大好きな義弟の匂いを嗅ぐのはダメらしい

入海月子

文字の大きさ
上 下
5 / 6

夢みたい

しおりを挟む
「ふぅぅ……」
 
 なにかを逃すようにユーリスが息を吐く。
 私たちはぴったりとくっついていた。全身で彼を感じた。
 罪悪感もなにもかも吹っ飛ばすような喜びに包まれる。
 今この瞬間だけは、ユーリスは私のものと考えても許される気がして、彼にしがみつく。
 くんくん、すりすり。
 ユーリスの首もとの匂いを嗅ぎ、顔を擦りつけて、彼を堪能する。

(あぁ、これでリュクス公爵様に嫁いでも生きていけるわ……)
 
 そんなことを考えていると、私の中のモノがムクムクとさらに大きくなった。

「え?」
「あぁ、もう、アリステラ、いい加減にしてくれ」
「ご、ごめんなさい」

 またしてもやりすぎたようだ。
 シュンとして、腕も顔も離した。
 ユーリスは私の手を絡めるように握り、ソファーに押しつけた。

「……我慢できなくなる」

 低いかすれ声でささやくと、彼は腰を動かし始めた。
 奥までみっちり埋まっていたものをずるっと引き抜かれる。
 私の中がまとわりつくように、彼のモノを追う。
 まるで、私の心みたい。
 彼を離したくなくて、すがって絡みついて。
 さみしくなったところに、ズンと戻された。
 ふたたびユーリスに満たされる。
 
「あぁっ」

 歓喜の声をあげる。
 擦られたところが、突かれた奥が、気持ちよくてしかたがない。
 彼は何度もそれを繰り返した。
 そのうち、脚を持ち上げられて、挿入が深くなる。
 出し入れするスピードも速まって、私は翻弄された。

「あんっ、あんっ、あああ――っ」
 
 浮遊感を覚えるほどの快感に喘ぐ。
 甘い痺れが体の奥から全身に広がり、脳を侵していく。
 頭が真っ白になったとき、体の奥で熱いものが弾けたのを感じた。
 ピクピクとユーリスのモノが震えて、その刺激さえ気持ちいい。
 私で気持ちよくなってくれたのがすごくうれしくて、笑みを浮かべた。
 ユーリスも欲を吐き出して、落ち着いたのか、表情を緩めた。
 甘ったるく私を見下ろして、キスをする。

(キャー! 私の義弟ってば、なんてかっこいいのかしら! これ以上私を惚れさせて、どうするつもり!?)

 ときめきが止まらず、心臓が痛い。
 心臓が暴れているのと同じように、ユーリスのモノを咥えこんだままの私の中も大暴れで、ビクビクしていた。
 一気にまた彼のモノが大きくなる。

「えぇ!」

 驚いて目を見開くと、ユーリスが顔を赤らめ、そっぽを向いた。

「アリステラが悪いんだからな!」

 私はまた無駄に彼を煽ってしまったらしい。
 責任を取らせるように、ユーリスは腰を動かした。
 あっという間に、高められて、目の前がチカチカする。
 
 でも、快感が弾ける前に、ユーリスは私を引っ張り起こした。彼は私を抱きしめ、キスをする。
 舌を絡められて、強く吸われて、息が苦しい。
 どこもかしこもぴったりとユーリスにくっついていて、目もくらむような喜びに満たされた。
 その状態で、下から突き上げられて、究極の気持ちよさと酸欠で、私は意識を失った。


 次に目覚めたとき、目の前に麗しいユーリスの顔があって、にっこりした。
 なんて素敵な目覚めなんだろうとぼんやり考えた。
 私たちはまだ繋がったままだった。
 でも、場所はベッドに移動していて、二人とも裸だった。
 たくましい胸板が見えて、いつの間にかユーリスは男の人になっていたのねと実感した。

 私が意識を取り戻したのに気づいたユーリスは、ついばむようなキスをして、また腰を動かしはじめた。
 私の中は、すっかり彼のモノに馴染んで、悦びにうねっている。
 すぐに限界が来て、背中を反らすと、ユーリスも達したようだった。
 あまり汗をかかないはずのユーリスの額に汗が滲んでいるのが見えて、私は手を伸ばして、それを拭ってやった。
 ユーリスは私の手を掴み、鋭い目で私を見る。

「これでもうリュクス公爵とは結婚できないな」
「公爵様は処女にこだわらないんじゃないかしら?」
「処女にこだわらなくも、他の男の子を宿しているかもしれない女は娶らないだろう」

 口を歪めてユーリスが言う。そう言われて、初めて気づく。彼は何度も私の中に子種を出していた。
 
(ユーリスの赤ちゃんができているかもしれないの!?)

