騎士団長の幼なじみ

入海月子

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ラディアンの想い①

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「ううん、うれしい! ラディアン、私も好きよ! ずっとあなたが好きだったの!」

 喜びに目がくらむ。
 ギュッと彼に抱きついて、むせび泣いた。
 うれしくて後から後から涙が出てくる。
 ラディアンはなだめるように私の髪をなで、流れる涙をついばんだ。
 チュッチュッと顔中にキスを落とされ、気分が落ち着いてくると、とても恥ずかしくなってきた。
 裸で泣き顔を晒してるなんて……。

 私が泣き止んだのを見て取ると、ラディアンは説明してくれた。
 彼は私が七歳のとき、異性として好きなのに気づいて、自分の頭を疑ったそうだ。当時、ラディアンは十七歳だった。
 
「他に目を向けようと、告白してきた令嬢たちと付き合ってみたが、心を動かされるのはマールだけだった」

 私の横にゴロンと寝転び、天井を眺めながら、ラディアンはぽつりぽつり語った。私の髪に指を絡めながら。
 そんなことを言われて、心が浮き立つ。

「そんなに前から……」
「あぁ」

 そういえば、一時期、ラディアンが荒れていたときがあったわ。急に彼がそっけなくなって、さみしく思った。でも、いつの間にか元に戻っていた。

「足掻いて、離れようとして、無理だと気づいた」

 ラディアンは騎士の訓練や任務に打ち込んだ。
 こんな気持ちは誰にも言えなかったそうだ。親友の兄にさえも。
 子どもを愛する変態だと思われないか、ビクビクしていたらしい。

「でも、俺は子どもが好きなんじゃなくて、マールが好きなだけだったんだ。君はどんどん女らしくなり、目が離せなくなった。それでも、この想いは伝えられなかった。君に嫌われたくなかったんだ」

 それにどうせ子爵の三男である彼には伯爵令嬢の私に求婚する資格はないとあきらめていたと言う。
 しかし、邪念を仕事で昇華するうちに、階級が上がっていって、そこで、ひとつの可能性に気づいた。
 騎士団長になれば、私にプロポーズする資格ができると。
 ラディアンは騎士団長を目指し、私が成人するまで、隣の仲のいいお兄さんでいようと思ったらしい。

「もう! だから、あんなに誘惑したのに、なびいてくれなかったのね」

 私は横向きになって、ラディアンに文句を言った。
 彼はちらっと私を流し見た。

「誘惑、してたのか?」
「もう自信を失くすほど、何度も」
「それに耐えるのがどんなにキツかったことか! 無邪気に煽ってくれると思ってたよ」
「平然としてたように見えたわ」
「そりゃあ、俺にもプライドがある」

 そう言ったかと思ったら、ガバッとラディアンが体ごとこっちを向いた。
 体を引き寄せられる。
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