46 / 62
知りたくなかった事実②
しおりを挟む
(もうここに来るのはやめよう)
颯⽃の結婚話を聞くのは嫌だし、同居ともなれば、奥さんになる⼈とも会う可能性がある。
そんなの耐えられないと思ったのだ。
貴和⼦も颯⽃もいない今⽇がちょうどいいと思った。
「藤河社⻑、終わりました」
「今⽇も⾒事だな」
「ありがとうございます。それで、⼤変申し訳ありませんが、⼀⾝上の都合で、今⽇でこちらの仕事を終了させていただきたいのです」
「今⽇で? 貴和⼦が残念がるな」
「奥様には直接ご挨拶できずに申し訳ございません」
急な話に彼は⼾惑っていたが、⼀花は頭を下げ続けた。彼⼥に続ける意思がないことを⾒て取ると、彼は了承した。
「わかった。しかたないな」
「お世話になりました。くれぐれも奥様にもよろしくお伝えくださいませ」
もう⼀度深く頭を下げてから、⼀花はその場を辞した。
⾞で帰宅する途中、とうとう涙があふれた。路肩に停⾞すると、顔を覆う。
後から後から涙が流れて止まらない。
こんなに泣いたのは久しぶりだった。
⽬が痛くなるほど泣いて、疲れ果てた⼀花はスマートフォンを取り出し、颯⽃の連絡先をブロックしてから、削除した。
(これでもう彼との繋がりは消えた……)
あっけなかった。
それほどに彼との縁は薄いものだったのだ。
もう彼の⼈⽣と交わることもないだろう。
⼀花はパンッと⾃分の両頬を叩いて気合いを⼊れた。
(仕事頑張ろう! 営業しなくっちゃね!)
取引先が⼀つ減ってしまったから、挽回せねばと無理やり思考を仕事に切り替える。
それから⼀週間、⼀花は休憩も取らない勢いで働いた。
隙間時間には本を読んだり、装花のデザインを描いたりして、とにかく頭の中をなにかで埋めようとした。
それでも気を抜くと、颯⽃の顔が浮かんでしまい、ほろりと涙がこぼれそうになったが。
颯⽃の結婚話を聞くのは嫌だし、同居ともなれば、奥さんになる⼈とも会う可能性がある。
そんなの耐えられないと思ったのだ。
貴和⼦も颯⽃もいない今⽇がちょうどいいと思った。
「藤河社⻑、終わりました」
「今⽇も⾒事だな」
「ありがとうございます。それで、⼤変申し訳ありませんが、⼀⾝上の都合で、今⽇でこちらの仕事を終了させていただきたいのです」
「今⽇で? 貴和⼦が残念がるな」
「奥様には直接ご挨拶できずに申し訳ございません」
急な話に彼は⼾惑っていたが、⼀花は頭を下げ続けた。彼⼥に続ける意思がないことを⾒て取ると、彼は了承した。
「わかった。しかたないな」
「お世話になりました。くれぐれも奥様にもよろしくお伝えくださいませ」
もう⼀度深く頭を下げてから、⼀花はその場を辞した。
⾞で帰宅する途中、とうとう涙があふれた。路肩に停⾞すると、顔を覆う。
後から後から涙が流れて止まらない。
こんなに泣いたのは久しぶりだった。
⽬が痛くなるほど泣いて、疲れ果てた⼀花はスマートフォンを取り出し、颯⽃の連絡先をブロックしてから、削除した。
(これでもう彼との繋がりは消えた……)
あっけなかった。
それほどに彼との縁は薄いものだったのだ。
もう彼の⼈⽣と交わることもないだろう。
⼀花はパンッと⾃分の両頬を叩いて気合いを⼊れた。
(仕事頑張ろう! 営業しなくっちゃね!)
取引先が⼀つ減ってしまったから、挽回せねばと無理やり思考を仕事に切り替える。
それから⼀週間、⼀花は休憩も取らない勢いで働いた。
隙間時間には本を読んだり、装花のデザインを描いたりして、とにかく頭の中をなにかで埋めようとした。
それでも気を抜くと、颯⽃の顔が浮かんでしまい、ほろりと涙がこぼれそうになったが。
56
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む
華藤りえ
恋愛
塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。
ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。
それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。
神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。
だが二人に思いもかけない事件が起きて――。
※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟
※R18シーン有
※全話投稿予約済
※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。
※現在の版権は華藤りえにあります。
💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕
※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様
デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟

二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜
Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。
結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。
ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。
気がついた時にはかけがえのない人になっていて――
表紙絵/灰田様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる