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ライアンの使命
夢魔はじめました。
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「ふぅ………」
私は散々ライアンの唇を貪って、口を離した。
ライアンがおもしろそうに眺めている。
「あ……ごめんなさい」
また夢中になっていた。
私は赤くなる。
このやりとり、何回目だろう……。
「夢魔のエマが出てくる瞬間がわかるようになってきたよ。今は正気に戻ったな」
ライアンはそう言って笑って、チュッとついばむようなキスをした。
私はますます赤くなる。
ライアンがおもしろがってくれる性格でよかった。
話を変えようと、先ほど疑問に思ったことを尋ねた。
「ところで、さっきのお話ですが、王子ってことはおじいさんが言ってた幽閉されたかもっていう……?」
「そうだ。俺が国を出た時には事態は緊迫していたが、まだ幽閉まではいってなかった。まぁ、時間の問題だったが」
ライアンは沈痛な表情になって、頷いた。
恩人が幽閉されてるなんて、心配でならないだろう。
私は励ますように彼の腕に手を置いた。
彼は表情を緩めてくれた。
「俺はむろん王太子派だ。アリード王太子は民のことをよく考えてくださる優秀な王族なんだ。いや、その父、アーネスト王もつい数年前まで善政をしいていた。それがある時から、だんだんおかしくなって、気がつくと、凶王になっていた。人が変わったように癇癪持ちになり、むやみな増税、謎の人物の重用、良識ある貴族の懲罰……考えられるありとあらゆる悪政を行うようになったんだ。もちろん、アリード様が諌めようとしたが、かえって疎まれ、どんどん権力を剥ぎ取られていった」
その頃のつらさを思い出したようで、ライアンは再び暗い顔になった。
「こちらも手をこまねいていたわけではなく、王の豹変について調べた結果、どうやら悪魔教に操られていることがわかった」
「悪魔教?」
おどろおどろしい言葉だ。
夢魔がいるんだから、悪魔もいるのかな?
私ってどちらかというと、そっち側になるのかな?
「そう、シュトル教と対極の悪魔を崇拝する邪教だ。その内実はわかっていないが、世の中を混乱に導くことで己の益を得ようという教えらしく、戦争の火種を作ったり、内政を乱したりして、様々な国家が滅ぼされてきたらしい。今のグランデルブルク王国がまさにその状況だ」
「そんな恐ろしい宗教があるんですね……」
私もそっちにとりこまれてしまったら、どうしよう……。
それは絶対嫌だ。
ブルと身を震わせた私の背中をライアンがなでてくれた。
温かい手に落ち着きを取り戻す。
「そうだ。宗教というだけでなく、人を操る魔術を持つ者がいるらしく、アーネスト王はそれに洗脳されているようだ。それで俺のような複数の騎士がアリード王子の親書を持って、パラド教皇に救援を求めに国を出たんだ。悪魔教に対抗できる技を持つのはシュトラーセ教国の聖職者だけだし、パラド教皇はアリード王子の叔父にあたるから」
「それでライアンはシュトラーセ教国を目指していたんですね」
ライアンが頷いた。
強い意志を宿した瞳で、こちらを見る。
「何人もの者がバラバラのルートで出発した。それぞれ悪魔教の刺客を引きつけて勢力を分散させながら、誰かは教皇の元に行き着くようにシュトラーセ教国を目指してるんだ」
