夢魔はじめました。

入海月子

文字の大きさ
上 下
8 / 51
慣れたらいけない。

夢魔はじめました。

しおりを挟む
 食事を終えて、部屋に戻ってくる。

 洗面所で歯を磨いて、寝間着用に買った服に着替える。
 ここの歯ブラシは、針葉樹のような葉っぱを束ねたものだった。
 ちっちゃいタワシのようなイメージ。

 寝支度を整えてベッドの方に行くと、ライアンがすでに寝っ転がっていて、『おいで』と言うように布団を持ち上げた。

(むちゃくちゃ恥ずかしい……)

 赤い顔でベッドに上がると、ライアンは私を抱きこむようにして、自分の方に向かせた。
 そして、「だいぶ瞳が赤くなってきてるな」とつぶやくと、口づけてきた。

(………躊躇なくキスするのね)

 美味しい口づけを味わいながら、複雑な気分になる。
 ライアンからしたら、私に餌を与えてるだけのつもりなんだろうけど、私はいちいちキスしてると思ってしまう。
 じゃあ、彼にどうしてほしいのかと言われてもわからない。
 めんどくさい自分を持て余す。
 そんな気持ちも、舌を絡めて唾液を啜る間に溶けていってしまうけど。

 気がつくと、私はライアンの首にしがみついて、彼の口を貪っていた。

「ご、ごめんなさい!」

 毎度のことながら、慌てて、腕を離す。
 心なしか、ライアンの顔も赤い。

「それはいいけど、お前、また下着をつけてないだろ?」
「え、だって、寝る時は下着はつけないですよね?」
「…………お前、実は誘ってるだろ?」
「誘ってません!」
「ただでさえ、お前が変なことを言うから、頭の中がお前の胸のことでいっぱいなのに……」

 ライアンはブツブツ言いながら起き上がって、布団を出た。

「ライアン?」
「やっぱり一緒に寝るのは無理だ。俺はここでいい」

 そう言って、床に転がる。

「でも、風邪引きますよ?それに床は固いし」
「襲われたくないだろ?」
「それは……やっぱり処女は好きな人にもらってもらいたいですけど……」
「そうだろうな。だから、俺はここでいいんだ」
「でも………そうだ! 口でしましょうか?」
「………お前なー。俺の限界を試すのは止めてくれ」

 ライアンは頭痛がするというように、額に手を当てる。
 私はなんてことを口にしたんだろうと思いながらも、彼を床で寝かせる罪悪感と、一昨日のことを思い出した途端、疼き出した夢魔の本能とで後に退けなくなってしまった。

「試してなんか……。床に寝てもらうのは申し訳ないですし、明日一日馬車なら、瞳が赤くならないようにしておかないといけないし……」

 もっともらしい理由をつける。
 あぁ、やっぱりこれって誘ってる……。

 彼も理由ができたことで、瞳の熱量が上がった。
 熱い瞳で私を凝視する。

「………いいのか? また後悔して泣くんじゃないのか?」

 探るように私を見て、唇を噛む。

 やっぱりライアンは優しい。
 自分のことは置いといて、私のことを考えてくれている。

「あの時も言いましたけど、ライアンとは嫌じゃないんです。そのうち見ず知らずの人でも襲って、ああいうことをするようになってしまうのかなと思ったら、死ぬほど嫌だって思って……」
「そんなことにはならない! 襲うんだったら、俺を襲え!」

 ライアンはそう言って、そばに来ると私を抱きしめて、口づけた。
 口の中を辿られたり舌を絡めたりしながら、胸を揉みしだかれる。

「んっ、んんっ……んーっ、はぁ……んっ……」

 彼に触られるのはとても気持ちがいい。
 自分からも求めるように、口を吸い、胸を突き出してしまう。
 お腹に当たってる熱い塊にそっと触れる。
 ピクリと身じろぎして、ライアンは口を離した。

「エマ………なぁ、してくれるか?」
「はい」

 もう一度、唇を合わせると、彼はベッドの端にもたれて、ズボンを下ろした。
 すでに、凛々しく立ち上がってる肉棹が出てくる。
 私は唾を呑み、そこに近寄り、それを咥えた。
 先走りが甘くて、早速夢中になる。

 口に入らなかった部分を握ると、私は上下に動かした。
 ドクンとそれが震えてさらに大きくなる。
 露がさらに出てくる。

 チュパチュパと口で吸ったり、舌を動かすと、ライアンは呻いた。
 気持ちいいのか、半眼になっている。
 それがとても色っぽい。
 そして、彼の足の間にいる私に手を伸ばすと、胸を揉み始めた。

「んっ………チュッ……チュッ……んー、んっ……」

 胸は気持ちいいし、露は美味しいし、私は我を忘れて、彼のモノをしゃぶり続けた。
 クチュクチュ、チュパチュパといやらしい水音が自分の口からする。

「………出る!」

 ライアンが言った瞬間、口の中が精で溢れた。
 私は喜んで、それを飲み干す。
 手を動かすと、さらにドクドクと出てくる。
 思う存分堪能して口を離すと、恍惚の表情を浮かべるライアンが見えて、微笑んだ。

「気持ちよかったですか?」
「あぁ、ありがとう」
「いえ、私もごちそうさま……?」

 やっぱり終わると恥ずかしくて、赤くなってしまう。
 でも、恥じらいは必要よね?
 それがなくなったら、芯から夢魔になって、違う生き物になってしまう気がする。

 ライアンはズボンを直すと、私を胸に引き寄せて、髪をなでてくれる。
 頭のてっぺんにキスが落とされた……気がした。

「寝ようか」
「はい」

 彼は今度は一緒に寝てくれるようで、身体をずらして、私を抱きしめたまま横になった。
 ライアンの腕の中は広くて温かくて、落ち着ける。
 居心地がよくて、癖になりそう。
 でも、私は隠れ蓑らしいから、ライアンの目的地に着いたら、きっとお別れしないといけない。
 これに慣れたらいけないよね……。
 気をつけなきゃ。

 それでも、今はまだいいよね?
 私は彼の胸に顔をうずめて、眠りに落ちた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【完結】呪いを解いて欲しいとお願いしただけなのに、なぜか超絶美形の魔術師に溺愛されました!

藤原ライラ
恋愛
 ルイーゼ=アーベントロートはとある国の末の王女。複雑な呪いにかかっており、訳あって離宮で暮らしている。  ある日、彼女は不思議な夢を見る。それは、とても美しい男が女を抱いている夢だった。その夜、夢で見た通りの男はルイーゼの目の前に現れ、自分は魔術師のハーディだと名乗る。咄嗟に呪いを解いてと頼むルイーゼだったが、魔術師はタダでは願いを叶えてはくれない。当然のようにハーディは対価を要求してくるのだった。  解呪の過程でハーディに恋心を抱くルイーゼだったが、呪いが解けてしまえばもう彼に会うことはできないかもしれないと思い悩み……。 「君は、おれに、一体何をくれる?」  呪いを解く代わりにハーディが求める対価とは?  強情な王女とちょっと性悪な魔術師のお話。   ※ほぼ同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※

処理中です...