夢魔はじめました。

入海月子

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初めての夜

夢魔はじめました。

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 しばらくそうしてると、ライアンが突然「あっ」と叫んだ。
 うとうとしていた私はビクッと飛びあがった。
 彼は私に謝って、「しまった」とつぶやく。

「どうしたんですか?」
「つい癖で、寝る準備をしてなかった」
「寝る準備?」
「俺は慣れてるから、地面でも平気だけど、お前にはここは固いだろ? 普通なら落ち葉でも敷いてもうちょっと寝心地をよくするんだが、それを忘れてた……」
「なんだ。大丈夫ですよ。私はどこでも眠れる質なので」
「それならいいけど。なんなら俺の上に乗るか?」
「いやいやいやいや、そんな滅相もない……」
「お前、おもしろいな」

 赤くなってブンブン首を振る私を、ライアンは本当に愉快そうに見た。

「じゃあ、寝るか」

 ライアンは、私を胸に抱いたまま、ゴロンと寝転んだ。
 彼の腕枕で横になる形になる。

「な、な、なっ、待って待って! このまま寝るんですか?」
「え、このままでいいって言ったじゃないか。やっぱり寝にくいか?」

 焦る私に、不思議そうにするライアン。

「寝にくいっていうか、ち、近いです!」
「あぁ、そういうことか。しょうがないだろ。マントの幅がないんだから。離れてほしいなら、仕方ないな……」

 そう言って彼は当然のように、位置をずらして、マントから外れて地べたに直接寝ようとするから、慌てて止める。

「わぁあ、いいです! いいです! このままでっ!」

 顔が超近いけど、目をつむればなんとかなる!
 たぶん。

「そうか? あぁ、じゃあ、こうすればどうだ?」

 ライアンは私の向きを変えて、後ろから抱きつく形にした。

「あったかい……」

 身体が彼の熱で包まれて、心地いい。
 ありかも……。

「じゃあ、これでいいな。おやすみ」
「………おやすみなさい」

 耳許で囁かれなければ意識しなかったのに!
 これは布団、掛け布団。
 暖房機能のある高級品……。

 頭の中で必死に唱える。
 腕枕や腰に絡みつく腕なんて考えちゃダメ!

 なんて思って、目を閉じていると、いろんなことがありすぎで疲れていた私は、あっという間に眠りに落ちた。





 ………………っ!

 パチっと目が覚めた。
 私は寝つきもよければ、寝起きもいい。

 なので、昨夜は変な夢を見たなーなんて思いません………。
 だいたい、寝ているのは地べただし、後ろには暖かい布団……いや、ライアンの存在をひしひしと感じるし………っていうか、寝る前は腰にあった手がいつの間にか私の胸をつかんでるんですけど……。
 お尻に当たってる熱い塊は、もしかしなくても、アレよね?

 カーッと顔が熱くなる。
 でも、頭の後ろからはスースーと穏やかな寝息が聞こえるから、ライアンは寝てるはず。
 男の人の生理現象なのかな?

 身じろぎすると、「んー」とライアンがつぶやいて、より密着するように抱き直された。
 ついでに、胸がやわやわと揉まれる。

「ひゃあ!」

 思わず、悲鳴をあげると、「どうした?」と今度は覚醒したようなライアンの声。
 いやー、耳許で囁かないで!
 夢魔になってから、感度がよくなってるようで、声だけでゾクッとするから。

「あの……手が……胸に……」
「あぁ、悪い。触り心地のいいものがあると思ったら……」

 彼は手を退けてくれたけど、その前に名残惜しそうにひとなでした。

「ひゃんっ」

 快感が走って、恥ずかしい声をあげてしまった。
 お尻に当たってたモノが大きくなった。

「お前、なんて声を出すんだ……」

 心なしか掠れた声でライアンが言った。

「だって……」

 そうか、わかった!
 私、飢えてるんだ!
 たぶん、それで夢魔的本能で男の人を誘ってる……。

「ライアン、私……」

 そう言って、くるりと身体を反転させると、目の前にライアンの顔があって、固まる。
 しかも、その空色の瞳は熱っぽかった。

 しばし見つめ合い、私は我慢できずに、彼の口に飛びついた。
 舌を入れ、彼の唾液を貪る。

 美味しーい!

