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第一章 ― 優 ―
なんか新鮮だな⑤
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「そんな顔をするな。気にしてやってくれというだけだ。遥斗の世界を広げてくれるのは有り難いよ」
落ち込む私の頭をぽんと叩いて、慰めてくれた。
「あと他にNGな話題はありますか?」
この際、聞いておきたい。
和田先生はちょっと考えて、ためらいながら口を開いた。どこまで話そうか
「そうだな……。遥斗には母親しかいないんだが、母親のことは話題にしない方がいいな」
あぁ、やっぱりお母さんとなにかあるんだ。
「わかりました。あの……お金がないってことは 服とかどうしているんですか?」
考えたら、遥斗先輩の制服姿しか見たことがない。学校だから当たり前だと思っていたけど、休みの日も制服を着ていたよね?
「あー、どうしているんだろうな……。気がつかなかった。そこに洗濯機はあるし、シャワー室があるから生活はできると思っていたけど」
先生が気まずそうな顔をした。
さやちゃんが言ってた『女の子に貢がせて……』という噂を思い出した。
もしかして生活用品とかももらっているのかな。
「お兄ちゃんの服とか遥斗先輩は使うかなぁ?」
私がつぶやくと、和田先生が頷いたけど、「あいつ、見栄っぱりだから、うまく差し入れてくれな?」と釘を刺された。
そうだよねー。どうやったら遥斗先輩のプライドを傷つけないで快適に暮らせるようになるかなぁ。
お母さんにも相談してみよう。
「もちろんです。なにか考えます」
「俺ももうちょっと気をつけるようにするよ」
私たちは頷きあった。
和田先生とはそこで別れて、家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり。お弁当の評判はどうだった?」
「あー」
そういえば、お花いっぱいのお弁当を持って、意気揚々と出かけたんだった。
もうそんなことすっかり忘れていた。
「花が多すぎって言われた」
「ほら、やっぱり! 言ったでしょ? バランスが大事だって」
「うん……」
他事を考えていた私は生返事をした。
「優、どうかした?」
「うん……」
「優?」
「……お兄ちゃんの使ってない服とかあるかな?」
大学からひとり暮らしをしているお兄ちゃんの持ち物はほとんど部屋に置いたままだったはずだ。
「それなりにあると思うけど、どうしたの?」
私は今日聞いた遥斗先輩の話をした。
数百円も惜しむような状況に胸が痛んだ。
好きな絵さえも見られないなんて……。
「そうだったの……」
お母さんは痛ましげな顔をした。
でも、すぐ表情を変えて、明るく言った。
「今度の連休にお兄ちゃんの部屋を片づけがてら、なにか使えそうなものを探そうか?」
「うん!」
ゴールデンウィークにお兄ちゃんも戻ってくるから、聞いてみよう。
落ち込む私の頭をぽんと叩いて、慰めてくれた。
「あと他にNGな話題はありますか?」
この際、聞いておきたい。
和田先生はちょっと考えて、ためらいながら口を開いた。どこまで話そうか
「そうだな……。遥斗には母親しかいないんだが、母親のことは話題にしない方がいいな」
あぁ、やっぱりお母さんとなにかあるんだ。
「わかりました。あの……お金がないってことは 服とかどうしているんですか?」
考えたら、遥斗先輩の制服姿しか見たことがない。学校だから当たり前だと思っていたけど、休みの日も制服を着ていたよね?
「あー、どうしているんだろうな……。気がつかなかった。そこに洗濯機はあるし、シャワー室があるから生活はできると思っていたけど」
先生が気まずそうな顔をした。
さやちゃんが言ってた『女の子に貢がせて……』という噂を思い出した。
もしかして生活用品とかももらっているのかな。
「お兄ちゃんの服とか遥斗先輩は使うかなぁ?」
私がつぶやくと、和田先生が頷いたけど、「あいつ、見栄っぱりだから、うまく差し入れてくれな?」と釘を刺された。
そうだよねー。どうやったら遥斗先輩のプライドを傷つけないで快適に暮らせるようになるかなぁ。
お母さんにも相談してみよう。
「もちろんです。なにか考えます」
「俺ももうちょっと気をつけるようにするよ」
私たちは頷きあった。
和田先生とはそこで別れて、家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり。お弁当の評判はどうだった?」
「あー」
そういえば、お花いっぱいのお弁当を持って、意気揚々と出かけたんだった。
もうそんなことすっかり忘れていた。
「花が多すぎって言われた」
「ほら、やっぱり! 言ったでしょ? バランスが大事だって」
「うん……」
他事を考えていた私は生返事をした。
「優、どうかした?」
「うん……」
「優?」
「……お兄ちゃんの使ってない服とかあるかな?」
大学からひとり暮らしをしているお兄ちゃんの持ち物はほとんど部屋に置いたままだったはずだ。
「それなりにあると思うけど、どうしたの?」
私は今日聞いた遥斗先輩の話をした。
数百円も惜しむような状況に胸が痛んだ。
好きな絵さえも見られないなんて……。
「そうだったの……」
お母さんは痛ましげな顔をした。
でも、すぐ表情を変えて、明るく言った。
「今度の連休にお兄ちゃんの部屋を片づけがてら、なにか使えそうなものを探そうか?」
「うん!」
ゴールデンウィークにお兄ちゃんも戻ってくるから、聞いてみよう。
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