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パラド教皇
夢魔はじめました。
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それから私達は、2時間以上待たされた。
一度、別の聖職者っぽい人がお茶を出しに来てくれたけど、それっきり放置されている。
「教皇様にお会いするには時間がかかるんですね」
「そうだな。まずは俺の手形を調べて、それから上の者にお伺いを立てて、またその上の者に……って手順だろうからな。教皇の耳に入るまでに今ぐらいの時間はかかるんじゃないか」
「そうなんですね」
「しかも、パラド教皇はお忙しい方だから、そのスケジュールの合間にお尋ねしないといけないからな」
ライアンはのんびり待つ構えだった。
やっぱり偉い人に会うのにはそれだけ時間がかかるのね。
ぽつりぽつり話をしながら、私達はひたすら待った。
主に話しているのはライアンとアスランで、アスランの連れの女の子──シオリちゃんという和風な名前だった──は恥ずかしがり屋のようで、ほとんど話さなかった。
そういう私も人懐こい方じゃないから、話しかけるのも苦手で、目が合うとお互いに微笑むだけだった。
同じくらいの歳の女の子とも話をしてみたいんだけどね。
3時間が経とうとした頃、外がいきなり騒がしくなって、ノックと共にドアが開いた。
「随分待たせたようで、申し訳なかった」
そう言って入ってきたのは、恰幅のいい柔和な顔をしたお爺さん。
でも、豪華なローブを纏って、頭にはキラキラ装飾のある丸い帽子をかぶってて、なんだか偉い人のよう。
「パラド教皇!」
ライアンとアスランが慌てて立ち上がって、片膝をついた。
シオリちゃんと私もそれぞれの連れに引っ張って、跪かされる。
えぇー!
ずっと待ってた本人がまさかこんな控え室に来るなんて!
「よいよい、楽にしてくれ」
パラド教皇は手でソファを指し示し、座るように言った。
「教皇様、せめて場所を変えたらどうでしょう?」
お付きの人が言ったけど、彼は「時間がもったいないからここでいい」と言って、一人掛けソファに座った。
目で促されたので、皆、ソファに座る。
「久しいな、ライアン。アリードからの知らせを待っておったんだ。さすがになんの要請もなく動けないからな」
焦れたように教皇が言った。
アリード王子の叔父さんでもあるらしい彼は、とても心配してたみたい。
「お久しぶりでございます、猊下。私の名前まで覚えていてくださり、恐悦至極に存じます。早速ですが、こちらがアリード様の親書にございます」
口調を改めて、ライアンが恭しく親書を差し出した。
パラド教皇は、すぐそれに目を通す。
「なんと、グランデルブルクが悪魔教に侵食されていたという情報は真だったのか……」
「左様でございます。アーネスト陛下は完全に操られています。さらに悪いことに、道中で聞いた情報によると、アリード様は幽閉されておられるようです」
「なんということだ!」
パラド教皇は親書を握りしめ、怒りで顔を赤くした。
「私の力が及ばず誠に申し訳ございません。猊下のお力に縋るしかなく……」
ライアンが頭を下げると、教皇は首を横に振った。
「いやいや、そんな中、よくぞここまで来てくれた。礼を言う」
「とんでもございません!もったいないお言葉です!」
今度はライアンが首を振った。
「さっき報告があったが、我が国まで悪魔教の奴らが入り込んでいたようだな。すでに捕えたが、あのような輩に追われてここまで来るのは大変な苦労だったと思うぞ。これからはわしが引き受けた。安心するといい」
「ありがとうございます!アリード様をよろしくお願いいたします……」
ライアンとアスランは深く頭を下げた。
私もそれに習って頭を下げる。
頭を上げるように言われて、教皇を見ると、柔和な顔に好戦的な色を宿して、ニヤリと笑った。
「もちろんだ。かわいい甥を助けるだけでなく悪魔教に対抗するのはわしの役目だからな。実は、噂を聞いた時から、『慈悲の光』を待機させておる」
「慈悲の光を……!?」
「それは心強い!」
ライアン達は、目に見えて安堵した。
教皇に感謝の眼差しを向けている。
『慈悲の光』?
