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私を好きになって!
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前世を思い出した頃、ちょうどジュリアン様と婚約したばかりだった。
公爵令嬢である私は、同じ歳のジュリアン様と条件がちょうどよく、彼の十歳の誕生日に婚約が発表された。
コンスタンツ家は中道派なので、政治的にも問題はなく、あっさり決まったらしい。
それまでも面識はあったけど、それからは婚約者として定期的にお会いすることになった。
その頃のジュリアン様は控えめに言って天使、リアルに言うと、誰もが見惚れないことがないほど光り輝くエンジェルだった。
悪役令嬢の記憶に不安になっていた幼い私は、会うたびにジュリアン様にむちゃなお願い……というか催眠術をかけていた。
「お願い……私のこと嫌いにならないで!」
「うん、ならないよ」
「ぎゅうして!」
「うん、喜んで」
「私のこと、好きになって!」
「うん、好きだよ」
そのたびに、ジュリアン様は一瞬驚いた表情の後、蕩けるように甘い天使の微笑みで、私の要求に従ってくれた。
そして、『好きになって』という術は八年経っても解けておらず、王立学校に入学してもこうしてジュリアン様は私を好きでいてくれている。
毎日食堂で一緒にランチを取って、休みはスケジュールが許す限り一緒にいて、溺愛されていると言われるくらいには。
ジュリアン様の背後には近衛騎士の護衛が付き、宰相の息子のリカルド様、騎士団長の息子のダンガルド様、今日は弟のラミレスまでいた。つまり、主要な攻略対象が一同に会していた。
見目麗しい方々が勢揃いしているけど、この一年ほとんど同じメンバーでお昼を取っているので、さすがに皆見慣れて、キャーキャーいう人はいない。
この一角に近寄る人もいないけどね。
本来なら主人公のセシルを取り巻いて、私を断罪する人達なんだけど、私だって、うかうかと断罪ルートに進まないように努力した。
というか、催眠術の効果が怖くて、物腰がとても丁寧になった。
だって、ちょっとでも命令っぽくなったら従われちゃうんだもん。
ささやかな冗談でさえも。
恐怖よね。
細心の注意を払って、行動してきた。
そのおかげで、高貴な生まれなのに驕ることなく常に穏やかで優しいと評価は上々で、攻略対象とも友好な関係を築けている。
でも、ジュリアン様への催眠術は取り消すことはできなかった。
だって、だって、好きなんだもん。
こんなに優しく甘く好きだと言ってくれている人を自分から手放すことなんてできない。
催眠術のおかげだと思うと、ときどき虚しさを感じるけどね。
公爵令嬢である私は、同じ歳のジュリアン様と条件がちょうどよく、彼の十歳の誕生日に婚約が発表された。
コンスタンツ家は中道派なので、政治的にも問題はなく、あっさり決まったらしい。
それまでも面識はあったけど、それからは婚約者として定期的にお会いすることになった。
その頃のジュリアン様は控えめに言って天使、リアルに言うと、誰もが見惚れないことがないほど光り輝くエンジェルだった。
悪役令嬢の記憶に不安になっていた幼い私は、会うたびにジュリアン様にむちゃなお願い……というか催眠術をかけていた。
「お願い……私のこと嫌いにならないで!」
「うん、ならないよ」
「ぎゅうして!」
「うん、喜んで」
「私のこと、好きになって!」
「うん、好きだよ」
そのたびに、ジュリアン様は一瞬驚いた表情の後、蕩けるように甘い天使の微笑みで、私の要求に従ってくれた。
そして、『好きになって』という術は八年経っても解けておらず、王立学校に入学してもこうしてジュリアン様は私を好きでいてくれている。
毎日食堂で一緒にランチを取って、休みはスケジュールが許す限り一緒にいて、溺愛されていると言われるくらいには。
ジュリアン様の背後には近衛騎士の護衛が付き、宰相の息子のリカルド様、騎士団長の息子のダンガルド様、今日は弟のラミレスまでいた。つまり、主要な攻略対象が一同に会していた。
見目麗しい方々が勢揃いしているけど、この一年ほとんど同じメンバーでお昼を取っているので、さすがに皆見慣れて、キャーキャーいう人はいない。
この一角に近寄る人もいないけどね。
本来なら主人公のセシルを取り巻いて、私を断罪する人達なんだけど、私だって、うかうかと断罪ルートに進まないように努力した。
というか、催眠術の効果が怖くて、物腰がとても丁寧になった。
だって、ちょっとでも命令っぽくなったら従われちゃうんだもん。
ささやかな冗談でさえも。
恐怖よね。
細心の注意を払って、行動してきた。
そのおかげで、高貴な生まれなのに驕ることなく常に穏やかで優しいと評価は上々で、攻略対象とも友好な関係を築けている。
でも、ジュリアン様への催眠術は取り消すことはできなかった。
だって、だって、好きなんだもん。
こんなに優しく甘く好きだと言ってくれている人を自分から手放すことなんてできない。
催眠術のおかげだと思うと、ときどき虚しさを感じるけどね。
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