「だから、目立つ髪の毛を隠してなかったんですか……」
「あぁ、刺客から隠れつつも手がかりも残さないといけないからな。ただ、俺の場合、あの森で死んだと思われて、追ってきてないかもしれない。死体が見つからないからリンドの街までは探しに来た可能性はあるが」
ライアンの矛盾した行動の理由がわかった。
完全に隠れて行動するなら、森に獣にでも食べられたような工作をしたり、フードをかぶって、目立つ容姿を隠したりすればいいのにと思ってたけど、彼は一切しなかった。
その割に、私と新婚旅行と偽装するのが不思議だったんだ。
「今日のじいさんの話でアリード王子が幽閉されているというのがわかった。悪いが、最速で移動したいから、明日も半日以上は馬車に揺られることになる。大丈夫か?」
「はい、もちろん。今日みたいに楽しいおじいさんがいたらいいですね!」
「確かに退屈は紛れるな。まぁ、乗客がいい奴ばかりとは限らないから、気をつけろよ?」
「わかりました」
そうよね。
休憩の時に、いきなり腕を掴んできた男の人もいた。
馬車では席が離れてたからよかったけど、あんな人が隣だったら嫌だなぁ。
「そういえば、アーデルトには絶対寄らないといけないな」
ライアンが話題を変えた。
彼の話は終わりということかな。
それに、私もその街は気になっていた。
「寄り道にはならないんですか?」
「最短距離上の街だから大丈夫だ。それに、明確に夢魔がいると言われてるのに、寄らない手はないだろ?」
「うまく会えたら、夢魔の生態とか聞いてみたいです」
「そうだよなー。効率的な精の摂取法とかあったら教えてほしいもんな」
本当に。
あの恥ずかしい方法じゃないのがあれば……。
「まぁ、俺は気持ちいいからいいんだけどな」
ぼそっと付け加えられたライアンの言葉に真っ赤になった。
「ずいぶん話してたな……」
ライアンがふと時計を見て言った。
確かに。
ご飯が終わったのが、20:30ぐらいで、今は22時過ぎ。
ちなみに、この世界も一日は24時間で、時計も見方は一緒だった。
これは混乱しなくて有難い。
「俺もシャワーを浴びてくる。先に寝てていいぞ」
「わかりました」
私は歯磨きをして、寝る支度をして、自分のベッドに横になった。
ライアンのベッドの方を向いて、溜息をつく。
二人部屋が空いてなければよかったのに。
温もりが足りない。
ひとり寝がさみしいと思いながら、私は目を閉じた。
うとうとしている間に、ライアンがシャワー室から出てきた気配がした。
私を起こさないように、そっと歩いている。
「くしゅん」
くしゃみが出た。
ここは季節があるのかないのかまだ知らないけど、今は秋くらいの気候で、今夜は冷え込んでいた。
そういえば、シャワーの後、上着も羽織ってなかったから、冷えちゃったのかも。
夢魔って、風邪引くのかな?
「大丈夫か?寒いか?」
ライアンがベッドに近寄ってきた。
「大丈夫です」
「そうか。おやすみ」
私の頭をなでて、彼が自分のベッドに行きかけた。
その背中を見て、猛烈にさみしくなった。
「あ……やっぱり大丈夫じゃない……寒いです……」
私の言葉にライアンは振り向いて、じっと私を見下ろした。
露骨すぎたかな?
どうしよう……はしたないと思われたかな?