 彼の唾液はハチミツのように甘くて、いつまでも舐めていられるようだった。
 他の人ともこんな感じなのかな?

 夢中で味わってると、彼もそれに応えてくれて、舌を絡めたり、上顎を舐めたりしてきた。
 そして、手は胸を揉んでる!

 服の裾から手を入れ、ブラをずらして、直接触られている。
 胸全体をやわやわされながら、指で乳首をクリクリされると、頭の中が快感で埋め尽くされて、お腹の奥からとろりと流れ出してくるものを感じた。
 その溢れる泉に彼の熱い塊が擦りつけられる。

「んっ………んんっ……んーっ……」

 んんー、気持ちいいっ!
 初めての感覚。
 そんなところ、自分でも触ったことないのに、
 気持ちよくて、背中から首筋がゾワゾワする。
 自分からも身体を押しつけるように動いてしまった。
 ふと、蜜が溢れるちょっと上に彼のモノが当たると、痺れるような快楽を覚えることに気がついた。
 身体がビクンと跳ねる。
 ライアンもそれに気づいたようで、角度を変えて、そこに彼のモノを擦りつける。

「んんっ! んんっ! んんんーーッ!!!」

 パアッと頭が真っ白になる。
 キュッと足の指が丸まる。

(なに!? なに、今の?)

 私はびっくりして、彼の口を離した。

「イッたんだよ。自慰もしたことないのか……」

 ライアンが苦笑した。

 これが噂の……。
 昨日の気持ちよさと段違いの快感。
 それにしても、私の身体ってずいぶんいやらしくなってない?
 してないのに、イッちゃうなんて。

 そんなことを考えてると、ライアンの言葉に現実に引き戻される。

「なぁ、俺ももう限界……。で、お前の困りごとと俺の困りごとを解消する方法を考えついたんだけど。お前の処女を奪わずに」
「えっ、本当ですか?」

 前のめりに食いつく私に、ちょっと目を逸らして、ライアンは言った。

「お前の胸で俺のを擦るだろ? 出そうになったら、お前がそれを飲む………いや、自分で言ってて、鬼畜だな。忘れて……」
「いいですよ……」

 私はかぶせるように言った。
 余裕のなさそうなライアン。
 そうしたのは私だ。
 しかも、強引にできたのに、ここまでして犯されても文句は言えなかったのに、彼はしなかった。
 そもそも私は夢魔だし、人権とかなさそうなのにね。
 昨日も途中で止めてくれたし、あれって男の人的にはキツかったんじゃないかな?
 今さら思う。

 昨日会ったばかりだけど、そんなライアンが嫌いじゃない。
 イケメンだし。
 彼のモノだったら咥えて飲んでも………うわあ………頑張ろう。

「……いいのか?」

 心底驚いたような表情でライアンが聞くので、私は頷いた。
 彼は私の様子を見ながら、ブラごと服を脱がした。
 胸がぷるんと揺れる。
 我ながらエッチな胸よね……。

 ライアンが唾を呑んだ。
 そして、自分のズボンを下ろすと、彼の立派なモノが飛び出てきた。

 わー、初めて見た……。
 赤黒くって、デコボコしてて、思ったより大きい。
 それがお腹に付きそうなくらいそそり立っている。
 小さい頃、お父さんのを見たことはあったけど、こんなんだっけ?

 思わず凝視していると、ライアンがちょっと赤くなった。

「す、すみません」
「いや……」

 見ているところを見られて、私も真っ赤になる。
 ライアンは、その屹立を私の胸に挟んだ。
 そして、私の両手を取ると、胸を寄せるようにして押さえさせられた。

「こうしておいてくれないか?」

 照れくさそうに彼が言うので、私はコクコクと頷いた。

 私の胸の間から、彼の先端が覗いてて、とてもエッチな光景だ。
 しかも、両手で胸ごとそれを挟んでるなんて!

