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side木佐
二つのプレゼント
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そんなことをしているうちに、時刻は零時を回る。
時報が鳴り終わった瞬間に俺は言った。
「ハッピーバースデー、宇沙ちゃん」
年が明けることより彼女の誕生日のほうを祝いたかった。
目を見開いた宇沙ちゃんは瞳を潤ませた。
喜んでくれたようだ。
「はい。プレゼント」
用意していた薔薇の形の入浴剤を渡すと、うれしそうに受け取ってくれる。中身を見て、彼女は声をあげた。
「きれい!」
「それ入浴剤なんだよ。好みがわからなかったから、なくなるものがいいかな、と思って」
「なくなるもの……」
彼女の表情を見て、よけいなことを言ったと思った。
急激に曇ったその顔に焦った。
「宇沙ちゃん? 気に入らなかった?」
「いいえ! びっくりしただけです。すごく綺麗でかわいいです。ありがとうございます」
反対に彼女に気を使わせてしまった自分に腹が立つ。
(石原係長も『なくなるもの』を渡したのか? それとも家族のことを思い出したとか?)
無理に笑顔を作った宇沙ちゃんの気分をどうにか変えたくて、どう考えても早すぎるプレゼントを取り出した。
「あのさ~、あとに残るものもあるんだけど?」
宇沙ちゃんに似合うと思って買ったムーンストーンのペンダントは、もう少し宇沙ちゃんの気持ちが俺に傾いてから渡そうと思っていた。
案の定、受け取れないと言う彼女に、仕方ないと自分につけたら、宇沙ちゃんは噴き出した。
「ふふっ。やだ、なにやってるんですか、木佐さん」
ようやく笑ってくれた彼女の首にペンダントをつける。
やっぱり似合う。
満足げに目を細める。
と、宇沙ちゃんが思いつめた目をした。
「木佐さん、私……」
やはり重いプレゼントだったかと身構える。
しかし、彼女の口からは予想外の言葉が出てきた。
「私、石原係長と別れたんです。だから……」
(別れた!?)
浮足立った心は、続いた言葉にすぐ沈んだ。
「だから、この関係を終わりにしてください」
宇沙ちゃんはきっぱりと言った。
このところ、彼女の様子がおかしかったのはそういうことかと合点がいった。
同時に逃がすものかと思った。
即座に返す。
「やだよ」
「えっ?」
「なんでやっと宇沙ちゃんが俺だけのものになるというのに、手放さないといけないの?」
ようやくスタート地点に立てたというのに、放すわけがない。
俺の反応が意外だったようで、宇沙ちゃんは見るからにうろたえた。
時報が鳴り終わった瞬間に俺は言った。
「ハッピーバースデー、宇沙ちゃん」
年が明けることより彼女の誕生日のほうを祝いたかった。
目を見開いた宇沙ちゃんは瞳を潤ませた。
喜んでくれたようだ。
「はい。プレゼント」
用意していた薔薇の形の入浴剤を渡すと、うれしそうに受け取ってくれる。中身を見て、彼女は声をあげた。
「きれい!」
「それ入浴剤なんだよ。好みがわからなかったから、なくなるものがいいかな、と思って」
「なくなるもの……」
彼女の表情を見て、よけいなことを言ったと思った。
急激に曇ったその顔に焦った。
「宇沙ちゃん? 気に入らなかった?」
「いいえ! びっくりしただけです。すごく綺麗でかわいいです。ありがとうございます」
反対に彼女に気を使わせてしまった自分に腹が立つ。
(石原係長も『なくなるもの』を渡したのか? それとも家族のことを思い出したとか?)
無理に笑顔を作った宇沙ちゃんの気分をどうにか変えたくて、どう考えても早すぎるプレゼントを取り出した。
「あのさ~、あとに残るものもあるんだけど?」
宇沙ちゃんに似合うと思って買ったムーンストーンのペンダントは、もう少し宇沙ちゃんの気持ちが俺に傾いてから渡そうと思っていた。
案の定、受け取れないと言う彼女に、仕方ないと自分につけたら、宇沙ちゃんは噴き出した。
「ふふっ。やだ、なにやってるんですか、木佐さん」
ようやく笑ってくれた彼女の首にペンダントをつける。
やっぱり似合う。
満足げに目を細める。
と、宇沙ちゃんが思いつめた目をした。
「木佐さん、私……」
やはり重いプレゼントだったかと身構える。
しかし、彼女の口からは予想外の言葉が出てきた。
「私、石原係長と別れたんです。だから……」
(別れた!?)
浮足立った心は、続いた言葉にすぐ沈んだ。
「だから、この関係を終わりにしてください」
宇沙ちゃんはきっぱりと言った。
このところ、彼女の様子がおかしかったのはそういうことかと合点がいった。
同時に逃がすものかと思った。
即座に返す。
「やだよ」
「えっ?」
「なんでやっと宇沙ちゃんが俺だけのものになるというのに、手放さないといけないの?」
ようやくスタート地点に立てたというのに、放すわけがない。
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