勇者の幼なじみ

入海月子

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ゴルダス修道院

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「そうしたら、一刻も早くゴルダス修道院に向かってほしいの。勇者様の命が危ないので」
「セフィルはそんなに危険な状態なんですか⁉」

 息を呑んで尋ねると、王女はつらそうな顔でうなずいた。

「ちょうど私の従者の馬車があるから、それで送ってあげるわ。家族との別れを済ませたら、すぐ出発しましょう」
「今からですか⁉」

 さすがに驚いたけど、セフィルの命がかかってると言われたら、一刻も早く出発する方がいい。
 荷物はなにも要らないと言われ、私はお父さん、お母さんに話をするやいなや馬車に乗せられた。
 窓から涙を流すお父さんとお母さんの姿を見て、私も泣いた。
 でも、セフィルを救うためには仕方がない。
 ごめんね、お父さん、お母さん……。
 切なくて顔を覆った。


 ──*──


 馬車に揺られること、三日間。
 私はゴルダス修道院に着いた。
 修道院にはエマーナ王女から連絡が行っていたようで、院長に丁重に迎えられた。

「ゴルダス修道院へようこそ。お若いのにつらいことがあったそうですが、ここで心静かに暮らしましょう」
「?」

 どんな紹介をされたのか、同情するような目で見られた。
 セフィルの呪いを解くためにここに入るのを気の毒に思ってくれるのかもしれない。
 私はぺこりと頭を下げた。

 灰色の修道服を支給されて、部屋に案内される。
 飾りもなにもない白壁の部屋だったけど、広さは十分あり、下手したら私の部屋よりも大きいぐらい。
 簡素な木のテーブルとイス。ベッドには真っ白なシーツ。窓にはペールブルーのカーテンがかかっていた。
 清潔感漂う部屋だけど、ここで一生を過ごすにはさみしげな部屋だった。
 でも、神の花嫁にはなにを持ち込むことも許されていないらしい。
 唯一許されているのは図書室の本を読むことだけ。
 私はベッドに腰かけて、溜め息をついた。

 明日、断髪をして、正式に神の花嫁になるらしい。

 赤茶のふわふわの髪の毛を触ってみる。 
 唯一、セフィルが気に入っていた気がするこの髪をばっさり切ってしまうのはやっぱりさみしかった。

 夕食は食堂で一堂に会してとるようで、そこで、みんなに紹介された。
 ほとんどが中年以降で、若くても三十代かなと思う人がひとりいるだけだった。
 さすが神の花嫁だけあって、物静かな人たちばかりだった。
 食事は当番制で作るみたいで、パンを作る機会がありそうでうれしい。
 お祈りをしてから簡素な食事をとって、片づける。
 皿洗いも当番制ということだったけど、説明がてら、やらせてもらった。
 ドジな私だけど、今までお皿だけは割ったことがないのが自慢だった。
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