営業部のイケメンエースは、さわやかなヘンタイでした。

入海月子

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そんな変態じゃない②

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「木佐さん、好き、です」

 チュッ

 言い終わるなり、ついばむようなキスをされた。
 木佐さんとの初めてのキス。
 大事なものにそっと触れるような優しいキス。
 驚いて瞬くと、木佐さんがツリ目を細めて、うれしそうに笑ってた。ギュッと抱きしめられる。

「宇沙ちゃん、か~わいい。俺も好きだよ」

 頬を寄せられ、告げられた言葉に耳を疑う。

(本当に? 勘違いじゃなく?)

「なにびっくりしてるの? 俺、相当わかりやすかったと思うんだけど?」
「え、でも、木佐さんは他に相手がいる人が好きで、それで私を抱いてたんですよね?」
「アハハッ、まだそれを信じてたんだね。でも、好きでもない女を毎週舐め回すほど、俺は変態じゃないよ」
「えぇー!」
 
 そんな変態だと思ってた。
 ペロペロと舐め回された記憶のある私は顔が熱くなる。

(それって、つまり?)

「好きだよ、宇沙ちゃん。最初から」

 木佐さんが甘くささやく。
 その言葉をまだ素直に呑み込めない。

(最初から木佐さんは私が好きで、将司さんが好きな私を抱いてたってこと?)

「信じられないなら、教えてあげるよ」

 ツリ目をあやしく光らせた木佐さんが唇に噛みついてきた。
 さっきの触れるだけのキスと違って、食べられちゃいそうな獰猛なキスだった。
 角度を変えて何度もかぶりつかれ、吸われ、舌が入ってきた。
 口の中を余すところなく舐められる。
 最後に私の舌を絡め取られ、擦られると、思考が霞んできた。 
 これでもう木佐さんが触れていないところはどこにもなく、身も心も彼でいっぱいになってしまった。
 
「っ、はぁ……」

 ようやく口を離されて、息をつく。
 木佐さんは口もとを手で拭ってから、指で私の唇を辿った。

「どれだけ、このかわいい唇に口づけたかったことか……」
「じゃあ、どうしてキスしなかったんですか?」
 
 だから、なおさら本気じゃないと思ったのに。
 そう思って私が聞くと、木佐さんは照れくさそうに髪を掻き上げた。

「ん~、想いが通じてからと思って。まぁ、焦らしプレイだね」
「プレイ……。もうっ! どうしてそういう言い方するんですか!」
「アハハッ、真っ赤になる宇沙ちゃんがかわいいから」

 また、チュッとキスをされた。
 そして、木佐さんがあまりに愛おしげに私を見るから、想いがあふれた。
 
「わっ、宇沙ちゃん、どうして泣くの? ごめん、からかいすぎた?」

 親指で私の頬を拭い、木佐さんがうろたえた。
 彼が動揺するところなんて、初めて見た。
 目もとに唇を落とし、頬の涙をペロッと舐める。

「宇沙ちゃん、本当に好きだよ?」
 
 木佐さんは真剣な目でそう言ってくれる。その目にはからかう色はなく、信じていいと思えた。

「私も好きです」

 私は彼に抱きついて、つぶやいた。
 ゴクッと木佐さんの喉が動いた。
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