夢魔はじめました。

入海月子

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慣れたらいけない。

夢魔はじめました。

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 食事を終えて、部屋に戻ってくる。

 洗面所で歯を磨いて、寝間着用に買った服に着替える。
 ここの歯ブラシは、針葉樹のような葉っぱを束ねたものだった。
 ちっちゃいタワシのようなイメージ。

 寝支度を整えてベッドの方に行くと、ライアンがすでに寝っ転がっていて、『おいで』と言うように布団を持ち上げた。

(むちゃくちゃ恥ずかしい……)

 赤い顔でベッドに上がると、ライアンは私を抱きこむようにして、自分の方に向かせた。
 そして、「だいぶ瞳が赤くなってきてるな」とつぶやくと、口づけてきた。

(………躊躇なくキスするのね)

 美味しい口づけを味わいながら、複雑な気分になる。
 ライアンからしたら、私に餌を与えてるだけのつもりなんだろうけど、私はいちいちキスしてると思ってしまう。
 じゃあ、彼にどうしてほしいのかと言われてもわからない。
 めんどくさい自分を持て余す。
 そんな気持ちも、舌を絡めて唾液を啜る間に溶けていってしまうけど。

 気がつくと、私はライアンの首にしがみついて、彼の口を貪っていた。

「ご、ごめんなさい!」

 毎度のことながら、慌てて、腕を離す。
 心なしか、ライアンの顔も赤い。

「それはいいけど、お前、また下着をつけてないだろ?」
「え、だって、寝る時は下着はつけないですよね?」
「…………お前、実は誘ってるだろ?」
「誘ってません!」
「ただでさえ、お前が変なことを言うから、頭の中がお前の胸のことでいっぱいなのに……」

 ライアンはブツブツ言いながら起き上がって、布団を出た。

「ライアン?」
「やっぱり一緒に寝るのは無理だ。俺はここでいい」

 そう言って、床に転がる。

「でも、風邪引きますよ?それに床は固いし」
「襲われたくないだろ?」
「それは……やっぱり処女は好きな人にもらってもらいたいですけど……」
「そうだろうな。だから、俺はここでいいんだ」
「でも………そうだ! 口でしましょうか?」
「………お前なー。俺の限界を試すのは止めてくれ」

 ライアンは頭痛がするというように、額に手を当てる。
 私はなんてことを口にしたんだろうと思いながらも、彼を床で寝かせる罪悪感と、一昨日のことを思い出した途端、疼き出した夢魔の本能とで後に退けなくなってしまった。

「試してなんか……。床に寝てもらうのは申し訳ないですし、明日一日馬車なら、瞳が赤くならないようにしておかないといけないし……」

 もっともらしい理由をつける。
 あぁ、やっぱりこれって誘ってる……。

 彼も理由ができたことで、瞳の熱量が上がった。
 熱い瞳で私を凝視する。

「………いいのか? また後悔して泣くんじゃないのか?」

 探るように私を見て、唇を噛む。

 やっぱりライアンは優しい。
 自分のことは置いといて、私のことを考えてくれている。

「あの時も言いましたけど、ライアンとは嫌じゃないんです。そのうち見ず知らずの人でも襲って、ああいうことをするようになってしまうのかなと思ったら、死ぬほど嫌だって思って……」
「そんなことにはならない! 襲うんだったら、俺を襲え!」

 ライアンはそう言って、そばに来ると私を抱きしめて、口づけた。
 口の中を辿られたり舌を絡めたりしながら、胸を揉みしだかれる。

「んっ、んんっ……んーっ、はぁ……んっ……」

 彼に触られるのはとても気持ちがいい。
 自分からも求めるように、口を吸い、胸を突き出してしまう。
 お腹に当たってる熱い塊にそっと触れる。
 ピクリと身じろぎして、ライアンは口を離した。

「エマ………なぁ、してくれるか?」
「はい」

 もう一度、唇を合わせると、彼はベッドの端にもたれて、ズボンを下ろした。
 すでに、凛々しく立ち上がってる肉棹が出てくる。
 私は唾を呑み、そこに近寄り、それを咥えた。
 先走りが甘くて、早速夢中になる。

 口に入らなかった部分を握ると、私は上下に動かした。
 ドクンとそれが震えてさらに大きくなる。
 露がさらに出てくる。

 チュパチュパと口で吸ったり、舌を動かすと、ライアンは呻いた。
 気持ちいいのか、半眼になっている。
 それがとても色っぽい。
 そして、彼の足の間にいる私に手を伸ばすと、胸を揉み始めた。

「んっ………チュッ……チュッ……んー、んっ……」

 胸は気持ちいいし、露は美味しいし、私は我を忘れて、彼のモノをしゃぶり続けた。
 クチュクチュ、チュパチュパといやらしい水音が自分の口からする。

「………出る!」

 ライアンが言った瞬間、口の中が精で溢れた。
 私は喜んで、それを飲み干す。
 手を動かすと、さらにドクドクと出てくる。
 思う存分堪能して口を離すと、恍惚の表情を浮かべるライアンが見えて、微笑んだ。

「気持ちよかったですか?」
「あぁ、ありがとう」
「いえ、私もごちそうさま……?」

 やっぱり終わると恥ずかしくて、赤くなってしまう。
 でも、恥じらいは必要よね?
 それがなくなったら、芯から夢魔になって、違う生き物になってしまう気がする。

 ライアンはズボンを直すと、私を胸に引き寄せて、髪をなでてくれる。
 頭のてっぺんにキスが落とされた……気がした。

「寝ようか」
「はい」

 彼は今度は一緒に寝てくれるようで、身体をずらして、私を抱きしめたまま横になった。
 ライアンの腕の中は広くて温かくて、落ち着ける。
 居心地がよくて、癖になりそう。
 でも、私は隠れ蓑らしいから、ライアンの目的地に着いたら、きっとお別れしないといけない。
 これに慣れたらいけないよね……。
 気をつけなきゃ。

 それでも、今はまだいいよね?
 私は彼の胸に顔をうずめて、眠りに落ちた。




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