 想像しただけで、天にも昇る心地になった。
 顔がにやけてしまう。

「なんでそこでうれしそうな顔をするんだよ! 本当にアリステラがなにを考えてるか、わからないよ……」

 困惑した顔でユーリスがつぶやいた。
 でも、私だって、彼の考えていることがわからない。
 子どもができたら困るのは彼のほうなのに。

「もし赤ちゃんができてても、一人でも育てるから、心配しないで」

 ユーリスを安心させようと言うと、彼は思い切り不機嫌な顔になった。

「どうしてそんな選択肢になるんだ? そんなに僕と結婚するのが嫌なのか?」
「えっ? 嫌なのはユーリスのほうでしょ? 誕生日のリクエストは私と結婚しないことじゃないの?」
「はぁ? なんでそうなるんだよ! 逆だよ。僕はアリステラにプロポーズしようと準備していたのに」
「プロポーズ!?」

 信じられない言葉が聞こえて、私は目を見開いた。

「僕が必死で我慢しているのに、無防備にひっつかれて、どれだけつらかったかわかるか? アリステラはいつまでも僕のことをかわいい弟としか思ってないようだったけど。アリステラの好きと僕の好きは種類が違う。それなのに気軽に好き好き言ってきて……。何度襲ってしまいそうになったことか」

 このところ稀に見るユーリスの長舌に驚く。
 ありえなさすぎて、内容が全然頭に入ってこない。
 でも、その中のひと言に反応する。

「僕の好き……?」
「あぁ。アリステラが好きだ。姉弟としてでなく、異性としてアリステラを愛してる。どんなことをしても離さないから!」

 突然の熱い告白に、思考が固まった。

 ――アリステラが好きだ。アリステラを愛してる。

 信じられない言葉が頭の中で何度も再生される。
 
(どうしよう、これは現実なのかな? ひょっとして、まだ都合のいい夢を見ているのかな?)

 あまりにも信じられなくて、手の甲をつねってみる。
 ちゃんと痛い。現実だ。
 落ち着こうと、ユーリスの首もとに腕を絡ませて、匂いを嗅いでみる。
 くんくんくん。ユーリスの匂い。うん、現実だ。

 腕を緩めて、もう一度ユーリスを見ると、真剣な目のまま私を見ていた。
 遅ればせながら、ようやく頭が働いてきて、無上の喜びが爆発する。

「私だって好きよ、ユーリス! 弟としてじゃないの。あなたの匂いを隅々まで嗅ぎたいくらい好きよ!」

 できれば首もとだけでなく腋の匂いを嗅いでみたい。足はどんな匂いがするのかしら? きっとユーリスの匂いだもの、得も言われぬ芳しい匂いに決まってるわ。
 想像してうっとりしていると、彼がおそるおそる聞いてきた。

「それは……恋愛の好きってことでいいのかな?」
「もちろんよ! ユーリス、好きよ! 大好き!」

 私が言うと、彼はぱあっと顔を輝かせた。
 大好きな天使の笑みだ。
 こんなにうれしそうな顔を見たのは久しぶりだった。
 
「アリステラ、好きだ!」

 そう言って、私を抱きしめて、チュウゥと音がしそうなくらい深いキスをした。
 私も彼の頭を引き寄せて、それに応えた。
 
(こんなに幸せなことがあっていいのかしら?)

 胸がいっぱいになって、涙があふれた。

 何度もキスを交わすうちに、お互いの腰が揺れだして、また抽送が始まった。
 心が通じ合ったというだけで、何百倍にも気持ちがいい。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

親友の断罪回避に奔走したら断罪されました~悪女の友人は旦那様の溺愛ルートに入ったようで~

二階堂まや
恋愛
王女フランチェスカは、幼少期に助けられたことをきっかけに令嬢エリザのことを慕っていた。しかしエリザは大国ドラフィアに 嫁いだ後、人々から冷遇されたことにより精神的なバランスを崩してしまう。そしてフランチェスカはエリザを支えるため、ドラフィアの隣国バルティデルの王ゴードンの元へ嫁いだのだった。 その後フランチェスカは、とある夜会でエリザのために嘘をついてゴードンの元へ嫁いだことを糾弾される。 万事休すと思いきや、彼女を庇ったのはその場に居合わせたゴードンであった。 +関連作「騎士団長との淫らな秘めごと~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~」 +本作単体でも楽しめる仕様になっております。

当て馬令嬢からの転身

歪有 絵緖
恋愛
当て馬のように婚約破棄された令嬢、クラーラ。国内での幸せな結婚は絶望的だと思っていたら、父が見つけてきたのは獣人の国の貴族とのお見合いだった。そして出会ったヴィンツェンツは、見た目は大きな熊。けれど、クラーラはその声や見た目にきゅんときてしまう。    幸せを諦めようと思った令嬢が、国を出たことで幸せになれる話。 ムーンライトノベルズからの転載です。

燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~

二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。 夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。 気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……? 「こんな本性どこに隠してたんだか」 「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」 さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。 +ムーンライトノベルズにも掲載しております。

洗浄魔法はほどほどに。

歪有 絵緖
恋愛
虎の獣人に転生したヴィーラは、魔法のある世界で狩人をしている。前世の記憶から、臭いに敏感なヴィーラは、常に洗浄魔法で清潔にして臭いも消しながら生活していた。ある日、狩猟者で飲み友達かつ片思い相手のセオと飲みに行くと、セオの友人が番を得たと言う。その話を聞きながら飲み、いつもの洗浄魔法を忘れてトイレから戻ると、セオの態度が一変する。 転生者がめずらしくはない、魔法のある獣人世界に転生した女性が、片思いから両想いになってその勢いのまま結ばれる話。 主人公が狩人なので、残酷描写は念のため。 ムーンライトノベルズからの転載です。

冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者

月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで…… 誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話

処理中です...