営業部のイケメンエースは、さわやかなヘンタイでした。

入海月子

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ずるい私②

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 私が朝食の準備をしている間に、木佐さんはシャワーを浴びて、着替えてきた。
 テーブルの上を見て、うれしそうな顔をする。

「おいしそうだね」

 人が来る想定をしてないから、うちには小さなテーブルと二人がけソファーしかない。
 木佐さんと並んで座って、手を合わせた。

「このタマゴサンド、むちゃくちゃおいしいよ。コクがあって」
「よかったです! 隠し味にハチミツを使ってるんです」
「へー、ハチミツとは思わなかった。宇沙ちゃんは料理が好きなの?」
「いいえ、そうでもないんですが、自分で食べる分くらいは作れます」
「えらいなぁ。俺は外食ばかりだよ」

 そう言うけど、木佐さんならご飯を作りに来たいという女の人がいくらでもいそう。
 現に台所には一通りの調理道具は揃っていた。

(嫌だわ。まるで詮索してるみたい)

 そう思って、話題を変えようとしたら、木佐さんがニヤッと笑って言った。

「ここは『私が作ってあげます』って言うところじゃない?」
「言いません!」
「ハハッ、つれないなぁ。そう冷たくされると滾るよ」
「もう、なに言ってるんですか!」

 やっぱり木佐さんは自分に興味ない私が気に入っているようで、私の心の変化を知ったら離れていくんだろうなと思った。
 それを思うとさみしくて、本当は将司さんと別れたことを言わないといけないのに、私はどうしてもそれを告げられなかった。
 もう少しだけ後にしてもいいよね?
 楽しそうに笑う木佐さんに心の中で謝った。

「そういえば、体調が大丈夫なら、出かけて、帰りにケーキでも買ってきて食べようよ。せっかくのクリスマスイブだし」
「えっ、どこにですか?」
「今日はどこに行っても人が多いと思うけど、植物園なんて、どう? 綺麗なガラスドームの温室があるところ」
「ガラスドームの温室! 行ってみたいです」
「そう、よかった。じゃあ、食べ終わったら、いったん俺の家に寄って、行ってみようか」

 木佐さんの誘いはいつも魅力的でつい釣られてしまう。
 植物園なんて行こうと思ったこともないし、ガラスドームの温室なんて存在さえ知らなかったけど、想像するだけでワクワクした。

「目が輝いてる。か~わいい、宇沙ちゃん」

 いきなり抱きしめられて、頬にキスをされた。
 ボンと顔が沸騰した。
 

 
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