6 / 6
甘い匂い
しおりを挟む
そのうち、ユーリスがくんくんと私の首の匂いを嗅ぎだした。
「甘い香りがする」
そうつぶやいて、今度はペロッと舐める。
「ひゃっ!」
ゾクンとして、声をあげてしまった。
ユーリスは「味も甘いよ」とにんまりした。
お互いの匂いを嗅いだり舐めたりしながら、私たちは何度も交わった。
もうクタクタで動けなくなっても、抱き合い、体をなでた。
翌朝、二人で手を繋いで、朝食の席に行き、お義父様とお義母様に謝った。
「ごめんなさい。嫌われたと思ったのは、私の勘違いだったんです」
「それでも、そう思わせたユーリスが悪いわ」
「それはそうですね、母上。申し訳なかった、アリステラ」
私が謝ると、お義母様がユーリスを咎め、責められた彼は改めて私に謝ってくれた。
その誠実な姿勢にときめく。
「それでは、リュクス公爵の件はお断りするんだな?」
「申し訳ありません」
「僕も謝罪に伺います」
「当たり前だ」
ユーリスの言葉に、お義父様は重々しくうなずいた。
でも、すぐ表情を緩めて私を見る。
「でも、よかったな、アリステラ」
「はい。本当にご心配をおかけしました」
リュクス公爵にはみんなで平謝りした。
彼は「もともと期待してませんでしたから大丈夫ですよ」と微笑んでくれた。
ユーリスの上司になる人がいい人だと確認できてよかった。
彼の婚活もうまくいくように祈った。
*-*-*
くんくんくん。
「あー、いい香り」
「ユーリス、そんなところの匂いを嗅がないで……」
私の脚の間に顔をうずめて、ユーリスが敏感なところに鼻を押しつけている。
しかも、彼の息がかかって、私の中がピクピクする。とろりとろりと蜜があふれてくる。
「ああん……だめ、恥ずかしいわ……」
「でも、たまんない匂いだよ」
ユーリスが深呼吸するみたいに鼻から息を吸いこむ。
逆のことをされて、わかった。
人に匂いを嗅がれるのはとても恥ずかしい。
とっても反省したから、止めてほしいと言うと、ユーリスは意地悪な顔で、「なんで? 僕の匂いも思う存分嗅いでいいよ」と笑う。
それはうれしいけど、そうしたら、まったく同じことをし返されるのが目に見えている。それは恥ずかしすぎる。
「ユーリス……」
中途半端な刺激だけ与え続けられ、我慢できなくなった私は、ねだるように彼の名前を呼んだ。
ユーリスは紫色の瞳を甘く染め、私を見下ろした。
「僕がほしい?」
「うん、来て……」
優しいキスとともに、彼が入ってきた。
体も心も歓喜に震える。
思いが通じてからユーリスは、以前に増して私を大事にしてくれる。
私は彼にしがみついて、その首もとに顔をうずめる。
こっそりユーリスの匂いを嗅ぎながら、幸せに浸った。
―fin―
「甘い香りがする」
そうつぶやいて、今度はペロッと舐める。
「ひゃっ!」
ゾクンとして、声をあげてしまった。
ユーリスは「味も甘いよ」とにんまりした。
お互いの匂いを嗅いだり舐めたりしながら、私たちは何度も交わった。
もうクタクタで動けなくなっても、抱き合い、体をなでた。
翌朝、二人で手を繋いで、朝食の席に行き、お義父様とお義母様に謝った。
「ごめんなさい。嫌われたと思ったのは、私の勘違いだったんです」
「それでも、そう思わせたユーリスが悪いわ」
「それはそうですね、母上。申し訳なかった、アリステラ」
私が謝ると、お義母様がユーリスを咎め、責められた彼は改めて私に謝ってくれた。
その誠実な姿勢にときめく。
「それでは、リュクス公爵の件はお断りするんだな?」
「申し訳ありません」
「僕も謝罪に伺います」
「当たり前だ」
ユーリスの言葉に、お義父様は重々しくうなずいた。
でも、すぐ表情を緩めて私を見る。
「でも、よかったな、アリステラ」
「はい。本当にご心配をおかけしました」
リュクス公爵にはみんなで平謝りした。
彼は「もともと期待してませんでしたから大丈夫ですよ」と微笑んでくれた。
ユーリスの上司になる人がいい人だと確認できてよかった。
彼の婚活もうまくいくように祈った。
*-*-*
くんくんくん。
「あー、いい香り」
「ユーリス、そんなところの匂いを嗅がないで……」
私の脚の間に顔をうずめて、ユーリスが敏感なところに鼻を押しつけている。
しかも、彼の息がかかって、私の中がピクピクする。とろりとろりと蜜があふれてくる。
「ああん……だめ、恥ずかしいわ……」
「でも、たまんない匂いだよ」
ユーリスが深呼吸するみたいに鼻から息を吸いこむ。
逆のことをされて、わかった。
人に匂いを嗅がれるのはとても恥ずかしい。
とっても反省したから、止めてほしいと言うと、ユーリスは意地悪な顔で、「なんで? 僕の匂いも思う存分嗅いでいいよ」と笑う。
それはうれしいけど、そうしたら、まったく同じことをし返されるのが目に見えている。それは恥ずかしすぎる。
「ユーリス……」
中途半端な刺激だけ与え続けられ、我慢できなくなった私は、ねだるように彼の名前を呼んだ。
ユーリスは紫色の瞳を甘く染め、私を見下ろした。
「僕がほしい?」
「うん、来て……」
優しいキスとともに、彼が入ってきた。
体も心も歓喜に震える。
思いが通じてからユーリスは、以前に増して私を大事にしてくれる。
私は彼にしがみついて、その首もとに顔をうずめる。
こっそりユーリスの匂いを嗅ぎながら、幸せに浸った。
―fin―
3
お気に入りに追加
171
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。