 ライアンは、私の頭の両側に手をついて、ゆっくり腰を動かし始めた。
 先端が胸から出たり入ったりする。
 私は気持ちよくはないけど、彼が目を細めて、気持ちよさそうにしているので、安心した。

 彼のモノから透明な滴が滲み出てくる。

 むくむくと欲望が湧いてきて、近くに来た時に、私はぺろりとそれを舐めてしまった。

「うわっ」

 ライアンが声をあげた。

「ごめんなさい!嫌でした?」
「嫌なわけない……。驚いただけだ」

 さらに滴が出てきて、我慢できずに私はそれをペロペロ舐める。
 だって、美味しい。
 唾液より濃厚で、ジャムみたい。
 キスした時より身体に栄養が入ってきた感じがする。

「うぅっ………」

 気がつくと、ライアンが身悶えていた。

「どうしたんですか?」
「………嫌でなかったら、咥えてくれないか? 舐められるだけだと、かえってツラい……」
「わかりました」

 彼につらい思いをさせてるとは気がつかなかった。
 悪いことをしたわ。
 私は彼のモノを手に持って、先端を咥えた。
 大きくて、先っぽを口に入れるだけで精一杯だ。

 これをどうするんだろうと彼を見上げると、私の手を取って、残りの部分を握り直させると、自分の手も添えた。

「手で扱きながら、吸ったり舐めたりしてくれ」

 私は頷いて、ちゅーっと吸ってみる。
 すると、さっきの美味しい滴が出てきたので、夢中でチュッチュッと吸った。
 手はライアンが動かして、一緒に前後に扱いていた。

 彼が眉を顰めていたから、下手だからよくないのかなと思って、目を上げて窺うと、ライアンは「むちゃくちゃ気持ちいいよ」と頬をなでてくれた。

 よかった。
 吸ってばかりいたけど、さっき舐めてとも言われたので、今度は舌で舐めてみる。
 先っぽだけでなく、口の中に入ってる全体を味わうように舐め回したら、ドクンと動いた。

 手の動きが速くなって、「………出すぞ」と彼がつぶやいた瞬間、ドクドクドクっと口の中に粘り気のある液体が出てきた。
 私は懸命にそれを飲み干す。

 美味しい!美味しい!美味しい!

 何日も何も食べてないところにご飯が与えられたかのように、必死にそれを吸収する。
 それは芳醇なクリームみたいで、後から後から出てくるのを喜んで飲んで、出てこなくなっても、彼のモノに吸いついて、全部吸い出した。

「ごちそうさまでしたっ!」

 とても満足してにっこり笑って言うと、複雑な表情をしたライアンと目が合った。
 口は離したけど、手はまだガッツリと彼のモノを握りしめていた。

「わ、わあ! ご、ごめんなさい!」

 慌てて手を離す。
 そして、さっきまでの痴態を思い出して、カァーッと顔が赤くなり、さっと青褪めた。

 私、なんてことを………!

 今の私には、人間だった私の意識と夢魔になった私の本能とが混在してる。
 さっきまでは本能に完全に支配されていた。

 私、やっぱり夢魔になったんだ。
 恋もしてないのに、キスをして、フェラをして、精液まで飲んで……。
 これからこうしてどんどん淫乱になっていくのかな?
 夢魔としては正しいことなんだろうけど、自分が自分でなくなっていくようでとても怖かった。

「どうしたんだ? やっぱり嫌だったのか?」

 ライアンが気遣わしそうに私を見た。
 いつの間にか、頬を涙が流れ落ちていた。

「違うんです……。私、やっぱり夢魔になっちゃったんだなと思って。こんなこと、今までの私ならしなかったのに、こうやって、どんどん淫乱に変わっていっちゃうのかなと思ったら、怖くて……」

 彼は涙を指で拭って、抱きしめてくれた。

「ごめん。俺が調子に乗ったから……」
「違います。ライアンは何も悪くないです」
「でも、キスくらいにしとけば、お前がこんな風に泣くこともなかった……」
「いいえ、生きるためにはどうせいつかは………」

 それを思ったら、より一層泣けてきた。
 生きるためには人の精が必要だ。
 私は、好きでもない人の精を啜り続けるのかな?
 そうするしかないのかな?

 わんわん泣き続ける私をライアンは抱きしめて、優しくなでてくれた。
 私が落ち着くまで。



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