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第一章 ― 優 ―

おせっかいの出番④

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 てへっと笑う私に無言で和田先生が促すので、私は説明した。

「写真同好会に入ればあの部屋を使っててもおかしくはないでしょ? でも、他の人が写真同好会を作ったら、もしかしたら追い出されるかもしれませんよって言ったんです」

 それを聞いて、和田先生は深いため息をついた。

「これ以上、遥斗の居場所を奪うようなことはしないでやってくれ……」
「逆ですよ! 居場所を確保しようと……」
「でも、奪われる恐怖を与えただろ?」
「あ……」

 家に帰りたくない遥斗先輩。もしかして、あそこにしか居場所はないの?

(私はまた独善的な考えで最低なことをやっちゃった……。ごめんなさい、遥斗先輩……)

 うつむいてしまった私の頭をポンポン叩き、和田先生がなぐさめるように言った。

「まぁ、あいつがあそこにいていい理由を作ってやったのはいいことだよ。むしろ、俺がもっと早く思いつけばよかった」
「私、遥斗先輩の邪魔はしませんから……」
「わかってる。たぶん、遥斗もわかってる。だから、名前を書いたんだろう。じゃないと今頃は荷物をまとめて、他の教室をよこせって言ってきているだろうな」

 和田先生が苦笑する。

「先生は遥斗先輩の事情を知ってるんですか?」
「あぁ、言えないけどな」

 しっかり釘を刺される。
 そりゃそうね。先生がベラベラ生徒の個人的事情をしゃべるわけないわよね。
 でも、それを聞いて、安心する。
 少なくとも、遥斗先輩には大人の味方がいるんだと。

「私、1ヶ月間お昼を用意する代わりに、遥斗先輩に写真のモデルをお願いすることになったんです。で、夜は真奈美先輩が用意しているんですよね? 遥斗先輩はそんな生活をずっと……?」
「ずっとではないな。たぶん、1年の半ば辺りからか? 声をかけても大丈夫だとしか言わないし」
「でも、こんな生活、身体を壊しちゃいます!」
「そうだな。なんとかしてやりたいが……俺では力が足りないんだよ」

 和田先生は自嘲した。その姿は苦しそうで、それ以上はなにも言えなかった。私は話題を変えた。

「そうだ、同好会の申請書はありますか?」
「あぁ、こんなに早く来るとは思ってなかったけど、さっきもらっといてよかったよ」

 一枚の申請書を渡される。
 これを書くだけでいいんだ。
 和田先生が机を貸してくれたから、渡された紙に記入していく。
 代表者? 私よね? 会員は遥斗先輩と真奈美先輩。2年と3年を従えている感じでなんかすごい。

「先生、これでいいですか?」
「あぁ、顧問に俺の名前を書いて明日出しておくよ」
「明日? 今日じゃダメなんですか? 誰のところに持っていけばいいんですか?」
「お前、せっかちだなぁ」
「時は金なりって言いますし」

  和田先生があきれたように私を見た。
 よくあるこのシチュエーション。
 だって、止まっているのがもったいないんだもん。
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