叔母さんがにこやかに出迎えてくれた。
「正信叔父さん! ひさしぶり!」
先に着いて出迎えてくれた叔父さんに駆け寄る。
「おぉ、優は相変わらず元気だなぁ」
正信叔父さんは目を細める。
「聞いて! 学校で写真同好会を作ったの! でね、そこにあるプリンターがすごくて……」
「優、落ち着け」
荷物も置かないうちにしゃべりだした私を叔父さんがどうどうとなだめる。
「本当に優は正信が好きだなぁ。俺も写真同好会を作ったっていうの初耳だぞ?」
お父さんがあきれたようなちょっと拗ねたような声で言った。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
家だとお母さんにいろいろしゃべっているから、お父さんにも話している気になっていた。
みんな苦笑して、私を見ていた。
「とりあえず、部屋に荷物を置いてきたら? いつもの部屋を用意してあるから」
叔母さんがそう言った。
「そうね。優、行きましょ」
お兄ちゃんが住んでいるのは千葉だから、1時間半くらいで帰ってこれる。
明日から旅行だから、お母さんが帰ってくるなりお兄ちゃんを捕まえて、買ったけど使ってない服とか小物はないか問いただす。
なんのことだかわからないお兄ちゃんは目を白黒させていた。
でも、押入れをあさると、出てくるわ出てくるわ。
シャツ、ジャージ、キャップ、下着まで、値札がついたままのものがわんさかあった。
「なんでこんなに着ないのに買うの!」
お母さんがちょっと怒り気味に言った。
お兄ちゃん、とんだとばっちりだね。
こないだのことがあって、普通に服を差し入れられる気がしない私は静観していたんだけど、お母さんの勢いにびっくりした。
結局、大きな紙袋いっぱいになった衣類の山に途方に暮れた。
(どうしよう……)
翌日から私たち家族はお父さんの車で軽井沢に出発した。
渋滞を避けるために午後遅く出発したけど、やっぱり道は混んでいる。
昨日は、訳もわからず荷物あさりをされたお兄ちゃんに事情をぽつりぽつり語る。
「まだ高2なのにそれは気の毒だなぁ」
基本的にうちの家族はお人好しだ。
お兄ちゃんも同様で、遥斗先輩の状況にとても同情してくれて、なんなら部屋に置いてあるもので必要なものがあれば持っていっていいと言う。
さらに「どこか出かけたいところがあるなら、車を出してやってもいいぞ?」と言ってくれる。
さすがお兄ちゃん! 優しい!
招待券がある美術館とか連れていってくれたら、遥斗先輩の負担もなく絵が楽しめるよね?
お父さん、お母さんに頼むのは遥斗先輩的にハードル高いだろうし、お兄ちゃんぐらいならうんと言ってくれるかな?
と、思いかけて、それより気まずいことになっているのを思い出す。
あー、私、本当にバカだなぁ。普通にしていたらバレなかったはずなのに。動揺しすぎ……。
連休が明けたら、元に戻れるかな?
夕食前に着いた軽井沢のペンションでは、一年ぶりの叔母さんがにこやかに出迎えてくれた。
「正信叔父さん! ひさしぶり!」
先に着いて出迎えてくれた叔父さんに駆け寄る。
「おぉ、優は相変わらず元気だなぁ」
正信叔父さんは目を細める。
「聞いて! 学校で写真同好会を作ったの! でね、そこにあるプリンターがすごくて……」
「優、落ち着け」
荷物も置かないうちにしゃべりだした私を叔父さんがどうどうとなだめる。
「本当に優は正信が好きだなぁ。俺も写真同好会を作ったっていうの初耳だぞ?」
お父さんがあきれたようなちょっと拗ねたような声で言った。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
家だとお母さんにいろいろしゃべっているから、お父さんにも話している気になっていた。
みんな苦笑して、私を見ていた。
「とりあえず、部屋に荷物を置いてきたら? いつもの部屋を用意してあるから」
叔母さんがそう言った。
「そうね。優、行きましょ」
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