一夜限りのつもりだったのに、癒やし系イケメンに捕まりました。

入海月子

文字の大きさ
上 下
15 / 18

15. ちゃんとわかった。

しおりを挟む
 部屋に入るなり、聡太は口づけてきた。
 ある意味、デフォルトの聡太に安心する。
 こないだのしょんぼりとした聡太は、もう見たくない。

「今日はうれしかったよ」

 キスをしながら、聡太がささやく。

「ん……? なにが?」
「僕とずっと一緒にいたいって言ってくれたでしょ? あやさんがそう思ってくれてるとは思わなかった」
「本当にそう思ったから、結婚を承諾したのよ? そうじゃなきゃムリって言ってるわ」
「あやさん……僕は自信を持っていいのかな?」
「こないだは、私が聡太を好きだって自信満々に言ってたじゃない」
「抱き合ってるときは確信が持てるんだけどね。一人になるとダメなんだ……」

 聡太は言葉通り自信なげに首を傾げた。
 月曜日の再来になりそうで、慌てて聡太を引き寄せた。

「聡太、お互いの実家に行っておいて、もう逃げるなんてしないわよ。前は親にも言ってない段階だったし」

 私は聡太の目を見つめて続ける。

「それに、前に『楽しい時も落ち込んだ時もそばにいたい』って言ってくれたでしょ? 私もそうなの。月曜日に聡太がすごく落ち込んでた時、そばにいて癒やしたいと思った。……元はといえば私が原因なんだけどね」

 聡太は、苦笑する私の額にコツンと自分の額を当て、微笑んだ。

「僕と同じ気持ちでいてくれるなら、すごくうれしい」
「この気持ちはきっと好きってことよね?」
「そうだといいな」
「うん」

 だんだん自分の気持ちがわかってきた。

 前は突然、刃物を突きつけられた恐怖、彼女に弾劾されたショック、彼女から受けた憎悪、元カレがそんなに好きではなかったという罪悪感、それらが相まって、心が凍りついて麻痺してた。
 見知らぬ人に抱かれたのは、今思えば、人恋しいのもあったけど、自分を敢えて貶める懲罰的な感情からだったのかもしれない。

 でも、聡太に出会って癒されて、聡太のことしか考えられなくなった。
 この気持ちが『好き』という感情なら、やっぱり私は今まで人を本当に好きになったことがなかったみたいだ。

「聡太……抱いて?」
「うん。あやさん、喜んで」

 うっとりするような笑顔で聡太は私を見る。
 こんな素敵な人に愛されている喜びを噛みしめる。

 正直、未だに私に聡太はもったいないと思う。
 でも、本人がこんなに求めてくれてるから、もう考えないことにした。

 何度も口づけられて、優しく愛撫され、ゆっくり高められていく。

「ん………聡太……早く繋がりたい……」
「………もう、あやさん、煽らないでよ」
「だって……聡太をもっと感じたいんだもん」
「あやさん……」

 聡太はなだめるようにキスを落とすと、ゴムを付け始めた。

「今日は付けるのね」
「うん、あやさんが逃げないなら、しばらくは二人でラブラブな新婚生活を送りたいしね」

 聡太との新婚生活を想像して、照れて赤くなる。
 甘い聡太の腕の中で目覚める毎日。
 帰ったら、聡太に会える毎日。
 今の週末とほぼ変わらないはずなのに、なんだかすごくうれしい。

「あやさん、かわいいなぁ」

 いつの間にか微笑んでいた私の頬を撫でた後、口づけながら、聡太が私の中に入ってくる。
 愛しくて、私も聡太の背中に手を回し、ぴったりくっついた。
 そのまましばらく私達は、じっとお互いを抱きしめ合っていた。

「…………聡太、私、幸せだわ」
「僕もだよ。夢みたいだ。出会ってから、あやさんに逃げられないようにすることばかり考えてたから、今、逆に怖くなったのかも」
「聡太……ごめんね。もう本当に大丈夫だから。もう聡太のいない生活なんて考えられないから」
「あやさん……」

 聡太は言葉に詰まって、泣き笑いのような顔で口づけた。
 そんな聡太がとても愛しい。

「………あやさん、愛してる」
「私も愛してる……」

 するりと言葉が出できた。
 二人ともびっくりした顔で見つめ合った。

「…………あやさん!」

 聡太が喜びを爆発させて、むちゃくちゃに口づけてくる。

「聡太……愛してる……」
「あやさん、あやさん……僕も愛してる!」

 聡太の瞳が潤んでいた。
 手を伸ばして聡太を引き寄せて、キスをする。

 聡太……聡太……。
 よかった、愛を返せて。

 私も滲んだ視界で聡太を見つめた。

 その夜は、二人で泣き笑いのまま、何度も身体を重ね合わせた。




 それから数週間経った。
 結局、生理が来て、妊娠してないことがわかった。
 聡太がガッカリしたような安心したような複雑な表情をしていたから、「ラブラブな新婚生活を送るんでしょ?」と言ったら、ふんわりと笑った。


 金曜の夜、接待が終わって帰っていたら、「あやさん」と呼びかけられた。

「聡太!」

 集団の男女の中に聡太がいた。
 前にもあったわね、このシチュエーション。

「仕事帰り?」
「うん。聡太は同期会?」
「そうなんだ。前と同じだね」

 聡太の同期たちに挨拶する。

「こんばんは。前にも会いましたね」
「こんばんは。こないだは気分が悪くなって邪魔しちゃって、ごめんなさい。今日は邪魔しないから……」
「いや、僕はもう帰るよ。せっかくあやさんに会えたんだもん」

 あっさり言って、聡太は私の手を取った。

「付き合い悪いなー」
「あれ? その手はまさか…」
「晴れて彼女になりましたー!」

 聡太がニコニコと見せびらかすように、繋いだ手を上げた。
 私の手には聡太にもらった指輪が光っている。

「よかったなー」
「やっぱりか……。リア充爆ぜろ!」
「聡太だから仕方ないだろ」

 騒ぎ立てる同期にまったく動じず、聡太はうれしそうにしている。

 その同期の中に、こないだの女の子もいた。
 今回は明らかに私を睨んでいる。

 同期会で私を睨む女の子。

 以前だったら、きっと動揺して、気分が悪くなっていたかもしれない。
 でも、不思議と大丈夫だった。

 ごめんなさいね。
 私も聡太が好きだから、渡せないの。

 そう微笑んでみせたら、目が逸らされた。

「あやさん、帰ろうか」

 聡太が私を心配して、手を引く。
 私は大丈夫よと、微笑んだ。

「じゃあ、また。お疲れー」
「見せつけてないで、さっさと帰れ!」
「お疲れー」

 手を振って、同期の集団と分かれる。

 聡太と手を繋いで、駅に向かってる時に、ふと思いついて、聡太に耳打ちする。

「さっき気がついたんだけど……」
「ん? なに?」
「聡太、好きよ」

 みるみる赤くなった顔を押さえて、聡太が呻いた。

「…………あやさん、なんでこんなところで急に言うかなぁ。僕を悶絶死させる気?」
「だって、早く伝えたかったんだもの」
「僕もあやさんが好きすぎて、どうにかなりそうだよ……」

 家まで我慢できないと言う聡太に、近くのラブホテルに連れ込まれ、私は思いっきり愛された。

 好きよ、聡太。


 ーfinー



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

処理中です...