彼の沈黙に耐えかねて、口を開こうとした時、ライアンはニヤッと笑って言った。
「………じゃあ、温めてやるよ」
私のベッドがギシリと音を立てた。
ライアンが乗ってきたんだ。
自分で誘っておいて、ドキドキ鼓動がうるさいくらい高鳴っている。
ライアンは私をすっぽり腕で包んで、横になった。
身体が密着する。
あったかい……。
「ライアン、ポカポカ」
「シャワー浴びたばっかりだからな」
「ふふっ、気持ちがいい。おやすみなさい」
私はライアンの胸に顔を擦りつけると、安心して、あっという間に眠りに落ちた。
翌朝起きたら、いきなり、じとっとした目のライアンに「お前、俺のこと、男と思ってないだろ?」と言われた。
「えっ?もちろん、思ってますよ?」
「いや、男と思ってたら、あんなに安心しきって眠れないだろ!」
「え、だって、ライアンだから……」
「その絶対的な信頼感……喜んでいいのか、悲しんでいいのか……」
ライアンは独り言のようにつぶやいて、額に手を当てていた。
私は散々ライアンの唇を貪って、口を離した。
ライアンがおもしろそうに眺めている。
「あ……ごめんなさい」
また夢中になっていた。
私は赤くなる。
このやりとり、何回目だろう……。
「夢魔のエマが出てくる瞬間がわかるようになってきたよ。今は正気に戻ったな」
ライアンはそう言って笑って、チュッとついばむようなキスをした。
私はますます赤くなる。
ライアンがおもしろがってくれる性格でよかった。
話を変えようと、先ほど疑問に思ったことを尋ねた。
「ところで、さっきのお話ですが、王子ってことはおじいさんが言ってた幽閉されたかもっていう……?」
「そうだ。俺が国を出た時には事態は緊迫していたが、まだ幽閉まではいってなかった。まぁ、時間の問題だったが」
ライアンは沈痛な表情になって、頷いた。
恩人が幽閉されてるなんて、心配でならないだろう。
私は励ますように彼の腕に手を置いた。
彼は表情を緩めてくれた。
「俺はむろん王太子派だ。アリード王太子は民のことをよく考えてくださる優秀な王族なんだ。いや、その父、アーネスト王もつい数年前まで善政をしいていた。それがある時から、だんだんおかしくなって、気がつくと、凶王になっていた。人が変わったように癇癪持ちになり、むやみな増税、謎の人物の重用、良識ある貴族の懲罰……考えられるありとあらゆる悪政を行うようになったんだ。もちろん、アリード様が諌めようとしたが、かえって疎まれ、どんどん権力を剥ぎ取られていった」
その頃のつらさを思い出したようで、ライアンは再び暗い顔になった。
「こちらも手をこまねいていたわけではなく、王の豹変について調べた結果、どうやら悪魔教に操られていることがわかった」
「悪魔教?」
おどろおどろしい言葉だ。
夢魔がいるんだから、悪魔もいるのかな?
私ってどちらかというと、そっち側になるのかな?
「そう、シュトル教と対極の悪魔を崇拝する邪教だ。その内実はわかっていないが、世の中を混乱に導くことで己の益を得ようという教えらしく、戦争の火種を作ったり、内政を乱したりして、様々な国家が滅ぼされてきたらしい。今のグランデルブルク王国がまさにその状況だ」
「そんな恐ろしい宗教があるんですね……」
私もそっちにとりこまれてしまったら、どうしよう……。
それは絶対嫌だ。
ブルと身を震わせた私の背中をライアンがなでてくれた。
温かい手に落ち着きを取り戻す。
「そうだ。宗教というだけでなく、人を操る魔術を持つ者がいるらしく、アーネスト王はそれに洗脳されているようだ。それで俺のような複数の騎士がアリード王子の親書を持って、パラド教皇に救援を求めに国を出たんだ。悪魔教に対抗できる技を持つのはシュトラーセ教国の聖職者だけだし、パラド教皇はアリード王子の叔父にあたるから」
「それでライアンはシュトラーセ教国を目指していたんですね」
ライアンが頷いた。
強い意志を宿した瞳で、こちらを見る。
「何人もの者がバラバラのルートで出発した。それぞれ悪魔教の刺客を引きつけて勢力を分散させながら、誰かは教皇の元に行き着くようにシュトラーセ教国を目指してるんだ」
「だから、目立つ髪の毛を隠してなかったんですか……」
