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ベイリー家の平均寿命は5歳と言われている。
何故そんなにも幼くして亡くなってしまうのか。
それには様々な理由がある。
1つ目、権力争いに巻き込まれてしまうから。
ベイリー家はロペスという国の王族で、様々な権力を保持している。
皆がその権力を欲する中で、将来それを手に出来得る人物を恐れた人物たちが力を持つ前の子供を狙うのだ。
2つ目、身内から襲撃されるため。
平均寿命の短いベイリー家は、一族を絶えさせないために子どもの数を増やしている。
誰が長生きできるか分からないため、少しでも母数を増やし貴重な血を絶えさせないようにしているのだ。
その家族内の関係性もどろどろしたもので、我が子が一番優れているだの、血筋がどうのと争いばかり起こっていた。
その争いは親同士だけでなく、当人同士にも影響し、争うが生じた上に命を落とすことがあるのだ。
他にも理由があるが、大まかな理由はそんなものだろう。
「ライト。お前はこの国の次期当主になるんだ。だが、それを公表してしまうとお前の命が狙われやすくなるんだ。だから、表向きにはメイソンを次期当主として公表する。そして、お前たちが20歳を迎えられたとき、そのときは正式にお前を、ライトを当主として公表することにする。それまでライトはこの屋敷から離れ、当主となる教育を受けて欲しい」
メイソンとは、ライトの双子の弟で二人で並ぶとどちらがメイソンなのかライトなのか分からないと母も昔言っていた。
つまり、そんなメイソンを代役として利用すると父親ーー国王は言っているのだ。
「私の可愛い可愛いライト。分かってくれるね」
本当の当主となりうる人材を、危険な屋敷から遠ざけ、育て上げ、立派な次期国王として誕生させるつもりなのだと。
そんなこと3歳の子供に言って理解させようなどと言う方が無理な話だが、3歳にしては様々な経験を嫌なほどしてきたライトには分かってしまった。
「はい、おとーさま」
そうライトが答えれば、国王は目尻を和らげ、ライトの小さな頭を豪快に撫でた。
「いい子だ。最後にひとつ。今話したことはライトと私だけの秘密だ。絶対に他の人に言ってはいけないよ。いいね?」
「わかったよ、おとーさま」
「いい子だ。さぁ、そうと決まれば馬車を準備しよう。ライトも出かける準備をしておいで」
「………はい、おとーさま」
ライトは手に持っていたボールをぎゅっと抱きしめ、俯いた。
それから月日が経過し、そろそろ次期当主の発表がされようとしていた。
ライトはお忍びで自国に足を踏み入れ、久しぶりに幼少期の頃に暮らしていた屋敷へと足を踏み入れた。
そこは昔とは大きく異なり、明るく光に満ち溢れていた。
昔は皆が暗い顔をしていたが、今はみんなの表情が豊かで笑い声が響き渡っていた。
何故こんなにも変わったのかライトは気になりつつも、奥へ奥へと姿を消しながら進んでいく。
するとそこには成長したメイソンと従者であるイザヤがいた。
二人は昔から仲良く、親友とまで言われている二人だった。
二人は今も仲が良いのかとライトが思いながら見守っていると、並んで歩いていた二人が急に抱き合い始めた。
それにライトは始めこそ驚いたが、どこかでいつかこうなるのではないかと思う自分が居たことにも驚いた。
ーーーーでも、あの二人、俺が国王になってしまったら、今までのようにはいられなくなってしまうんだよな。
そう思うと、胸が苦しくなり、ライトはその場から姿を消した。
『今、メイソンがいる場所にライトは行くんだ。そうすれば、ライトの手にしたいものが何でも手に入るんだぞ』
国王は笑ってそう言って言っていたが、ライトは嬉しくなかった。
人の居場所を奪ってまで国王になりたいと思えないのだ。
どれを取っても国王としての素質はメイソンの方が優れていたし、ライトがあの場所に戻ったからといっても何も国とっても、ライトにとっても良いことはないのだと思っていた。
ーーーーあの二人も、俺さえいなければこの後もずっと、ずっと一緒に居られるよな?
