営業部のイケメンエースは、さわやかなヘンタイでした。

入海月子

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ずるい私①

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 翌朝、目覚めると、寝すぎたようで、頭がぼんやりした。
 目の前にぐっすり眠る木佐さんの整った顔がある。

(昨日、あのまま寝ちゃったんだ)

 彼がいるから、お布団の中はぬくぬくで、ひんやりとした外には出たくないと思う。
 木佐さんは服を着たまま横になってたはずだけど、窮屈だったのか、裸になっていた。
 私はそのたくましい胸板にぴったりと寄り添っていた。
 慌てて身体を離して、起き上がる。
 とたんに冷たい空気に包まれて、ブルッと震えた。
 私も下着姿だった。
 そのままシャワーを浴びることにする。
 居間に戻ってきても、まだ木佐さんは寝ていた。

「朝ごはん、作ろうかな?」

 まだ起きなさそうな木佐さんを見て、サンドイッチを作ることにした。
 卵を茹でている間に、キュウリとトマトをスライスして、タマネギをみじん切りにする。
 ゆで卵を潰して、水にさらしたタマネギを絞って入れ、マヨネーズ、塩コショウを振る。隠し味にハチミツを入れた。
 前にネットで見たレシピで、おいしくて気に入ってる。
 タマゴサンドに加えて、トマトとチーズのサンドイッチを作った。
 男の人はそれだけじゃ足りない気がして、ソーセージと野菜を入れたスープも作る。
 料理しながら、思ったより落ち込んでない自分に気づいた。
 どちらかというと心の澱が取れて、爽快ささえ感じる。

(木佐さんがいてくれるからかな?)

 本当だったら、さみしくて仕方なくなるはずだった。
 脅されて始まった関係なのに、こんなにも彼の存在になぐさめられるとは思ってなかった。

(だって、弱ってるときにあんなに優しくされたら……)
 
 ベッドサイドに腰かけて、木佐さんの寝顔を見つめる。
 目にかかった前髪をよけてあげようとして、自分が彼に触りたいと思っているのに気づき、手を止めた。

(それでも、これはまやかしの関係。どうして私はまともな関係を築けないんだろう……)

 引っ込み思案でなかなか人の輪に入っていけない。
 なにかを相談できる親しい友達もいない。
 できたのは不倫とこんな身体だけの関係。

(きっとどこかおかしいんだわ、私は)

 手で顔を覆った。

「宇沙ちゃん、泣いてるの?」

 頭に手が乗せられ、顔を上げると、木佐さんが覗き込んでいた。
 寝ぼけた顔をしているくせに心配そうな瞳で私を見つめている。

(木佐さん……)

 胸がキュッとなった。

(そんな目で見ないで。心を預けてしまいたくなる)

 私はそう言う代わりに、笑顔を作って答えた。

「違いますよ。起きたなら、朝ごはん食べますか?」
「うん。宇沙ちゃんが作ってくれたの? もう体調はよくなった?」
「はい。おかげさまで、元気になりました。ありがとうございます。サンドイッチを作ったんです」
「それはうれしいな」

 目が覚めてきたのか、木佐さんはいつもの細目でにっこり笑った。
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