夢魔はじめました。

入海月子

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祈るって……

夢魔はじめました。

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 食事を終えて、私達はまたシュトラーセ大神殿へ向かった。
 明日ここを発つことにしたから、一応報告しとこうということになったのだ。
 明日からアスランとシオリちゃんと一緒にグランデルブルクに旅立つ。
 シオリちゃんと仲良くなれるといいなぁ。

 ルシードにも言っとかないと。
 彼はどうするつもりだろう。

 と思っていたら、ばったりルシードに会った。
 妖艶な美人さんを連れている。
 彼はどこにいても人生を楽しんでる感じね。

「やぁ、こんなところで会うとはね」
「偶然ですね。ちょうどよかった。私達、明日ここを発つことにしたんです。それを伝えたかったんです」
「そうなんだ。グランデルブルクに行くの?」
「そうです。ルシードはどうしますか?」
「僕は適当にここで遊んで、気が向いたら、君達を追いかけるかな。せっかく彼女と仲良くなったところだし」

 そう言って、ルシードは腕を組んでいる美人さんと笑みを交わした。
 わぁ、美男美女だから、絵になるわ。

「わかりました。それじゃあ、また」
「うん、じゃあね」

 ルシードに手を振って、私達は先を進む。



 大神殿に着くと、マルローさんを呼んでもらった。
 昨日と違って、待たされることなく、彼は現れた。

「どうしました?」

 穏やかな顔つきで彼は出迎えてくれた。
 ライアンは挨拶をして、要件を伝える。

「私達はグランデルブルクに向けて、明日ここを発とうと思って、お伝えに参りました」
「なるほど。それはご丁寧にありがとうございます。例の部隊は昨夜無事に現地に着きました。あなた達が国に着く頃には状況が一変しているでしょう」

 部屋に入ってるわけじゃないから、マルローさんは内容をぼかして教えてくれた。
 ライアンが知りたがっていた内容だった。
 彼はホッとした笑みを浮かべる。

「ご尽力に感謝いたします」
「いいえ、我々の使命でもありますから」

 頭を下げるライアンに、マルローさんはにこりと微笑んだ。
 そして「要件がそれだけなら、これで失礼します」と去っていった。

 本当にこれだけ伝えるために結構歩いたわ。
 お昼を食べたところから1時間以上は歩いている。
 スマホがあれば、一瞬で終わる要件なのにね。

 人間に戻ってから、姿かたちは変わってないのに、夢魔の時の体力はなくなってるみたいで、朝から一日出かけただけで、クタクタになってる。
 ライアンに言っておかないと、帰りの旅で迷惑をかけてしまいそう。

 私の歩みが遅くなってきたのに気づいて、ライアンは私を見た。

「疲れたか?」
「はい、ちょっと。体力がなくなったみたいです。っていうか、前が異常で元に戻ったんだと思います」
「それは気づかなくて、ごめん。どっかで休んでいくか?」
「できれば、どこかに座りたいです」
「わかった。これからも疲れたら遠慮なく言うんだぞ?帰りはさほど急ぐ旅じゃないし」
「ありがとうございます」

 私が微笑むと、ライアンは愛しそうに頬をなでてくれた。

 幸い、ここは繁華街だ。
 大神殿の門前町になっているから、食事処やカフェなどもいっぱいあった。
 目についた手近なカフェに入ることにした。

 この世界に来てからカフェなんて初めて入るわ。
 ワクワクしてメニューを見る。

「わぁ、ケーキがある!」

 メニューにはいろんな種類のケーキの絵が描いてあった。
 ショートケーキ、タルト、シフォンケーキ……。
 でも、チョコレート系はなかった。
 この世界にチョコはないのかな?
 ライアンも知らなかったし。

 生クリーム、カスタードクリームがあるだけでもうれしい。
 もう出会えないかと思ってた。

 気がつくと、テンションが上がりまくりの私をライアンがおかしそうに見ていた。

「エマも甘党だったんだな」
「はい、甘いもの大好きです!」
「それはよかった。これから一緒にこういうところに来れるな」

 ライアンもうれしそうだった。
 物珍しそうに、かわいらしい店内をキョロキョロ眺めてる。

 そういえば、前に甘いものが好きだけど、買いに行くのが恥ずかしいから自分で作るようになったって言ってたわ。
 こういう素敵なカフェもライアンにはハードル高かったのかな。

 私は散々迷って、プリムのショートケーキにした。
 タルトも気になるけど、とにかく生クリームが食べたい。
 ライアンはチーズタルトにしていた。

「美味しーい!」

 一口食べて、ニコニコしてしまう。
 プリムの甘酸っぱい果汁がジュワッと口の中に広がり、それを生クリームとふんわりしたスポンジが包む。
 溶けるように、あっという間に口の中からなくなってしまった。
 疲れた身体に甘さが沁みる。

「こっちもうまいぞ?」

 ライアンがフォークに刺したチーズタルトを差し出してくれる。

 ぱくん

 お、美味しい……。
 クリーミーなチーズがほどよい甘さで、サクサクのタルトと絡まって絶妙な味を醸し出している。
 思わず、頬に手を当てて、微笑んだ。

「こっちも食べますか?」

 私は自分のケーキをライアンの口許に差し出す。
 ぱくりと大きな口でそれを食べたライアンも幸せそうに微笑んだ。

「爽やかな甘さだな。うまい。いくらでも食べられそうだ」

 私達はお互いのケーキを分け合いながら、それを堪能した。

 そういえば、この世界になさそうなのがコーヒー。
 紅茶よりコーヒー派の私はちょっと残念。
 こういう美味しいケーキを食べる時はコーヒーが欲しかった。
 ラノベの世界だと、ないなら作って、のし上がるなんてこともあるかもしれないけど、私には知識も技術もない。
 目立ちたいわけでもないから、これからは普通に働いて暮らしていきたいな。