ライアン達の反応からすると、なにかすごい強い人達なのかな?
「『慈悲の光』とは高位の僧兵で、悪魔教の術に対抗できる力を持つ精鋭集団じゃよ、お嬢さん」
私がキョトンとしているのがわかったのか、教皇自ら説明してくれる。
「ありがとうございます」と言う私を、なにか気になったように教皇は改めてじっと見つめた。
隣のシオリちゃんと見比べるように、しばらく見つめて、溜息をつく。
「変わった子達を連れておるのう……」
ライアン達が慌てて私達を背中にかばった。
ヤバい!
もしかして、夢魔だってバレちゃったのかしら?
でも、シオリちゃんも?
「よいよい。お前達が大事にしているのは見て取れるし、その子達も悪さをするようには見えない。しかも、不思議なことにその子達から神の祝福を感じる。まぁ、そっとしておくことにしよう」
教皇の言葉に、皆、胸をなでおろした。
このクラスの人になるといろいろわかっちゃうのね……。
「それはそうと、お前達に褒賞を与えないとな」
「必要ございません!アリード様をお助けいただけるだけで十分です」
「そうは言ってもな……」
教皇が困ったように微笑んだ。
すると、ライアンが躊躇いがちに口を開いた。
「ひとつだけ、図々しいお願いが………」
「なんだ?」
「ここを目指していた同志の多くが道半ばで倒されました。その者達の鎮魂をお願いできればと……」
痛ましそうな表情で教皇は頷いた。
「よかろう。名を言いなさい」
「はい、感謝いたします!………マーシャル・エバンズ」
「マーシャル・エバンズ」
「モーリス・ラルド」
「モーリス・ラルド」
「ノルド・コルダン」
「ノルド・ゴルダン」……………
十人ほどの名前が挙がった。
教皇はその名前を丁寧に復唱していく。
仲間のことを思い浮かべているのか、ライアンの声が湿りを帯びていった。
「この者達の魂に安らぎを。次なる生への希望を与え給え!」
教皇がそう言うと、ぽわんとした光が現れ、上に登っていき、散っていった。
心がぽっと温かくなった。
「あ、ありがとうございます………!」
「深謝いたします……」
ライアンとアスランは涙ぐみながら、また深く頭を下げた。
教皇は二人の頭に手を当てて、慈悲深い笑顔を浮かべた。
「さて、そろそろわしは行かねばならない。すぐに指示を出すから、お前達は朗報を待っているといい」
「何卒、よろしくお願いいたします」
パラド教皇は温かい笑みを残して、部屋を出ていった。
後にはお付きの人の一人が残って、今後の連絡用に宿の名前を聞いてきた。
「もしくは用があれば、私、ヨラク・マルローを呼び出してください」と言った。
大神殿を出ると、もう夕暮れだった。
ライアンとアスランは晴れ晴れした表情をしていた。
ようやく任務を果たせて、アリード王子を救えそうなんだから、当たり前よね。
重くのしかかっていた肩の荷が下りたんだろうな。
本当によかった。
「なぁ、飯でも食べていかないか?祝杯には気が早いが、慰労会というか」
ライアンが言うと、アスランが喜んで頷きかけて、はっとシオリちゃんを見た。
「有り難いですが、彼女は少食で……」
「アスラン!せっかくだから行きましょうよ」
「しかし……」
アスランはシオリちゃんをもう一度見て慌てると、「今日はお疲れでしょうから、明日にしましょう!私達はこれで失礼します!」と彼女を引っ張るように連れて去っていった。
呆気に取られるライアンと私。
少食って……。
しかも、夕日のせいかシオリちゃんの瞳が赤みがかっていたような?
