悪役令嬢にそんなチートな能力を与えてはいけません!

入海月子

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私の能力②

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 突然、頭を振ったりブツブツ言い出したりした私を不審に思って、ばあやが話しかけてきた。

「ルビアナ様、どうかされましたか?」

 混乱の真っ最中だった私は「ちょっと黙ってて!」と強く言った。
 すると、ばあやは一瞬、ぼんやりしたかと思ったらそれ以上は問わず口をつぐんだ。

 え? 

 その不自然なばあやの動きに驚く。
 ばあやは、私の様子がおかしいと絶対黙っていないはずで、納得いくまで追求する質なのだ。そのおかげで、数々のイタズラや隠し事を白状させられたものだった。
 そのばあやが『黙って』という一言で本当に黙るはずはない。

「ばあや?」

 ばあやは黙ったまま私を見る。

「なんでしゃべらないの?」
「……………」

 聞いてもばあやは答えない。

「ねぇってば! なにかしゃべってよ!」

 すると、ばあやは何事もなかったように話し始めた。

「どうされたのですか? そんな泣きそうなお顔をして。せっかくのかわいいお顔が台無しですよ?」

 どういうこと?
 まさか、私の命令に従ってるの?


 他の人にも試してみた結果、なぜか私は人を操ることができるようになっているのがわかった。
 私が命令すると、相手は無条件に従ってしまうのだ。しかも、無意識なので、私が命令したことも覚えていないらしい。
 なんてチートな能力。
 転生したボーナスなのかしら?
 悪いことし放題じゃない!

 とはいえ、二十八歳の事務員だったこととゲームのこと以外はサッパリ思い出せない。だから、二十八歳の頭脳があるかというとそうでもなく十歳の思考のままだった私は、大したことも思いつかず、有効利用することはなかった。
 ひとつのこと以外。

 この力のことを便宜的に催眠術と名づけた。
 前世の言葉っぽい。
 催眠術ならいつかは解けるのかもしれないけど、私の力は何年経っても解ける気配はなかった。

 実際――――。


「僕のルビーは最近憂鬱そうだね。なにかあった?」

 パァッと光が射し込んだ気がした。
 それほど煌煌しい存在が声をかけてきて、18歳になった私の思考を破った。

 声の主を見ると、発光しているようなフワフワのプラチナブロンドに、春の陽射しのように柔らかな空色の瞳の美しい人がふんわりと微笑んだ。
 ジュリアン様だ。


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