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お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいたのだから。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。


「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」


そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
けれど、こんな早くに言われるとは流石に思っていなかったけれど。


「そっか。マリー王女と上手く行ったのね」


「あぁ、だからこの屋敷からも出て行ってくれ」


後もう少しでマリーがこの屋敷に来る、と彼は言い私を早く外に出そうと急かしてきた。


「おめでとう、ブライアン。マリー王女とお幸せに」


そう言った私を一切見ず、ブライアンは部屋を颯爽と出て行ってしまった。
もう用のない私を相手にする時間すら勿体ない、ということだろう。
さて、いつまでもここに居座ることは出来ないし、こんな状態では家には帰れそうにないからどうしたものか。
とりあえず部屋に戻って荷物を詰めながら決めようと、扉を開けば、もう私が使用していた部屋にはマリー王女の荷物が数多く届けられているのが見え、もうここは私の居場所ではないのだと実感してしまった。


「…………ブライアンの馬鹿」


たとえ、お飾りだったとはいえ、最後のお別れくらいちゃんとして欲しかったよ。
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