悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!

入海月子

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覚えてるの?

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「昔はかわいいおねだりをいっぱいしてくれたのに、ある時を境に全然してくれなくなって、久しぶりにお願いされたかと思えば……」

 ジュリアン様はふうっとため息をつく。
 え? え? 昔の命令も覚えているの?
 私は目を見開いて、ジュリアン様を見上げるばかりだった。

「お願い通り、君を抱くよ。でも、僕が君を忘れることなんてあり得ない。セシルのもとへ行けとか、なんの冗談だい?」

 私の催眠術が効いていないの?
 え、いつから?
 混乱して、私はジュリアン様を見つめる。

「ま、待って」
「待てない」

 ジュリアン様はまた私に口づけた。舌を絡められて、唾液を注ぎこまれる。
 溜まった唾をこくんと呑み込むと、ジュリアン様が満足そうに笑った気配がした。

 確実にジュリアン様には私の催眠術が効いていない。
 うそでしょ? ということは、本当にジュリアン様は私のことが好きなの?
 
 かぁっと顔が赤くなる。
 でも、ジュリアン様のキスは止まらない。それどころか、手が胸を触り始めた。

「んん! んんっ」

 確かめたくて、待ってと言おうとするのに、口を塞がれて言葉が出ない。
 ジュリアン様の手が私の胸をわしづかみして、揉みしだく。胸のてっぺんが布地と擦れて快感を伝えてきた。

 いやっ、こんな誤解されたまま抱かれるのは。いやっ。

 私は首を振ってなんとか口を離そうとするけど、絡みつく舌がそれを許してくれない。
 ドレスをずらされて、胸が露出する。直接ジュリアン様の手に触れられて、身体が歓喜に震える。
 ジュリアン様は口を塞いだまま、私の胸を捏ねくり回した。その手の動きに身体の奥が疼いてくる。
 なに、これ…?
 誤解を解きたいのに解けないもどかしさと初めての快感に翻弄されて、涙があふれてきた。

 突然、唇が離された。

「……っあ、はぁ……はぁ……」

 せっかく話すチャンスなのに、私は荒い息をこぼすしかできなかった。
 ジュリアン様が指でそっと涙を拭ってくれる。でも、その瞳は真夏の太陽のように熱いままだ。

「ずっと待っていた。君が僕を信じてくれるのを。好きだと言い続けていれば、きっといつかは信じてくれると思っていた。でも、君が僕から離れようとするなら話は別だ。僕は君の身体に僕を刻み込んで離れられなくするよ」

 そして、また熱い唇が落ちてくる。
 ジュリアン様がそんなことを思っていたなんて知らなかった。そんな思いをさせていたなんて……。

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