44 / 62
終わっちゃった②
しおりを挟む
「それじゃあ、パーティーに戻るよ。着替えは届けさせるから、君は先に帰っていていい。例の件はきっちりケリをつけてくるから安⼼しろ」
「わかりました。いってらっしゃい」
⼀花がうなずくと、颯⽃はチュッと触れるだけのキスをして、部屋を出ていった。
あっという間だったので、避ける暇もなかった。
唇を押さえて、閉じたドアを眺める。
(挨拶代わりみたいにキスをしないでほしいわ。私はそんなに割り切れないの……)
溜め息をついた⼀花は浴室へ⼊った。
髪の⽑も肌もべとついて気持ち悪かった。
ふと鏡を⾒て、愕然とする。
シャンパンで化粧が落ちているし、髪はべっとりと顔に貼りつき、ひどい恰好だったのだ。
颯⽃にこんな姿を⾒られていたのかと思うと、恥ずかしくてならない。
(これを⾒て魅⼒的って⾔うなんて、颯⽃さんは趣味が悪いんじゃない?)
頭の中で⼋つ当たりめいた⽂句を⾔いながら、⼿早くシャワーを浴びた。
シャンパンを洗い流し、髪を乾かして、すっきりした⼀花はバスローブをまとう。
ここのバスローブはタオル地で、下着もつけているので、前ほどしどけない恰好にならなくてほっとする。
ドレスも洗いたかったが、⽔洗いしていいかわからず、とりあえず丁寧にシャンパンを拭き取るだけにしておいた。
そうしていると、チャイムがなり、ホテルの従業員らしき⼥性が服を届けてくれる。
代わりに汚れたドレスを持っていってくれた。
颯⽃の指⽰でクリーニングに出してくれるらしい。
相変わらず、気が利く⼈だと思いつつ、ありがたく服を着替えた。
それは空⾊の上品なワンピースだった。
⼩さなパーティーバッグにかろうじてグロスだけ⼊っていたので、それをつけてホテルを出た。
「本当に終わっちゃったなぁ」
豪華なホテルを振り返って、⼀花はつぶやく。
「次は仕事でこういうところに来れるように頑張ろう!」
無理やり⾃分のテンションを上げてみた。
明⽇は⼟曜⽇。いつもの藤河邸の装花がある。
このところひそかに楽しみになっていた⽇が今は⼼に重くのしかかる。
(颯⽃さんに会いたくないなぁ。でも、会いたい)
住む世界が違うから、今回のことがなければ、親しくなんてなるはずもなかった⼈だ。
あきらめないといけないと思うのに、つい彼のことを考えてしまう。
(まぁ、考えてもしかたないか!)
うじうじ悩むのは好きではない⼀花は、⾸を振って、想いを頭から追い出した。
「わかりました。いってらっしゃい」
⼀花がうなずくと、颯⽃はチュッと触れるだけのキスをして、部屋を出ていった。
あっという間だったので、避ける暇もなかった。
唇を押さえて、閉じたドアを眺める。
(挨拶代わりみたいにキスをしないでほしいわ。私はそんなに割り切れないの……)
溜め息をついた⼀花は浴室へ⼊った。
髪の⽑も肌もべとついて気持ち悪かった。
ふと鏡を⾒て、愕然とする。
シャンパンで化粧が落ちているし、髪はべっとりと顔に貼りつき、ひどい恰好だったのだ。
颯⽃にこんな姿を⾒られていたのかと思うと、恥ずかしくてならない。
(これを⾒て魅⼒的って⾔うなんて、颯⽃さんは趣味が悪いんじゃない?)
頭の中で⼋つ当たりめいた⽂句を⾔いながら、⼿早くシャワーを浴びた。
シャンパンを洗い流し、髪を乾かして、すっきりした⼀花はバスローブをまとう。
ここのバスローブはタオル地で、下着もつけているので、前ほどしどけない恰好にならなくてほっとする。
ドレスも洗いたかったが、⽔洗いしていいかわからず、とりあえず丁寧にシャンパンを拭き取るだけにしておいた。
そうしていると、チャイムがなり、ホテルの従業員らしき⼥性が服を届けてくれる。
代わりに汚れたドレスを持っていってくれた。
颯⽃の指⽰でクリーニングに出してくれるらしい。
相変わらず、気が利く⼈だと思いつつ、ありがたく服を着替えた。
それは空⾊の上品なワンピースだった。
⼩さなパーティーバッグにかろうじてグロスだけ⼊っていたので、それをつけてホテルを出た。
「本当に終わっちゃったなぁ」
豪華なホテルを振り返って、⼀花はつぶやく。
「次は仕事でこういうところに来れるように頑張ろう!」
無理やり⾃分のテンションを上げてみた。
明⽇は⼟曜⽇。いつもの藤河邸の装花がある。
このところひそかに楽しみになっていた⽇が今は⼼に重くのしかかる。
(颯⽃さんに会いたくないなぁ。でも、会いたい)
住む世界が違うから、今回のことがなければ、親しくなんてなるはずもなかった⼈だ。
あきらめないといけないと思うのに、つい彼のことを考えてしまう。
(まぁ、考えてもしかたないか!)
うじうじ悩むのは好きではない⼀花は、⾸を振って、想いを頭から追い出した。
52
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
やさしい幼馴染は豹変する。
春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。
そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。
なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。
けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー
▼全6話
▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています
【R18】マーキングしてきた虎獣人と結婚した後の話
象の居る
恋愛
異世界転移したユキとムキムキ虎獣人のアランが結婚して半年。ユキが束縛されてないか、勤務先の奥さまに心配されるも自覚がないため意味がわからず。それは獣人のマーキング事情によるものらしく……。
前作『助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話』の続きです。これだけでも読めますが、前作を読んだほうが楽しめると思います。↓にリンク貼りました。
表紙はAKIRA33(@33comic)さんからいただいた、前作のファンアートです。
アランとユキ!!
ムキムキトラ獣人とエロ可愛いユキ……(;▽;) サイコーです
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる