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素材採取①

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「はぁ~~、濃かった……」

 教本をパタンと閉じ、ラフィーはベッドに仰向けに倒れた。

 ラフィーは一眠りするだけのつもりが、目覚めたら夕方近くで、慌てて食事を作り、それを食べたあと、教本を読んでいた。

 快感が増したときに採取した方が効能が上がるということで、教本には事細かに男性を悦ばせ、精を採る方法が書かれていた。また、後半は愛液の採取法になっていて、自分の体のことながら、女性器について詳しい知識のなかったラフィーはクラクラした。

(あれをやるの? 私が? リュオに?)

 想像するだけで顔が赤らんでくる。
 しかも、男性は繊細なので、失敗すると今後の性生活に差し支えることもあるなんて書いてあるから、責任重大だ。

(リュオに恥をかかせないようにしないと!)

 改めてすごい事態になっていることを実感して、ベッドの上を転がって、ラフィーは悶えた。

(何時ぐらいに行ったらいいのかな?)

 リュオの部屋に行くと考えただけで、ドキドキと心臓がうるさくなり、顔が熱くなってくる。

「はーっ、とりあえず、お風呂に入ろう」

 ラフィーは溜め息をついて、浴室に行った。



 一方、リュオの方は、体力回復薬と魔力回復薬を飲み干すと、魔札作成に戻った。
 今夜に備えて、さっさと終わらせなければと集中する。
 でも、たまに手を止めては、なんて大胆な申し出をしてしまったんだと心中悶えた。
 他の男にさせるわけにはいかないという一心だったが、ラフィーが自分のものに触れると考えると滾りそうになり、慌てて魔札作りに戻った。

(それにしても、バカみたいだな、僕は)

 クロードに使うかもしれない惚れ薬なのに、こんなことまでして手伝うなんて、とリュオは自嘲した。
 ラフィーの周りをうろついて、相手にされず、でも離れられない自分を滑稽だと思う。
 そろそろケジメをつけるべきなのかもしれない。
 はぁと溜め息をついて首を振り、余計な考えを追い出して、リュオはまた魔札を描き進めた。
 それからは集中したおかげで、昼にはノルマを達成した。

「終わった……」
「えぇー、マジで!?」
「俺、まだあと20枚は残ってるぞ。手伝ってくれよ」
「やだね。僕だって昨日は徹夜したんだ。もう休ませてもらうよ」

 リュオがつぶやくと、同僚が騒ぎ出したが、彼はそっけなく「お先」と言うと、作業室を出た。

 自室に戻ると、リュオはベッドに倒れ込んだ。
 体が泥のように重い。

(さすがに疲れた)

 ここ二日ほとんど寝ていなかったリュオは、そのまま気を失ったように寝てしまった。

 はっと目覚めると、外はすっかり暗くなっていた。

「何時だ?」

 焦って時計を見ると七時過ぎだった。
 急に空腹を覚えたリュオは食堂に行くことにした。
 手ぐしで髪を整え、部屋を出る。食堂に入ると、女性たちがざわついた。いつもに増してアンニュイな彼の様子に、それも素敵と熱い瞳で見つめられる。
 いつものことなので、まったく気にすることなく、リュオは久しぶりにまともな食事をとった。

(ラフィーは何時頃来るんだろう? 時間を決めておけばよかった。そもそも来てくれるのか?)

 料理を口にしつつも、思うのはラフィーのことばかりで、リュオは落ち着かなく、さっさと食事を片づけると部屋に戻った。

(風呂に入っておいた方がいいよね?)

 この仕事着を着てすでに長時間経っている。しかも、このまま寝てしまい、汗もかいている。
 リュオは急いで入浴した。手早くだけど、丁寧に体を洗う。このあとのことを考えてしまうと、まずい事態になってしまいそうなので、必死で他のことを考えようとする。
 髪の毛を乾かしていると、控えめにノックする音が聞こえた。
 リュオの心臓が跳ねた。


 
 何時に行くか迷っていたラフィーは、部屋の中をうろうろ歩き回った。早過ぎてもリュオが困るだろうし、遅過ぎても迷惑だろうし、と散々迷ったあげく、九時に行くことにした。ちょっと早いかとも思ったが、待っている間の心臓がもたないと思ったのだ。
 バクバクする心臓を抑え、リュオの部屋のドアをノックした。

 ドアはすぐ開いて、リュオが出迎えてくれる。風呂上がりなのか、髪が少し湿っていて、艷やかなチョコレートブラウンの髪がいつもより美味しそうとラフィーは思った。

「こ、こんばんは」
「あ、あぁ」

 かすれた声で挨拶するラフィーに、同じくぎこちないリュオ。それでも、彼は身をよけて、ラフィーを招きいれると、戸を閉めた。
 二人とも頭が真っ白になって、しばしお互いを見つめて立ち尽くした。

「え、えっと、プラムジュース持ってきたんだけど、飲む?」
「あぁ。飲む。プラムジュースは好きだ」
「ほんと? よかった。これ、私が作ったの。もし気に入ったなら、今度またあげるわ」
「作った? そんな手間がかかるもの、もらってもいいのか?」
「手間なんて全然。氷砂糖と酢に漬けとくだけだから。それにリュオにはいろいろ手伝ってもらったし、これからも……」

 ラフィーの言葉に、二人ともこれから行うことを意識して、かぁああと赤くなった。

 リュオがグラスを用意して、ラフィーのジュースを注ぐ。 
 喉がカラカラに乾いていた二人は、ほとんど一気にジュースを飲み干してしまい、またお互いを見つめた。
 しばしの沈黙のあと、リュオが唾を呑み込むと口火を切った。

「す、するか?」
「う、うん」

 リュオの声がけにラフィーが頷いて、二人はベッドの方へ移動した。
 
「で、どうすればいい?」

 行為のイメージが掴めていないリュオは首を傾げた。
 
「ベッドに腰かけて。あとは私がするから、リュオはリラックスしてて」

 リラックスなんてできるわけないだろと思いつつ、リュオは言われた通りにベッドの端に浅く腰を下ろした。
 彼の前にラフィーが跪く。
 真っ赤な顔をしながらラフィーは、リュオのズボンに手をかけると下着ごとずり下ろした。
 半勃ちのリュオのものが現れると、間髪入れず、ラフィーがそれをえいっと口に含んだ。

「あ、え! うぅッ……」

 いきなりそんなことをされるとは思っていなかったリュオは驚き、そして、呻いた。ラフィーの口の中は温かくてとても気持ちよかったのだ。
 彼のものが一気に大きくなる。
 口の中のものが突然膨張して、今度はラフィーが驚いた。口の中に収まりきれず出そうになるのを慌てて手で押さえた。
 そして、教本に書いてあったことを思い出す。

(舌で舐め上げたり、先っぽを舌で包んだり吸ったりするのよね?)

 指示してあった通りにしてみたが、合っているのかどうかわからず、ラフィーはチラッとリュオを見上げた。
 彼は上気した顔で、なにかに耐えるように眉をひそめ、半ば目を閉じていた。

(気持ちいいのかしら?)

 その表情だけではラフィーには判別できなかったが、そこで、はぁと甘やかな吐息が漏れ、リュオに快感を与えられているのがわかって、ラフィーはほっとした。
 口からはみ出た部分を手で扱きつつ、口を上下に動かしてみると、リュオが呻いた。
 もう一度、目を上げると、その視線に気がついたリュオが目を開けた。

「ハッ、ハァ……、あんた、マジでこんな……最後までやる、つもり、か…………ウッ……」

 壮絶に色っぽい顔で、リュオがラフィーを見下ろす。
 銀色の瞳には濃く翠が滲み、色気が滴る。
 その見たこともない表情に胸がトクンと高鳴ったけど、口を大きなもので塞いでる彼女には答えられない。
 かろうじてコクリと頷くと、リュオがまたハァ……と甘い吐息を漏らす。
 舌を必死で動かして、先っぽを舐め回すと、ちょっと苦いような味がした。

(これが先走りというものかしら?)

 手に握りしめた熱くて硬いものがビクビクしている。
 それを上下に動かして扱きながら、チュウッと吸ってみる。

「うッ……」

 リュオがまた呻いた。
 切れ長の目を伏せて、快感に目許を染めている彼はとても艶っぽい。
 しかも、そんな顔をさせているのが自分だと思うと、なんだかラフィーはうれしかった。

 リュオの脚の間に座り込んでいる彼女の頭に、ふいに手が置かれた。
 ラフィーがチラリと見上げると、リュオと目が合う。
 銀と翠に彩られた瞳がとても綺麗だった。
 普段は温度を感じさせないクールな瞳が熱っぽく彼女を見るので、ラフィーはゾクリと身を震わせた。彼女の中からなにかがとろりと溶け出してくる。

 彼の手は、褒めるかのようにラフィーの頭を撫で、彼女の頬に落ちかかる黒髪を掬い上げて、耳にかけた。
 耳の縁をスーッと撫でた指は、ラフィーの頬を愛おしそうにくすぐる。

(違うのに……そういうんじゃないのに……)

 切なくなったラフィーは彼の瞳の磁力からどうにか視線を引き剥がすと、目をつぶり、口の中のものに集中した。



(ラフィー……)

 自分のものに奉仕するラフィーが愛おしくて切なくて、リュオはどうにかなりそうだった。
 彼女にしたら、ただの素材採取なのはよくわかっている。自分になんの感情もないことも。
 それでも、彼女の髪を撫で、頬をくすぐり、彼女に触れずにはいられなかった。
 ラフィーの潤んだエメラルドグリーンの瞳、いっぱいに広げて、自分のものを呑み込んでいる淫らな唇。彼を翻弄する温かく湿った舌。
 この状況に現実感はないくせに、欲情だけは募る。
 ラフィーによって高められた昂りはそろそろ限界で、リュオは切羽詰まって言った。

「ラフィー、離して! もう出る!」

 そう言われて、ラフィーは口を離すと急いでリュオのものに革袋をかぶせた。
 ドクッ、ドクッ……。
 熱い迸りが革袋の中で弾けた。

 ラフィーの手の中でビクビクするのが止んだので、終わったのかなと彼女はそっと革袋を外した。
 萎えたものを布で拭いてやると、リュオが赤い顔で目を逸した。

「くっ……。なかなかの屈辱感だな……」

 すぐ身繕いすると、リュオは思わずつぶやいた。

「ごめん!」

 ラフィーが謝ると、「いいよ。自分でやるって言ったんだから」と顔をしかめつつも、首を振った。

「これで素材はあとひとつなんだろ?」
「うん」
「そういえば、あとひとつってなんなの?」

 何気なく聞いたリュオの言葉に、ラフィーが真っ赤になった。
 それを見たリュオはまだ怪しい素材が必要なのかと、ラフィーの肩を掴んだ。

「なんなんだ? また難しいものなのか?」
「だ、大丈夫。自分のだから……」
「自分の? まさか……」

 思い当たるものがあって、リュオも頬を染めた。

「そう、だから、大丈夫……」
「大丈夫って、自分でやるのか?」
「当たり前よ! そんなの誰かに頼めるわけ……」
「僕の助けは必要ない?」
「えっ?」

 キョトンとしているラフィーをベッドに引っ張り上げ、リュオはそのまま彼女を押し倒した。

 
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