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デートみたい①

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「お待たせしました」

 車の窓をコンコンとすると、木佐さんは読んでた本にしおりを挟んで、わざわざ外に出てきてくれた。
 助手席のドアを開けながら、私の格好に目を走らせる。

「思ったより早かったよ。ワンピースが似合うね。かわいい」

 服の組み合わせを考える余裕がなかったので、チョコレート色のざっくりニットワンピースを着てきた。
 お気に入りだけど、さらっとそんなことを口にする人のことを信用できなくて、じとっと見てしまう。
 私を座らせ、ほがらかに笑った木佐さんは顔を寄せて、「本当だよ」と言った。ついでとばかりに、スルッと頬を撫でていく。
 
(ますます信用できない!)

 熱くなった顔を見られたくなくて、そっぽを向いた。
 ハハッと楽しげな笑い声をあげて、木佐さんは運転席に戻ると車を発進させた。


「宇沙ちゃんは動物好き?」
「はい。ペットを飼ったことがないので、触ったことはあまりありませんが、見るのは好きです」
「そしたら、ちょうど着いたらペンギンの餌やりタイムみたいだよ。行ってみる?」
「行きたいです!」
「光と音楽に合わせたイルカのショーも有名なんだよね、ここ」

 私を待ってる間に調べてくれたみたいで、信号待ちのとき、木佐さんは水族館のプログラムをスマホで見せて、「他になにが見たい?」と聞いた。
 ショーは三種類もあり、いろんな動物への餌やりタイムも多くて、確かに絞らないと肝心なものを見逃しそうだ。
 と、考えたところで、すっかり水族館を楽しむ気持ちになっているのに気づく。

(だいたい、なんで木佐さんと水族館に行く必要があるの?)

 そう思っていたのに、水族館に着くと心が弾んだ。

「ペンギンエリアはこっちだよ」

 水族館の入口の時点で、すでに餌やりの時間ギリギリで、木佐さんが手を引き、案内してくれる。
 いくつか魚の水槽を通り過ぎた奥に人だかりがあった。
 低い透明な壁で囲われた中に二十羽ぐらいのペンギンがいて、バケツを持った飼育員さんの下にヒョコヒョコと集まってきているところだった。
 プールの中から、ピョイッと飛び出てきた子もいる。
 かわいい。

「間に合ったね」

 人の隙間に私を押し込み、木佐さんは私の背後に立った。お腹に手が回ってきて、バックハグのような体勢になる。背中があったかい。

「なんで……」

 抗議しようと、振り返ると、「ほら、始まるよ」とささやかれ、慌てて前を向く。
 飼育員さんは次々とお魚をペンギンに与えていく。
 思ったより大きい魚を丸呑みするようにペンギンが上を向いて食べていく。
 他のペンギンが邪魔でなかなか飼育員さんに近づけず、餌をもらえない子もいて、ハラハラしたけど、飼育員さんはちゃんと見ていて、お魚をあげていたので、ほっとした。

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