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もう疑わない

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「そういえば、来週からしばらく仕事が忙しくて、夕食をここでとれないと思う」

 食後のお茶をしていると、拓斗が言い出した。このところ、拓斗が早めに帰ってくると、こうして一緒にお茶を楽しんでいる。もちろん、お茶請けははるやの羊羹や和菓子だ。
 この時間がとても好きな望晴は残念に思ったが、それよりも拓斗の体調が心配で、顔を曇らせた。

「そんなに忙しくなるんですね。どこかで暇を見つけて、なにか食べてくださいね」

 望晴は彼を気づかっただけだったのに、その表情を誤解したようで、拓斗は焦ったように言う。

「今回は本当に忙しいんだ。でも、朝食は一緒にとりたい」
「疑ってなんかいませんよ」

 おかしそうに望晴は笑った。

「それなら、よかった」

 拓斗もほっとしたように表情を緩める。
 そして、追加で説明してくれた。

「今回のコンペはどうしても取りたいんだ。だから、準備を入念にしたくて」
「がんばってくださいね!」
「あぁ。それが終わったら、結婚式のことを詰めよう」
「はい!」

 忙しいのに、自分に時間を割いてくれようとする拓斗の気持ちがうれしくて、望晴は微笑んだ。
 彼がすーっと望晴の頬をなで、あごを持ち上げた。すぐ唇が下りてくる。
 何度かついばんだあと、息のかかる距離で、拓斗は彼女を見つめてきた。

「望晴、愛してる」

 先日のことがあってから、拓斗は隙あらば、こうして愛を伝えてくれる。
 それはもう恥ずかしくなってしまうくらいまっすぐに。
 しばしば「好きだ」「かわいい」「愛してる」のコンボを決められるので、顔が沸騰しそうになる。
 音をあげた望晴は「そんなにムリに言ってくれなくても大丈夫ですよ」と言ってみたが、「思ったことを口に出しているだけだが?」と平然と返され、ますます顔が熱くなった。
 
「私も愛してます」

 いつもそう答えては照れてしまう望晴だったが、拓斗がうれしそうに笑うので、がんばって返している。
 微笑んだ拓斗は彼女を引き寄せ、また口づける。
 だんだんキスが深まっていったところで、ふいに彼は唇を離した。

「だめだ。君を休ませなくては」

 とろんとなっていた望晴はさみしくなって、彼の首もとに腕を回した。

「明日お休みだから、大丈夫ですよ……」

 ねだるようにささやいて、彼を見上げる。

「っ、君は僕の理性を簡単に砕くな……」

 喉奥を鳴らした拓斗は彼女の唇に吸いついた。そして、もう止まることはなかった。
 望晴はたっぷり愛された。

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