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言い合いをしている二人に頭を下げて今のうちに去ろうとしたら、ノエリア王子に背後から首元を掴まれた。
いや、猫じゃないんだからそういう持ち方は止めてくださいよ、と言おうと振り返れば、見ようによっては爽やかな笑みを浮かべているように見えるのだが、私には怒り心頭している姿にしか見えず何も言えなくなった。


「何勝手に居なくなろうとしてんだぁ?お前は」


「い、いやぁ、その、お二人とも国へ帰られるのですよね?それならそろそろお別れだろうなぁ、と思いまして?」


「はぁ?」


心底何言っているのか分からないというような表情でそう言われたのだが、私だって意味分からないのですけども。
その後ろで顔に手を当てて溜め息を吐いているアルノルフは、何に溜め息ついているのかさっぱり分からない。


「お前本気で分かってないのか?」


「はい………」


素直にそう答えれば、ノエリア王子まで溜め息を吐いた。
何、私だけが分かっていない感じなの?
周りを見たら少しは分かるのかと思って、周辺を見渡せば。


「っ?!」


そこには、物陰に隠れた状態で今まで一緒に屋敷で過ごしてきた兵が数名私たちを取り囲んでいたのが見えたのだ。


「やっとかよ」


私を掴んでいない手で頭をガリガリと掻いたノエリア王子は、お前が屋敷を出てきたときから居たぞ、と言った。


「………全然気付かなかったです」


「まぁ、普通は気付かないだろうな」


兵が居る方を睨み付けるノエリア王子は、面倒くさそうに言うと私を離して、私の前に出た。


「大方、必要なくなった元婚約者を消せとかそういう指示でもしたか?あわよくば喧嘩を売った俺を始末しろと追加で言われでもしたんだろうな」


さっきより兵の数増えてるし、と腰に下げていた刀を手にしながら言えば、その隣に同じ様に刀を構えたアルノルフが立った。


「挑発させるからだ、全く」


「それに乗ってくる辺り、まだまだだよな。少しくらい流すことを覚えろよ、あのお坊っちゃん」


二人とも不敵に笑いながら今にも襲ってきそうな兵たちを睨み付けているが、私はそれどころではなかった。
『必要なくなった元婚約者を消せ』?
つまり、ブライアンは屋敷を追い出した後、一人になった私を殺そうとしていたということ?
あんなに一緒に過ごしてきたのに、ブライアンの邪魔にならないようにしてきただけなのに、多くは何も望まず、あくまでも『飾りの婚約者』を演じてきただけなのに。
そんなに私の存在って邪魔でしかなかったの?
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