親友の断罪回避に奔走したら断罪されました~悪女の友人は旦那様の溺愛ルートに入ったようで~
二階堂まや
恋愛
王女フランチェスカは、幼少期に助けられたことをきっかけに令嬢エリザのことを慕っていた。しかしエリザは大国ドラフィアに 嫁いだ後、人々から冷遇されたことにより精神的なバランスを崩してしまう。そしてフランチェスカはエリザを支えるため、ドラフィアの隣国バルティデルの王ゴードンの元へ嫁いだのだった。
その後フランチェスカは、とある夜会でエリザのために嘘をついてゴードンの元へ嫁いだことを糾弾される。
万事休すと思いきや、彼女を庇ったのはその場に居合わせたゴードンであった。
+関連作「騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~」
+本作単体でも楽しめる仕様になっております。
当て馬令嬢からの転身
歪有 絵緖
恋愛
当て馬のように婚約破棄された令嬢、クラーラ。国内での幸せな結婚は絶望的だと思っていたら、父が見つけてきたのは獣人の国の貴族とのお見合いだった。そして出会ったヴィンツェンツは、見た目は大きな熊。けれど、クラーラはその声や見た目にきゅんときてしまう。
幸せを諦めようと思った令嬢が、国を出たことで幸せになれる話。
ムーンライトノベルズからの転載です。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
洗浄魔法はほどほどに。
歪有 絵緖
恋愛
虎の獣人に転生したヴィーラは、魔法のある世界で狩人をしている。前世の記憶から、臭いに敏感なヴィーラは、常に洗浄魔法で清潔にして臭いも消しながら生活していた。ある日、狩猟者で飲み友達かつ片思い相手のセオと飲みに行くと、セオの友人が番を得たと言う。その話を聞きながら飲み、いつもの洗浄魔法を忘れてトイレから戻ると、セオの態度が一変する。
転生者がめずらしくはない、魔法のある獣人世界に転生した女性が、片思いから両想いになってその勢いのまま結ばれる話。
主人公が狩人なので、残酷描写は念のため。
ムーンライトノベルズからの転載です。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

束縛婚
水無瀬雨音
恋愛
幼なじみの優しい伯爵子息、ウィルフレッドと婚約している男爵令嬢ベルティーユは、結婚を控え幸せだった。ところが社交界デビューの日、ウィルフレッドをライバル視している辺境伯のオースティンに出会う。翌日ベルティーユの屋敷を訪れたオースティンは、彼女を手に入れようと画策し……。
清白妙様、砂月美乃様の「最愛アンソロ」に参加しています。

元遊び人の彼に狂わされた私の慎ましい人生計画
イセヤ レキ
恋愛
「先輩、私をダシに使わないで下さい」
「何のこと?俺は柚子ちゃんと話したかったから席を立ったんだよ?」
「‥‥あんな美人に言い寄られてるのに、勿体ない」
「こんなイイ男にアピールされてるのは、勿体なくないのか?」
「‥‥下(しも)が緩い男は、大嫌いです」
「やだなぁ、それって噂でしょ!」
「本当の話ではないとでも?」
「いや、去年まではホント♪」
「‥‥近づかないで下さい、ケダモノ」
☆☆☆
「気になってる程度なら、そのまま引き下がって下さい」
「じゃあ、好きだよ?」
「疑問系になる位の告白は要りません」
「好きだ!」
「疑問系じゃなくても要りません」
「どうしたら、信じてくれるの?」
「信じるも信じないもないんですけど‥‥そうですね、私の好きなところを400字詰め原稿用紙5枚に纏めて、1週間以内に提出したら信じます」
☆☆☆
そんな二人が織り成す物語
ギャグ(一部シリアス)/女主人公/現代/日常/ハッピーエンド/オフィスラブ/社会人/オンラインゲーム/ヤンデレ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後まで読みました。とても楽しいお話でした。香りって好きな人だといい香りといいますが、たしかに許容できる、くらいは左右するかも。。嫌いな人が爽やかな香りとか(そうだとしても)感じないですものね。
ヒロインのちょっと天然な気遣いが楽しい展開でした!
kokekokkoさん、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
好きな人の匂いなら許容できますよね。
その反対もありますがw
楽しんでもらえて、うれしいです(*^^*)
すみませーん、夢の。。で、シーツに(手を)押し付けたとあるんですが、ソファ設定だったんで、シーツのあるソファってことでしょうか?
そういや、祖父の家のソファはシーツがついていて、小さい頃従兄弟軍団でソファをトランポリン代わりにして超怒られたのを思い出しました。。いえ、家のソファはシーツ無いんですけど。。
kokekokkoさん、ご指摘ありがとうございます!
シーツがかかったソファーと言いたいところですが、間違ってますね(^_^;)
早速直してきました!
でも、汚れが気になるので、シーツのかかったソファーもいいですね〜。
みながみはるかさん、いっぱい感想をありがとうございます!
普段あまり感想をもらわないので、むちゃくちゃうれしかったです(*^^*)
そして、面白く読んでもらえて、幸せです!
ツンデレで失敗する男子好きなので、楽しんで書きましま。