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嫌がらせの始まり
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ガッシャーン、ゴトン、ゴロゴロ……。
派⼿な⾳が響いて、何ごとかと家から⾶び出てきた⼀花の⽬に映ったのは、⾞に積み込もうとしていた花が什器ごとなぎ倒されていた光景だ。
それは⼀花が仕事に出かける準備中、忘れ物を取りに家に⼊った短い間の出来事だった。
「うそでしょ!?」
愕然として⽴ち尽くす。
今⽇は藤河邸に⾏く⽇で、それ⽤の花だった。
「⾵……のわけないわよね……」
そんな強⾵が吹いていた様⼦はない。
毎⽇やっている作業なので、置き⽅が不安定だったとも考えられない。
誰かが故意に倒したとしか考えられなかった。
(いったい誰が?)
しかし証拠はなく、警察に届けるほどのことではないと思い、⼀花は急いで什器を起こし、救済できる花を探していった。
残念ながら、倒れた拍⼦に傷んでしまったものが多く、七割⽅使い物にならなかった。
ショックを受けつつ、残った花に常時ストックしているグリーンを⾜して藤河邸へ向かう。
少し遅くなってしまったので、遅れる連絡を⼊れた。
⼟曜⽇の仕事は今のところ、藤河邸のものしかないので、朝⼀に作業させてもらって、終わったあとは⾃分の休⽇にしている。ほかの⽇だったら、⼀⽇に⼆、三件依頼が⼊っていることが多いから、スケジュールが押していたかもしれない。あとの仕事に響かなくてよかったと⾃分を慰めた。
インターフォンを鳴らすと、颯⽃がドアを開けてくれる。
挨拶した⼀花の顔を目にするなり、彼は聞いてきた。
「どうした? 元気ないな」
先ほどの出来事からまだ⽴ち直れておらず、⼀花の顔はこわばったままだったのだ。
花をだめにされたのもショックだったが、そんな嫌がらせをされたこと⾃体に気持ち悪さを感じていた。
誰が、というより、どうして、という考えが頭から離れない。
⼦どものいたずらかもしれないと思いたいが、結構な重量のある什器をなぎ倒すにはそれなりに⼒がいる。
「…………」
黙って、颯⽃の顔を⾒つめた⼀花に、彼は促した。
「なにがあった? ⾔ってみろ」
それは頼りになると思わせる声で、できる上司はこんな⾵かもしれないと思いながら、⼀花は思わず⼝を開いた。
派⼿な⾳が響いて、何ごとかと家から⾶び出てきた⼀花の⽬に映ったのは、⾞に積み込もうとしていた花が什器ごとなぎ倒されていた光景だ。
それは⼀花が仕事に出かける準備中、忘れ物を取りに家に⼊った短い間の出来事だった。
「うそでしょ!?」
愕然として⽴ち尽くす。
今⽇は藤河邸に⾏く⽇で、それ⽤の花だった。
「⾵……のわけないわよね……」
そんな強⾵が吹いていた様⼦はない。
毎⽇やっている作業なので、置き⽅が不安定だったとも考えられない。
誰かが故意に倒したとしか考えられなかった。
(いったい誰が?)
しかし証拠はなく、警察に届けるほどのことではないと思い、⼀花は急いで什器を起こし、救済できる花を探していった。
残念ながら、倒れた拍⼦に傷んでしまったものが多く、七割⽅使い物にならなかった。
ショックを受けつつ、残った花に常時ストックしているグリーンを⾜して藤河邸へ向かう。
少し遅くなってしまったので、遅れる連絡を⼊れた。
⼟曜⽇の仕事は今のところ、藤河邸のものしかないので、朝⼀に作業させてもらって、終わったあとは⾃分の休⽇にしている。ほかの⽇だったら、⼀⽇に⼆、三件依頼が⼊っていることが多いから、スケジュールが押していたかもしれない。あとの仕事に響かなくてよかったと⾃分を慰めた。
インターフォンを鳴らすと、颯⽃がドアを開けてくれる。
挨拶した⼀花の顔を目にするなり、彼は聞いてきた。
「どうした? 元気ないな」
先ほどの出来事からまだ⽴ち直れておらず、⼀花の顔はこわばったままだったのだ。
花をだめにされたのもショックだったが、そんな嫌がらせをされたこと⾃体に気持ち悪さを感じていた。
誰が、というより、どうして、という考えが頭から離れない。
⼦どものいたずらかもしれないと思いたいが、結構な重量のある什器をなぎ倒すにはそれなりに⼒がいる。
「…………」
黙って、颯⽃の顔を⾒つめた⼀花に、彼は促した。
「なにがあった? ⾔ってみろ」
それは頼りになると思わせる声で、できる上司はこんな⾵かもしれないと思いながら、⼀花は思わず⼝を開いた。
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