シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

入海月子

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うちのホテルとは

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 彼は照れたように⾒返してきたと思ったら、慌てて横を向いた。急にジャケットを脱ぎはじめる。

「濡れていてすまないが……」

 視線を逸らしたまま、颯⽃がジャケットを差し出してくるので、⼀花はきょとんとそれを⾒た。
 彼⼥の反応に、颯⽃は⾔いづらそうに⼝を開く。

「服が……」
「え、あ、あぁーっ!」

 ⾃分の服を⾒下ろした⼀花は、ブラウスが⽔で貼りついた上、透けて、下着がくっきりと⾒えているのに気づいた。
 悲鳴を上げて、胸を隠し、ありがたく颯⽃のジャケットを借りる。

「お⾒苦しいものを⾒せてしまって、すみません!」
「いや、こちらこそ、重ね重ねすまない」

 ⽬のやり場に困る姿を隠してもらって落ち着いた颯⽃はエアコンの温度を上げた。

「くしゅん」

 温⾵の勢いに⼀花はかえってくしゃみをした。濡れた服に⾵が当たって冷たい。
 彼⼥を気遣うように⾒て、颯⽃は提案してきた。

「この格好じゃどこにも⾏けないな。近くにうちのホテルがあるからそこに⾏かないか? 服を乾かそう」
「うちのホテル!?」

 そんな表現聞いたことがないと⼀花は驚愕の声を上げる。
 颯⽃はなんでもないように⾔う。

「あぁ、藤河グループのリゾートホテルがあるんだ。⾵呂で温まらないと⾵邪を引くだろう?」

 たしかに、ゲリラ豪⾬のせいで急激に気温が下がり、濡れているせいで寒くなっていた。
 温かいお⾵呂に誘惑されて⼀花はうなずいた。
 彼の⾔う通り、こんなに濡れた格好ではケーキ屋にも⾏けない。

「よし、すぐ着くからな」

 颯⽃は⾞を発進させた。
 ⼗分ほどで⽬的のホテルに着く。
 海に⾯した⾼台の上に建つホテルは真っ⽩な壁と⼤きなガラス窓でできた瀟洒な建物だった。いかにも⾼級そうなリゾートホテルだ。
 ⾞寄せに停まると、ドアボーイが⾞のドアを開けてくれる。
 颯⽃は彼に⾞のキーを渡し、⼀花に⼿を差しだした。
 その⼿を取り、⼀花は⾞を降りた。
 すたすたとロビーに⼊ってきた颯⽃を⾒て、コンシェルジュが駆けよってくる。
 そこは⽩い⼤理⽯の床と壁に加え、円柱に⽀えられたアーチ壁が優雅で、ヨーロピアンな雰囲気だった。

「副社⻑、お疲れ様です!」
「⾬に降られてしまって。部屋を⽤意できるか?」
「もちろんです」
「ランドリーサービスも利⽤したい」
「承知しました。係りの者を部屋に伺わせます」

 颯斗とコンシェルジュのやり取りを聞いていたフロント係が部屋のカードキーを持ってくる。

「ラグジュアリースイートをご⽤意しました」
「ありがとう」

 カードキーを受け取った颯⽃が⼀花の背中を押して、エレベーターホールへと誘導する。
 ただならぬ⾔葉が聞こえたと⼀花は唖然としていた。

(スイートの上にラグジュアリー?)
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