まさかね。
「フラれたな……。それじゃあ、ちょっと早いが俺達も宿に戻るか」
彼らの後ろ姿を眺めていた私に、ライアンが甘く頬をなでてきた。
彼を見上げると、それ以上に甘い瞳が私を見つめていた。
「任務が終わったんだ。ご褒美をくれるか?」
その言葉に真っ赤になる。
蕩けそうな熱い瞳に絡め取られて目が離せない。
私はそっと頷いた。
ふっと笑って、ライアンは私を抱き寄せた。
一度、別の聖職者っぽい人がお茶を出しに来てくれたけど、それっきり放置されている。
「教皇様にお会いするには時間がかかるんですね」
「そうだな。まずは俺の手形を調べて、それから上の者にお伺いを立てて、またその上の者に……って手順だろうからな。教皇の耳に入るまでに今ぐらいの時間はかかるんじゃないか」
「そうなんですね」
「しかも、パラド教皇はお忙しい方だから、そのスケジュールの合間にお尋ねしないといけないからな」
ライアンはのんびり待つ構えだった。
やっぱり偉い人に会うのにはそれだけ時間がかかるのね。
ぽつりぽつり話をしながら、私達はひたすら待った。
主に話しているのはライアンとアスランで、アスランの連れの女の子──シオリちゃんという和風な名前だった──は恥ずかしがり屋のようで、ほとんど話さなかった。
そういう私も人懐こい方じゃないから、話しかけるのも苦手で、目が合うとお互いに微笑むだけだった。
同じくらいの歳の女の子とも話をしてみたいんだけどね。
3時間が経とうとした頃、外がいきなり騒がしくなって、ノックと共にドアが開いた。
「随分待たせたようで、申し訳なかった」
そう言って入ってきたのは、恰幅のいい柔和な顔をしたお爺さん。
でも、豪華なローブを纏って、頭にはキラキラ装飾のある丸い帽子をかぶってて、なんだか偉い人のよう。
「パラド教皇!」
ライアンとアスランが慌てて立ち上がって、片膝をついた。
シオリちゃんと私もそれぞれの連れに引っ張って、跪かされる。
えぇー!
ずっと待ってた本人がまさかこんな控え室に来るなんて!
「よいよい、楽にしてくれ」
パラド教皇は手でソファを指し示し、座るように言った。
「教皇様、せめて場所を変えたらどうでしょう?」
お付きの人が言ったけど、彼は「時間がもったいないからここでいい」と言って、一人掛けソファに座った。
目で促されたので、皆、ソファに座る。
「久しいな、ライアン。アリードからの知らせを待っておったんだ。さすがになんの要請もなく動けないからな」
焦れたように教皇が言った。
アリード王子の叔父さんでもあるらしい彼は、とても心配してたみたい。
「お久しぶりでございます、猊下。私の名前まで覚えていてくださり、恐悦至極に存じます。早速ですが、こちらがアリード様の親書にございます」
口調を改めて、ライアンが恭しく親書を差し出した。
パラド教皇は、すぐそれに目を通す。
「なんと、グランデルブルクが悪魔教に侵食されていたという情報は真だったのか……」
「左様でございます。アーネスト陛下は完全に操られています。さらに悪いことに、道中で聞いた情報によると、アリード様は幽閉されておられるようです」
「なんということだ!」
パラド教皇は親書を握りしめ、怒りで顔を赤くした。
「私の力が及ばず誠に申し訳ございません。猊下のお力に縋るしかなく……」
ライアンが頭を下げると、教皇は首を横に振った。
「いやいや、そんな中、よくぞここまで来てくれた。礼を言う」
「とんでもございません!もったいないお言葉です!」
今度はライアンが首を振った。
「さっき報告があったが、我が国まで悪魔教の奴らが入り込んでいたようだな。すでに捕えたが、あのような輩に追われてここまで来るのは大変な苦労だったと思うぞ。これからはわしが引き受けた。安心するといい」
「ありがとうございます!アリード様をよろしくお願いいたします……」
ライアンとアスランは深く頭を下げた。
私もそれに習って頭を下げる。
頭を上げるように言われて、教皇を見ると、柔和な顔に好戦的な色を宿して、ニヤリと笑った。
「もちろんだ。かわいい甥を助けるだけでなく悪魔教に対抗するのはわしの役目だからな。実は、噂を聞いた時から、『慈悲の光』を待機させておる」
「慈悲の光を……!?」
「それは心強い!」
ライアン達は、目に見えて安堵した。
教皇に感謝の眼差しを向けている。
『慈悲の光』?
ライアン達の反応からすると、なにかすごい強い人達なのかな?
「『慈悲の光』とは高位の僧兵で、悪魔教の術に対抗できる力を持つ精鋭集団じゃよ、お嬢さん」
私がキョトンとしているのがわかったのか、教皇自ら説明してくれる。
「ありがとうございます」と言う私を、なにか気になったように教皇は改めてじっと見つめた。
隣のシオリちゃんと見比べるように、しばらく見つめて、溜息をつく。
「変わった子達を連れておるのう……」
ライアン達が慌てて私達を背中にかばった。
ヤバい!
もしかして、夢魔だってバレちゃったのかしら?
でも、シオリちゃんも?
「よいよい。お前達が大事にしているのは見て取れるし、その子達も悪さをするようには見えない。しかも、不思議なことにその子達から神の祝福を感じる。まぁ、そっとしておくことにしよう」
教皇の言葉に、皆、胸をなでおろした。
このクラスの人になるといろいろわかっちゃうのね……。
「それはそうと、お前達に褒賞を与えないとな」
「必要ございません!アリード様をお助けいただけるだけで十分です」
「そうは言ってもな……」
教皇が困ったように微笑んだ。
すると、ライアンが躊躇いがちに口を開いた。
「ひとつだけ、図々しいお願いが………」
「なんだ?」
「ここを目指していた同志の多くが道半ばで倒されました。その者達の鎮魂をお願いできればと……」
痛ましそうな表情で教皇は頷いた。
「よかろう。名を言いなさい」
「はい、感謝いたします!………マーシャル・エバンズ」
「マーシャル・エバンズ」
「モーリス・ラルド」
「モーリス・ラルド」
「ノルド・コルダン」
「ノルド・ゴルダン」……………
十人ほどの名前が挙がった。
教皇はその名前を丁寧に復唱していく。
仲間のことを思い浮かべているのか、ライアンの声が湿りを帯びていった。
「この者達の魂に安らぎを。次なる生への希望を与え給え!」
教皇がそう言うと、ぽわんとした光が現れ、上に登っていき、散っていった。
心がぽっと温かくなった。
「あ、ありがとうございます………!」
「深謝いたします……」
ライアンとアスランは涙ぐみながら、また深く頭を下げた。
教皇は二人の頭に手を当てて、慈悲深い笑顔を浮かべた。
「さて、そろそろわしは行かねばならない。すぐに指示を出すから、お前達は朗報を待っているといい」
「何卒、よろしくお願いいたします」
パラド教皇は温かい笑みを残して、部屋を出ていった。
後にはお付きの人の一人が残って、今後の連絡用に宿の名前を聞いてきた。
「もしくは用があれば、私、ヨラク・マルローを呼び出してください」と言った。
大神殿を出ると、もう夕暮れだった。
ライアンとアスランは晴れ晴れした表情をしていた。
ようやく任務を果たせて、アリード王子を救えそうなんだから、当たり前よね。
重くのしかかっていた肩の荷が下りたんだろうな。
本当によかった。
「なぁ、飯でも食べていかないか?祝杯には気が早いが、慰労会というか」
ライアンが言うと、アスランが喜んで頷きかけて、はっとシオリちゃんを見た。
「有り難いですが、彼女は少食で……」
「アスラン!せっかくだから行きましょうよ」
「しかし……」
アスランはシオリちゃんをもう一度見て慌てると、「今日はお疲れでしょうから、明日にしましょう!私達はこれで失礼します!」と彼女を引っ張るように連れて去っていった。
呆気に取られるライアンと私。
少食って……。
しかも、夕日のせいかシオリちゃんの瞳が赤みがかっていたような?
まさかね。
「フラれたな……。それじゃあ、ちょっと早いが俺達も宿に戻るか」
彼らの後ろ姿を眺めていた私に、ライアンが甘く頬をなでてきた。
彼を見上げると、それ以上に甘い瞳が私を見つめていた。
「任務が終わったんだ。ご褒美をくれるか?」
その言葉に真っ赤になる。
蕩けそうな熱い瞳に絡め取られて目が離せない。
私はそっと頷いた。
ふっと笑って、ライアンは私を抱き寄せた。
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