騎士団長の幼なじみ

入海月子

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誘惑②

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 怖い目つきで睨まれて、ビクッとする。深い青の瞳が夜空のような暗い色になっている。
 ラディアンにこんな目で見られたことはなく、ショックで唇が震えた。
 それでも私を放そうとしない彼がなにを考えているかわからず、その鋭い目を見つめる。
 私の反応に表情を緩めたラディアンは、今度は熱く見つめ返してきた。
 
「悪い。だが、どれだけ俺が我慢して我慢してここまで待ったと思ってるんだ!?」
「我慢?」
「君はただ兄として俺を慕っているだけだと思ってた。だから、君が成人したら、全力で口説こうと思ってた」
「口説くって……」
「あぁ、十二時を回ったな。十八歳の誕生日おめでとう、マール。リクエスト通り、これから君を抱く」
「え?」

 話が見えなくてキョトンとする私を、いきなりラディアンが押し倒して、口づけてくる。
 大きな彼の口にかぶりつかれて、キスというより食べられちゃいそうで慄く。
 それなのに、ラディアンはさっさと私の下着を脱がしていった。

「ちょっと待って!」
「待たない」

 あちこちにキスを落としながら、どんどん脱がされ、あっという間に一糸まとわぬ姿になった。
 状況に頭がついていかず、ただ呆然とラディアンを見上げると、切れ長の目を細めて、彼がつぶやいた。

「どれだけ君に触れたかったことか……」

 大きな手で胸を掴まれる。
 やわやわと揉まれて、かぁっと全身が熱くなる。
 ラディアンに裸を見られていると、今さらながら気がついた。

「ほら、俺の手にぴったりだ」
「どういうこと? さっきまであんなに拒否してたのに」
「マールが誘ってくれたんだろ?」 
「侯爵と結婚する前にお情けをくれるの?」
「だから、それはダメだって言ってるだろ! 侯爵のことは俺がなんとかする! そのために騎士団長になったんだからな」
「えっ、そのために?」

 どうして私の結婚を阻むために騎士団長になったのかと目をパチクリさせる。
 ラディアンは私の頬を優しくなでて言った。

「マール、愛してる。君が欲しくて、君と結婚する権利を得るために騎士団長になったんだ。ただの子爵の三男に伯爵令嬢は娶れないからな」

 信じられない言葉が聞こえて、息が止まった。驚きすぎて、まじまじと彼を見つめるしかできない。
 
(愛してるって言った? ウソでしょ?)

「……いつから?」
「君がずっと幼い頃から。……気持ち悪いか?」

 衝撃から醒めて、掠れ声で尋ねると、ラディアンはそう言い、目を伏せた。私の反応を見たくないというように。
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