36 / 36
好き②
しおりを挟む
「お前、俺の設計が本当に好きだよな。新入社員のころ、連れてこられたコンペで俺のプレゼンを絶賛してくれたの、覚えてるか?」
「新入社員のころ?」
まったく覚えがなくて、目をぱちぱちさせる。
「やっぱり覚えてなかったか。目をキラキラさせて、『私もこんな企画を立てたいです!』と言ってくれたんだ。前職時代の最後の案件だったが」
「え、あーっ! あのときの! あれって黒瀬さんだったんですか!?」
ワクワクするプレゼンに感動して、思わずその担当者を捕まえて興奮気味に話しかけてしまったことを思い出す。そういえば、格好いいお兄さんだった。
なにしてるの、私!
「俺はあれから瑞希が気になって、どんなものを作るんだろうとついチェックしてた。そしたら、センスがいいから、今回来てもらったんだ」
やたらと私に絡んできたのはそういうことだったのね。
単に軽い男と思ってて、ごめんなさい。
「それなのに、瑞希はずっとつれなかったよな」
少し拗ねた顔で黒瀬さんは私の頬をつつく。
ずいぶん彼のことを誤解していた。
これも黒瀬さんの言ってた勝手な思い込みなんだろう。
「ごめんなさい。これからは設計と同じで思い込みに囚われないようにします」
「ははっ、そんな硬い言葉じゃなくて、『黒瀬さん、大好き』でいいんだぞ?」
「もうっ! そういうことすぐ言うから、軽いって思っちゃうんです! でも、大好きです!」
勢いで言うと、黒瀬さんはいつものように薄い唇の片端を上げて、悪い男の笑みを見せた。
「……お前は俺を煽るのがうまいな」
そして、熱い口づけを受けたあと、また甘く蕩かされるのだった。
―FIN―
「新入社員のころ?」
まったく覚えがなくて、目をぱちぱちさせる。
「やっぱり覚えてなかったか。目をキラキラさせて、『私もこんな企画を立てたいです!』と言ってくれたんだ。前職時代の最後の案件だったが」
「え、あーっ! あのときの! あれって黒瀬さんだったんですか!?」
ワクワクするプレゼンに感動して、思わずその担当者を捕まえて興奮気味に話しかけてしまったことを思い出す。そういえば、格好いいお兄さんだった。
なにしてるの、私!
「俺はあれから瑞希が気になって、どんなものを作るんだろうとついチェックしてた。そしたら、センスがいいから、今回来てもらったんだ」
やたらと私に絡んできたのはそういうことだったのね。
単に軽い男と思ってて、ごめんなさい。
「それなのに、瑞希はずっとつれなかったよな」
少し拗ねた顔で黒瀬さんは私の頬をつつく。
ずいぶん彼のことを誤解していた。
これも黒瀬さんの言ってた勝手な思い込みなんだろう。
「ごめんなさい。これからは設計と同じで思い込みに囚われないようにします」
「ははっ、そんな硬い言葉じゃなくて、『黒瀬さん、大好き』でいいんだぞ?」
「もうっ! そういうことすぐ言うから、軽いって思っちゃうんです! でも、大好きです!」
勢いで言うと、黒瀬さんはいつものように薄い唇の片端を上げて、悪い男の笑みを見せた。
「……お前は俺を煽るのがうまいな」
そして、熱い口づけを受けたあと、また甘く蕩かされるのだった。
―FIN―
31
お気に入りに追加
86
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私と彼の恋愛攻防戦
真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。
「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。
でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。
だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。
彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
蕩ける愛であなたを覆いつくしたい~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されてます~
泉南佳那
恋愛
梶原茉衣 28歳 × 浅野一樹 25歳
最悪の失恋をしたその夜、茉衣を救ってくれたのは、3歳年下の同僚、その端正な容姿で、会社一の人気を誇る浅野一樹だった。
「抱きしめてもいいですか。今それしか、梶原さんを慰める方法が見つからない」
「行くところがなくて困ってるんなら家にきます? 避難所だと思ってくれればいいですよ」
成り行きで彼のマンションにやっかいになることになった茉衣。
徐々に傷ついた心を優しく慰めてくれる彼に惹かれてゆき……
超イケメンの年下同僚に甘く翻弄されるヒロイン。
一緒にドキドキしていただければ、嬉しいです❤️
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
泉南佳那
恋愛
植田奈月27歳 総務部のマドンナ
×
島内亮介28歳 営業部のエース
******************
繊維メーカーに勤める奈月は、7年間付き合った彼氏に振られたばかり。
亮介は元プロサッカー選手で会社でNo.1のイケメン。
会社の帰り道、自転車にぶつかりそうになり転んでしまった奈月を助けたのは亮介。
彼女を食事に誘い、東京タワーの目の前のラグジュアリーホテルのラウンジへ向かう。
ずっと眠れないと打ち明けた奈月に
「なあ、俺を睡眠薬代わりにしないか?」と誘いかける亮介。
「ぐっすり寝かせてあけるよ、俺が。つらいことなんかなかったと思えるぐらい、頭が真っ白になるまで甘やかして」
そうして、一夜の過ちを犯したふたりは、その後……
******************
クールな遊び人と思いきや、実は超熱血でとっても一途な亮介と、失恋拗らせ女子奈月のじれじれハッピーエンド・ラブストーリー(^▽^)
他サイトで、中短編1位、トレンド1位を獲得した作品です❣️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる