夢魔はじめました。

入海月子

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飢えすぎて……

夢魔はじめました。

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「着いたぞ。歩けるか?」

 私を気づかうライアンに頷く。
 フードを深くかぶって、馬車を降りた。

「すぐそこに宿の看板が見える。あそこに行ってみよう」

 彼は私の腰に手を回して、歩いてくれた。
 暗い中、視界が制限されてるので、有難い。

 途中まで歩くと、まどろっこしくなったのか、「捕まっとけ」と言って、私を抱きあげた。
 軽々と抱いて、大股で宿屋に向かう。
 私はライアンの首に手を回して、肩口に顔を伏せた。

 宿に入ると、ライアンはカウンターで「夫婦部屋はあるか?妻が馬車で気分が悪くなって」と言った。

「それはかわいそうに。ありますよ。一泊ですか?」
「あぁ」
「それでは8ベルになります。あ、お財布出せないですね。先にお部屋にご案内します」
「助かるよ」

 宿の人とのやり取りの後、階段を上っていく。
 ライアンの腕は力強く安定していて、危なげない。

「ごめんなさい。重いですよね」
「いや、全然。お前だったら二人でも持てそうだ」
「二人って……」

 私を両手に抱えたライアンを想像して、くすりと笑う。

 こうやって、彼と密着していると、彼の匂いが頭に充満して、どんどん彼が欲しくて仕方なくなってくる。

「こちらの部屋です」

 ドアが開けられる音がして、部屋に入る。
 ライアンはそっと私をベッドに下ろしてくれた。
 私は目をつぶって、じっとしていた。

「8ベルだったな」
「ありがとうございます。食事はどうされます?」
「後で取りに行くから1.5人前ぐらい用意しておいてくれないか?」
「わかりました。それでは、お大事に」

 宿の人が出ていった気配がした。
 私は目を開けて、起き上がった。
 ライアンがベッドのそばに来る。

「風呂に行ってくるから待ってろ」

 そう言ってライアンは私の髪をなでてくれたけど、私は彼のズボンを掴んで引き止めた。

「ライアン……ダメ!待てない!」

 スボンを引きずり下ろす勢いで彼に縋ると、ライアンはギョッとして、「ま、待て!せめて拭かせろよ」と叫んだ。

 私がしぶしぶ手を離すと、ライアンは服を脱いだ。
 引き締まった綺麗な身体。
 教科書で見たダビデ像を思い出した。
 でも、ところどころに大きな傷がある。
 戦った傷なのかな?

 ライアンは洗面所に行って、タオルを濡らすと身体を拭いて、戻ってきた。
 そして、ウズウズしている私の前に座ると、好きにしろというように、ベッドのヘッドボードにもたれて、足を投げ出して座った。

 私は彼の脚の間に座ると、早速、彼のモノを握る。
 でも、いつもと違って、まだ柔らかくてぷにぷにしている。
 新鮮な感触。
 上下に擦ると、ちょっと大きくなった。

「胸に触っていいか?」とライアンに聞かれて頷いて、上衣を下着ごと脱いだ。
 この世界の下着はスポーツブラみたいだから、あっさり脱げる。

「脱がなくていい!」とライアンは言ったけど、グンッとあれが大きくなったから正解だったみたい。

 改めてライアンに抱きついて、彼のモノに手を伸ばす。
 ライアンも私の胸を捏ね始めて、その気持ちよさに声が漏れる。
 私の喘ぎと共に、彼のモノは大きく硬さを増していった。

 私は余裕なく彼のモノを口に咥えた。
 ちゅぱちゅぱと吸いつくと、先走りが出てきて、少しお腹が満たされる。
 それを舐め回し、もっとというように吸うと、ライアンが呻いた。

 刺激が足りなかったのか、彼が私の手の上に自分の手を重ねて、一緒に扱き出した。
 どんどん先走りが出てきて、夢中で吸いつく。

「クッ……」

 ライアンが顔を顰めた時、ドバドバと口の中に精が溢れた。
 私は切望していたものを与えられて歓喜して、それをゴクゴクと呑み干す。
 最後の一滴まで吸い尽くすと、口を離して、満足の溜息をついた。

 途端に、理性が戻ってくる。


 ………………イヤーーーッ!!!

 私、私、まるで痴女じゃない?
 ウソでしょ?
『待てない!』って、なに言ってるのーーッ
 自分の行動が信じられない。
 恥ずかしすぎて、ライアンを見られない……。

 うつむいたままの私の顎を持って、ライアンは私を上向かせた。

「ちゃんと黒くなってる。よかったな」
「本当ですか!」

 もう羞恥のあまり、そんなことも頭から吹っ飛んでた。
 ライアンは頷いて、微笑んでくれた。

「で、でも、ごめんなさい!!」

 私は深く頭を下げる。
 意識はしっかりあるのに、羞恥心とか躊躇いとかどこかに行ってしまってた。

 そんな私をライアンは笑って引き寄せ、なだめるようにポンポンと背中を叩いた。

「まぁ、なんと言うか、必死でかわいかったぞ?」

 あの痴態を『かわいい』と称するなんて、ライアンは大物だと思った。
 私は真っ赤になって、なかなか彼の胸から顔を上げることができなかった。



「エマが満足したなら、そろそろ俺も夕食を取ってきたいんだが……」

 しばらくして、ライアンが口を開いた。
 私が彼の胸で悶えていたのを見守ってくれてたみたいだけど、お腹が空いたらしい。

「ご、ごめんなさい!」

 慌てて、彼から飛びのく。

 ライアンはもう一度私を捕まえて、チュッとキスをすると、ベッドから下りて、服を着た。
 フリーズしていた私は、我に返って、自分も服を着た。

「食事を取ってくる」
「はい。いってらっしやい」

 ライアンが部屋を出ていくと、私はベッドで三角座りになり、膝に顔をうずめた。

 今までで一番恥ずかしい……。

 飢えすぎるとあんなになっちゃうんだ、私。

 瞳が黒く戻ったのはうれしいけど、もしこの間隔で飢えるなら、二日に一回はあれをしないといけないのよね?
 こないだみたいに、夢魔の本能が目覚めていないと、それはそれで恥ずかしいし、本能まみれになると、さっきみたいに襲っちゃう。
 もう!
 アーデルトに行って、早く他の夢魔のアドバイスが欲しい!



 ライアンが夕食を取って、戻ってきた。
 テーブルに皿を置く音がする。

「まだ落ち込んでるのか?」

 そばに来たライアンが、ポンポン頭を叩く。
 でも、恥ずかしくて、まだ顔が上げられない。

 ライアンが私の横に座って、肩を抱き寄せた。

「俺はむちゃくちゃ気持ちよかったよ。またしてくれよ」

 耳許で囁く。
 その色っぽいハスキーな声に、お腹の奥がキュッとなった。

「…………気持ちよかったんですか?」
「ああ、むちゃくちゃな」
「またして欲しいんですか?」
「して欲しいよ……」

 ライアン……。

 私は彼に抱きついた。

 優しい。
 好き……。

 彼を見上げると、温かい空色の目で微笑んでいた。
 私が口を開きかけた時、

 ぐぅぅ……。

 ライアンのお腹が鳴った。

「あ、ごめんなさい!早く食べてください」

 私は慌てて彼を解放した。





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