一夜限りのつもりだったのに、癒やし系イケメンに捕まりました。

入海月子

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15. ちゃんとわかった。

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 部屋に入るなり、聡太は口づけてきた。
 ある意味、デフォルトの聡太に安心する。
 こないだのしょんぼりとした聡太は、もう見たくない。

「今日はうれしかったよ」

 キスをしながら、聡太がささやく。

「ん……? なにが?」
「僕とずっと一緒にいたいって言ってくれたでしょ? あやさんがそう思ってくれてるとは思わなかった」
「本当にそう思ったから、結婚を承諾したのよ? そうじゃなきゃムリって言ってるわ」
「あやさん……僕は自信を持っていいのかな?」
「こないだは、私が聡太を好きだって自信満々に言ってたじゃない」
「抱き合ってるときは確信が持てるんだけどね。一人になるとダメなんだ……」

 聡太は言葉通り自信なげに首を傾げた。
 月曜日の再来になりそうで、慌てて聡太を引き寄せた。

「聡太、お互いの実家に行っておいて、もう逃げるなんてしないわよ。前は親にも言ってない段階だったし」

 私は聡太の目を見つめて続ける。

「それに、前に『楽しい時も落ち込んだ時もそばにいたい』って言ってくれたでしょ? 私もそうなの。月曜日に聡太がすごく落ち込んでた時、そばにいて癒やしたいと思った。……元はといえば私が原因なんだけどね」

 聡太は、苦笑する私の額にコツンと自分の額を当て、微笑んだ。

「僕と同じ気持ちでいてくれるなら、すごくうれしい」
「この気持ちはきっと好きってことよね?」
「そうだといいな」
「うん」

 だんだん自分の気持ちがわかってきた。

 前は突然、刃物を突きつけられた恐怖、彼女に弾劾されたショック、彼女から受けた憎悪、元カレがそんなに好きではなかったという罪悪感、それらが相まって、心が凍りついて麻痺してた。
 見知らぬ人に抱かれたのは、今思えば、人恋しいのもあったけど、自分を敢えて貶める懲罰的な感情からだったのかもしれない。

 でも、聡太に出会って癒されて、聡太のことしか考えられなくなった。
 この気持ちが『好き』という感情なら、やっぱり私は今まで人を本当に好きになったことがなかったみたいだ。

「聡太……抱いて?」
「うん。あやさん、喜んで」

 うっとりするような笑顔で聡太は私を見る。
 こんな素敵な人に愛されている喜びを噛みしめる。

 正直、未だに私に聡太はもったいないと思う。
 でも、本人がこんなに求めてくれてるから、もう考えないことにした。

 何度も口づけられて、優しく愛撫され、ゆっくり高められていく。

「ん………聡太……早く繋がりたい……」
「………もう、あやさん、煽らないでよ」
「だって……聡太をもっと感じたいんだもん」
「あやさん……」

 聡太はなだめるようにキスを落とすと、ゴムを付け始めた。

「今日は付けるのね」
「うん、あやさんが逃げないなら、しばらくは二人でラブラブな新婚生活を送りたいしね」

 聡太との新婚生活を想像して、照れて赤くなる。
 甘い聡太の腕の中で目覚める毎日。
 帰ったら、聡太に会える毎日。
 今の週末とほぼ変わらないはずなのに、なんだかすごくうれしい。

「あやさん、かわいいなぁ」

 いつの間にか微笑んでいた私の頬を撫でた後、口づけながら、聡太が私の中に入ってくる。
 愛しくて、私も聡太の背中に手を回し、ぴったりくっついた。
 そのまましばらく私達は、じっとお互いを抱きしめ合っていた。

「…………聡太、私、幸せだわ」
「僕もだよ。夢みたいだ。出会ってから、あやさんに逃げられないようにすることばかり考えてたから、今、逆に怖くなったのかも」
「聡太……ごめんね。もう本当に大丈夫だから。もう聡太のいない生活なんて考えられないから」
「あやさん……」

 聡太は言葉に詰まって、泣き笑いのような顔で口づけた。
 そんな聡太がとても愛しい。

「………あやさん、愛してる」
「私も愛してる……」

 するりと言葉が出できた。
 二人ともびっくりした顔で見つめ合った。

「…………あやさん!」

 聡太が喜びを爆発させて、むちゃくちゃに口づけてくる。

「聡太……愛してる……」
「あやさん、あやさん……僕も愛してる!」

 聡太の瞳が潤んでいた。
 手を伸ばして聡太を引き寄せて、キスをする。

 聡太……聡太……。
 よかった、愛を返せて。

 私も滲んだ視界で聡太を見つめた。

 その夜は、二人で泣き笑いのまま、何度も身体を重ね合わせた。




 それから数週間経った。
 結局、生理が来て、妊娠してないことがわかった。
 聡太がガッカリしたような安心したような複雑な表情をしていたから、「ラブラブな新婚生活を送るんでしょ?」と言ったら、ふんわりと笑った。


 金曜の夜、接待が終わって帰っていたら、「あやさん」と呼びかけられた。

「聡太!」

 集団の男女の中に聡太がいた。
 前にもあったわね、このシチュエーション。

「仕事帰り?」
「うん。聡太は同期会?」
「そうなんだ。前と同じだね」

 聡太の同期たちに挨拶する。

「こんばんは。前にも会いましたね」
「こんばんは。こないだは気分が悪くなって邪魔しちゃって、ごめんなさい。今日は邪魔しないから……」
「いや、僕はもう帰るよ。せっかくあやさんに会えたんだもん」

 あっさり言って、聡太は私の手を取った。

「付き合い悪いなー」
「あれ? その手はまさか…」
「晴れて彼女になりましたー!」

 聡太がニコニコと見せびらかすように、繋いだ手を上げた。
 私の手には聡太にもらった指輪が光っている。

「よかったなー」
「やっぱりか……。リア充爆ぜろ!」
「聡太だから仕方ないだろ」

 騒ぎ立てる同期にまったく動じず、聡太はうれしそうにしている。

 その同期の中に、こないだの女の子もいた。
 今回は明らかに私を睨んでいる。

 同期会で私を睨む女の子。

 以前だったら、きっと動揺して、気分が悪くなっていたかもしれない。
 でも、不思議と大丈夫だった。

 ごめんなさいね。
 私も聡太が好きだから、渡せないの。

 そう微笑んでみせたら、目が逸らされた。

「あやさん、帰ろうか」

 聡太が私を心配して、手を引く。
 私は大丈夫よと、微笑んだ。

「じゃあ、また。お疲れー」
「見せつけてないで、さっさと帰れ!」
「お疲れー」

 手を振って、同期の集団と分かれる。

 聡太と手を繋いで、駅に向かってる時に、ふと思いついて、聡太に耳打ちする。

「さっき気がついたんだけど……」
「ん? なに?」
「聡太、好きよ」

 みるみる赤くなった顔を押さえて、聡太が呻いた。

「…………あやさん、なんでこんなところで急に言うかなぁ。僕を悶絶死させる気?」
「だって、早く伝えたかったんだもの」
「僕もあやさんが好きすぎて、どうにかなりそうだよ……」

 家まで我慢できないと言う聡太に、近くのラブホテルに連れ込まれ、私は思いっきり愛された。

 好きよ、聡太。


 ーfinー



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