「あぁ、刺客から隠れつつも手がかりも残さないといけないからな。ただ、俺の場合、あの森で死んだと思われて、追ってきてないかもしれない。死体が見つからないからリンドの街までは探しに来た可能性はあるが」
ライアンの矛盾した行動の理由がわかった。
完全に隠れて行動するなら、森に獣にでも食べられたような工作をしたり、フードをかぶって、目立つ容姿を隠したりすればいいのにと思ってたけど、彼は一切しなかった。
その割に、私と新婚旅行と偽装するのが不思議だったんだ。
「今日のじいさんの話でアリード王子が幽閉されているというのがわかった。悪いが、最速で移動したいから、明日も半日以上は馬車に揺られることになる。大丈夫か?」
「はい、もちろん。今日みたいに楽しいおじいさんがいたらいいですね!」
「確かに退屈は紛れるな。まぁ、乗客がいい奴ばかりとは限らないから、気をつけろよ?」
「わかりました」
そうよね。
休憩の時に、いきなり腕を掴んできた男の人もいた。
馬車では席が離れてたからよかったけど、あんな人が隣だったら嫌だなぁ。
「そういえば、アーデルトには絶対寄らないといけないな」
ライアンが話題を変えた。
彼の話は終わりということかな。
それに、私もその街は気になっていた。
「寄り道にはならないんですか?」
「最短距離上の街だから大丈夫だ。それに、明確に夢魔がいると言われてるのに、寄らない手はないだろ?」
「うまく会えたら、夢魔の生態とか聞いてみたいです」
「そうだよなー。効率的な精の摂取法とかあったら教えてほしいもんな」
本当に。
あの恥ずかしい方法じゃないのがあれば……。
「まぁ、俺は気持ちいいからいいんだけどな」
ぼそっと付け加えられたライアンの言葉に真っ赤になった。
「ずいぶん話してたな……」
ライアンがふと時計を見て言った。
確かに。
ご飯が終わったのが、20:30ぐらいで、今は22時過ぎ。
ちなみに、この世界も一日は24時間で、時計も見方は一緒だった。
これは混乱しなくて有難い。
「俺もシャワーを浴びてくる。先に寝てていいぞ」
「わかりました」
私は歯磨きをして、寝る支度をして、自分のベッドに横になった。
ライアンのベッドの方を向いて、溜息をつく。
二人部屋が空いてなければよかったのに。
温もりが足りない。
ひとり寝がさみしいと思いながら、私は目を閉じた。
うとうとしている間に、ライアンがシャワー室から出てきた気配がした。
私を起こさないように、そっと歩いている。
「くしゅん」
くしゃみが出た。
ここは季節があるのかないのかまだ知らないけど、今は秋くらいの気候で、今夜は冷え込んでいた。
そういえば、シャワーの後、上着も羽織ってなかったから、冷えちゃったのかも。
夢魔って、風邪引くのかな?
「大丈夫か?寒いか?」
ライアンがベッドに近寄ってきた。
「大丈夫です」
「そうか。おやすみ」
私の頭をなでて、彼が自分のベッドに行きかけた。
その背中を見て、猛烈にさみしくなった。
「あ……やっぱり大丈夫じゃない……寒いです……」
私の言葉にライアンは振り向いて、じっと私を見下ろした。
露骨すぎたかな?
どうしよう……はしたないと思われたかな?
彼の沈黙に耐えかねて、口を開こうとした時、ライアンはニヤッと笑って言った。
「………じゃあ、温めてやるよ」
私のベッドがギシリと音を立てた。
ライアンが乗ってきたんだ。
自分で誘っておいて、ドキドキ鼓動がうるさいくらい高鳴っている。
ライアンは私をすっぽり腕で包んで、横になった。
身体が密着する。
あったかい……。
「ライアン、ポカポカ」
「シャワー浴びたばっかりだからな」
「ふふっ、気持ちがいい。おやすみなさい」
私はライアンの胸に顔を擦りつけると、安心して、あっという間に眠りに落ちた。
翌朝起きたら、いきなり、じとっとした目のライアンに「お前、俺のこと、男と思ってないだろ?」と言われた。
「えっ?もちろん、思ってますよ?」
「いや、男と思ってたら、あんなに安心しきって眠れないだろ!」
「え、だって、ライアンだから……」
「その絶対的な信頼感……喜んでいいのか、悲しんでいいのか……」
ライアンは独り言のようにつぶやいて、額に手を当てていた。
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