 大満足の休憩を取った後、私達は宿に戻った。
 もう陽が落ちて暗くなっている。
 帰りがけに夕食用にいくつかテイクアウトしてきた。
 昨日、ライアンが食べてた羊肉の煮込みも買ってもらった。
 味見させてもらってすごく美味しかったから。
 考えたら、あの時はまだ夢魔だったのよね。
 はるか昔のことのよう。
 一緒に食事を楽しめるって本当にうれしいことだわ。

「さすがにまだ腹は減ってないだろうから、先に風呂に入るか?」
「はい。身体が冷え切ってるから、温まりたいです」

 そう言う私の頬に手を当てると、ライアンは「確かに冷えてるな」と言って、両手で温めるように頬を挟み込んだ。



 お風呂に行って、いつものように身体を洗おうとしたら、後ろからライアンが「洗ってやろうか」と泡立てた石鹸と共に手を身体に滑らせた。

 最初は普通に背中を洗ってくれてたんだけど、前の方に手が来ると、ぴったり背中にくっつきながら、胸を大きく円を描くように擦り、脇腹を通ると、右脚を持ち上げて、足指から順に両手でなで下ろしていく。
 洗ってると言えば洗ってるのかな?
 触れられたところがじわじわ熱を帯びてきて、欲望の火を点していく。
 片脚を上げた姿が淫らで赤面する。

「あ、あのライアン、恥ずかしいです……」

 私が言うと、彼は耳許で笑った。

「そうか?俺は楽しい」
「もうっ、ライアン!早く湯船に……あんっ」

 脚の付け根まで下りてきた手が敏感なところを掠って、クリッと捻ると、左脚に移っていった。
 今度は左脚を上げられて念入りに洗われる。

「んっ……ライアン……ああん……」

 完全に火を点けられた身体は、右脚と同じことされてるはずなのに、官能を拾って、甘い吐息を漏らしてしまう。

 ライアンはクスッと笑って、私の首筋に唇を押し当てた。
 チロッと舐められる。

「やっ、あん……だめ、です……」
「なにが……?」

 首筋を移動しながら、ライアンがくぐもった声で聞く。
 手は脚の間まで下りてきた。
 触られると、そこがすでにトロトロ蜜をこぼしてるのがバレてしまう。

「そこ、触っちゃ、あんっ……」

 手のひらを当たられて、中指を秘裂に沿って動かされると、腰が跳ねた。

「ここ…ぬるぬるだから、しっかり洗わないとな」

 手のひらで秘部全体を擦られる。

「は…あん……あ……」

 もう片方の手は胸に戻ってきて、もにもにと乳房を揉む。
 両手とも気持ちいいけど、一番感じるところには触れず、もどかしくて、身をよじる。

「ライアン……」

 呼びかけたけど、やめてほしいのか、もっとしてほしいのか、もうわからなくなっている。

 振り向かされて、唇を塞がれる。

「ごめん、エマ……我慢できない…」

 ライアンはそう言うと、私のお尻を持ち上げ、後ろから挿入した。

「ああんっ」

 蕩けていたそこはズブズブと入ってくる熱く太いものをすんなり受け入れる。
 ミチミチと私の中が満たされていく。
 奥まで行き着くと、ギリギリまで、引き抜かれてまた腰を打ちつけられた。

 パンッ、パンッ、パンッ………

 肉の当たる音が響いて、私は壁に手をつき、嬌声をあげた。
 いつの間にか、膝立ちになって、ライアンのモノを受け止めていた。

「あっ、あっ、はっ、はあっ、ああっ」

 激しい……。
 頭が真っ白になって、ただひたすら揺さぶられる。
 すぐに限界が訪れて、背中を反らせて、身体を強張らせた。

「ああぁーーッ」

 奥に熱いものが広がる。
 ビクビクして、私の奥がそれを取り込もうと蠢く。
 また中で出されちゃった。

「赤ちゃんが…できちゃう……」

 荒い息のままつぶやくと、ライアンが「ん?エマは子どもが欲しいのか?だったら、俺も祈らないとな」と言うから、「祈る?」と尋ねる。

「子どもが欲しかったら二人で祈らないとダメだろ?」

 私の身体を向かい合わせにして、ライアンが言う。

 んん?
 私の常識と違うような……?

「この世界では祈らないと赤ちゃんできないんですか?」
「もちろんだ。エマの世界では違うのか?」

 ライアンは不思議そうに言う。

「はい。こういうことをすると、確率で赤ちゃんができます」
「祈らなくても?」
「はい」
「じゃあ、望んでないのにできたら困るじゃないか」
「そうです。だから、避妊するんです」
「ひにん?」

 そっか、望まない妊娠がないから避妊という考えもないんだ。
 なんて合理的!

「ひにんってなんだ?」

 私はライアンに抱きついて答えた。

「知る必要ないことです」
「そうか?」

 釈然としない様子だったけど、ライアンは私から出て、シャワーで身体を流してくれた。
 湯船に導かれて、一緒に浸かる。

 あったかくて気持ちいい。
 身体がほぐれていく。

 ライアンが後ろから腕を回し、私を自分に引き寄せた。
 頬も合わせられ、ぴったり身体が重なる。

「ふふっ」

 自然に笑みがこぼれる。
 お腹に回った腕に手を重ねる。

「好き……」

 漏れ出た言葉に、ライアンはギュッと腕に力を入れた。

「俺も好きだ。好きでしかたない」

 熱いキスをされた。
 角度を変えて何度も。

「部屋に戻ろう……」

 頬にもキスが落とされ、抱き上げられた。



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