悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!

入海月子

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あなたの瞳に囚われて

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「ジュリアン様、ルビアナ様、おはようございます」
「おはよう」
「おはよう、セシル」

 背後から声がして、振り返るとにこやかなセシルだった。
 昨日まで後ろめたかったけど、今日は憂いなく微笑める。
 あとでセシルに直接話を聞いてみようと思っていたら、彼女がススッと寄ってきて、ささやいた。
 
「いつもに増して、お二人の仲がよろしいんじゃないですか? あとで聞かせてくださいね」

 からかい混じりの言葉に、かあっと頬が熱くなった。
 セシルがくすくす笑った。

 大事な友達の邪魔になっていなくて、本当によかった。
 その笑顔を見て、心から思った。




 さすがに、家に帰してもらえた平日。慣れない行為にクタクタになっていた身体での1週間はつらかった。
 
 授業が終わって、ようやく週末だとほっとしていると、ジュリアン様が来た。私と一緒にいたセシルに目を向ける。

「セシル、週末の買い出しはルビーとじゃなくてフランと行ってくれる?」

 この週末は文化祭の買い出しにセシルと行く約束をしていたのだ。
 セシルは頷くと、極上の笑みを浮かべてフランを見た。

「し、しかし……」

 セシルの満面の笑みを向けられて赤くなりながらも、なにも聞かされていなかったらしいフランは難色を示す。

「僕はルビーと部屋に籠っているから護衛は必要ないよ。ルビーの代わりに行ってくれる?」
「そういうことであれば……」

 フランが了承した。
 へ、部屋に籠る?
 嫌な予感しかしないんですけど。
 顔を引き攣らせた私に、ジュリアン様が囁く。

「セシルの恋を応援しないといけないでしょ?」
「……そうですね」

 陽だまりのような笑顔でジュリアン様が私を見た。水色の宝石のような瞳が私を囚える。こんなジュリアン様に勝てるはずがない。

 その週末、私がジュリアン様に新しいことを教えられている間に、セシルは押して押して押しまくって、見事恋を成就させていた。

 愛を得たセシルは強力で、祈りを捧げると、それ以降、地震が起きることもなくなり、冷夏も解消して、いつもの暑い夏がやってきた。

 さすが聖女だわ……。

 ゲームの世界のように、セシルは国を救って、甘いトゥルーエンドを迎える。
 スチルのように微笑み合う相手は、もちろんフランだった。

 長年悩んでいたことがあっという間に解決して、私は唖然とした。

 私の恋人も親友もいろんな意味ですごい……。



 ***



「ルビー」

 まばゆい人が私を呼ぶ。
 振り向くとジュリアン様が私を見ていた。

 春のような穏やかな人かと思ったら、真夏のギラギラ太陽にもなって、そして、誰よりも私を愛してくれている人。
 その彼が私を見つめる。 

「ジュリアン様」

 私はもうあなたをあきらめなくていいのね?
 ずっと二人でいられるのね?

 もう、あの力はいらない。

 私は愛しい恋人に微笑んだ。




 ―fin―


 

 
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