ならば、とライトはこの国に戻らない決意をした。
大事大事に育ててくれた国王には申し訳ないが、これも国のため、大切な兄弟、友達のためになるだろう。
だから。
ライトはその日、もといた場所へは戻らず、行方を眩ませることにしたのだ。
何故そんなにも幼くして亡くなってしまうのか。
それには様々な理由がある。
1つ目、権力争いに巻き込まれてしまうから。
ベイリー家はロペスという国の王族で、様々な権力を保持している。
皆がその権力を欲する中で、将来それを手に出来得る人物を恐れた人物たちが力を持つ前の子供を狙うのだ。
2つ目、身内から襲撃されるため。
平均寿命の短いベイリー家は、一族を絶えさせないために子どもの数を増やしている。
誰が長生きできるか分からないため、少しでも母数を増やし貴重な血を絶えさせないようにしているのだ。
その家族内の関係性もどろどろしたもので、我が子が一番優れているだの、血筋がどうのと争いばかり起こっていた。
その争いは親同士だけでなく、当人同士にも影響し、争うが生じた上に命を落とすことがあるのだ。
他にも理由があるが、大まかな理由はそんなものだろう。
「ライト。お前はこの国の次期当主になるんだ。だが、それを公表してしまうとお前の命が狙われやすくなるんだ。だから、表向きにはメイソンを次期当主として公表する。そして、お前たちが20歳を迎えられたとき、そのときは正式にお前を、ライトを当主として公表することにする。それまでライトはこの屋敷から離れ、当主となる教育を受けて欲しい」
メイソンとは、ライトの双子の弟で二人で並ぶとどちらがメイソンなのかライトなのか分からないと母も昔言っていた。
つまり、そんなメイソンを代役として利用すると父親ーー国王は言っているのだ。
「私の可愛い可愛いライト。分かってくれるね」
本当の当主となりうる人材を、危険な屋敷から遠ざけ、育て上げ、立派な次期国王として誕生させるつもりなのだと。
そんなこと3歳の子供に言って理解させようなどと言う方が無理な話だが、3歳にしては様々な経験を嫌なほどしてきたライトには分かってしまった。
「はい、おとーさま」
そうライトが答えれば、国王は目尻を和らげ、ライトの小さな頭を豪快に撫でた。
「いい子だ。最後にひとつ。今話したことはライトと私だけの秘密だ。絶対に他の人に言ってはいけないよ。いいね?」
「わかったよ、おとーさま」
「いい子だ。さぁ、そうと決まれば馬車を準備しよう。ライトも出かける準備をしておいで」
「………はい、おとーさま」
ライトは手に持っていたボールをぎゅっと抱きしめ、俯いた。
それから月日が経過し、そろそろ次期当主の発表がされようとしていた。
ライトはお忍びで自国に足を踏み入れ、久しぶりに幼少期の頃に暮らしていた屋敷へと足を踏み入れた。
そこは昔とは大きく異なり、明るく光に満ち溢れていた。
昔は皆が暗い顔をしていたが、今はみんなの表情が豊かで笑い声が響き渡っていた。
何故こんなにも変わったのかライトは気になりつつも、奥へ奥へと姿を消しながら進んでいく。
するとそこには成長したメイソンと従者であるイザヤがいた。
二人は昔から仲良く、親友とまで言われている二人だった。
二人は今も仲が良いのかとライトが思いながら見守っていると、並んで歩いていた二人が急に抱き合い始めた。
それにライトは始めこそ驚いたが、どこかでいつかこうなるのではないかと思う自分が居たことにも驚いた。
ーーーーでも、あの二人、俺が国王になってしまったら、今までのようにはいられなくなってしまうんだよな。
そう思うと、胸が苦しくなり、ライトはその場から姿を消した。
『今、メイソンがいる場所にライトは行くんだ。そうすれば、ライトの手にしたいものが何でも手に入るんだぞ』
国王は笑ってそう言って言っていたが、ライトは嬉しくなかった。
人の居場所を奪ってまで国王になりたいと思えないのだ。
どれを取っても国王としての素質はメイソンの方が優れていたし、ライトがあの場所に戻ったからといっても何も国とっても、ライトにとっても良いことはないのだと思っていた。
ーーーーあの二人も、俺さえいなければこの後もずっと、ずっと一緒に居られるよな?
ならば、とライトはこの国に戻らない決意をした。
大事大事に育ててくれた国王には申し訳ないが、これも国のため、大切な兄弟、友達のためになるだろう。
だから。
ライトはその日、もといた場所へは戻らず、行方を眩ませることにしたのだ。
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