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何を話し出すつもりなのかと深く被ったフードの下から部屋の中を見れば、ノエリア王子は腰に手を当て、椅子に深く座るブライアンを見下ろした。
笑っていた顔から一気に表情を失くし、オレンジ色の綺麗な瞳を細める。
形の整った薄い唇を開けた瞬間、まるで刃でも首元に突き刺さすような声で言った。


「俺、昔から言っていたよな?視野を狭めるな、って。そのうち大事なものが手からすり抜けていくぞって何度も何度も」


ブライアンは眉間に皺を寄せたまま、それを黙って聞き、その後、何が言いたい?と言いたげに片方の眉を上げた。
それを見たノエリア王子は鼻で笑い、分からないなら言いと言って背を向け、こちらに向かって歩き出した。


「念願だか何だか知らねーし、興味も全くないが、婚約したんだってな。おめでとうは言わねぇよ。祝う気持ちサラサラねーし。じゃあな」


その後ろでブライアンが何か怒っていたようだが、周りが騒がしくなったせいでその声が聞き取れなかった。
大丈夫だろうかと、いつもの癖で思っているといつの間にか隣の位置まで来ていたノエリア王子に腕を捕まれた。


「行くぞ」


無表情でそう言ったノエリア王子は、そのまま腕を掴んだまま屋敷の外へ出て、橋を渡り切った所でいきなり。


「マント返せ」


と言って強引に被っていたマントを奪われた。
自分で被せといて勝手に奪うとか何なのだろうか、この人は。


「返しますから、ちょっと待ってくださいよ?!」


絡まりかけた部分をほどいて手渡せば、何も言わずに受け取られ、それをそのまま羽織った。


「さて、帰るか。やりたくもない挨拶も終わったことだし」


「あれは挨拶だったのか?」


深く被ったフードの下で座った目をしながらアルノルフがそう言えば、ギロッとそれを睨み付けるようにノエリア王子は見た。


「挨拶だろ、俺流の」


どこが挨拶だったのか、ただブライアンを挑発しただけのようにしか見えなかったが。
それより、何故私は彼らと行動を共にしているのだ。
たまたま橋で再会して、連れて行かれただけで、いつまでも行動を共にする理由がない。
何処に行って何をすべきなのか分からないが、とりあえずいつまでも屋敷周辺に居るわけにもいかないから、民家のある方へと向かうとしよう。
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