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「それは違うと思います」
ドミニク殿下が返答するよりも早く、私が間髪入れずに否定していた。
「ドミニク殿下は実際に起きたことを踏まえ、事実をお伝えしているだけでローレンスだから庇っていただいているわけではございません」
「そんなの分からないじゃない?!」
ローランドが縛っているから身動きが取れていないけれど、これが自由に動けていたらまた突き飛ばされるか頬を叩かれるか何かされていても可笑しくはなかったな、と頭の片隅で思いながら口を開いた。
「分かります。ドミニク殿下のお心は常にアルレート様にございます。好きだから、大切だからと甘やかしたり、見てみぬふりは誰でも出来ます。ですが、ドミニク殿下のお立場からそれは出来ないのです。いつかはこの国を治めるお方であり、アルレート様はそのお方のお隣に寄り添うお方で、ドミニク殿下同様に周りから様々な目で見られるようになります。もし、そのお方が誤った方向や過ちを犯したときにはそれを正すのもドミニク殿下の役割となるのです。好きだから甘やかすのではなく、好きだからこそ、大切だからこそ厳しく接し正しくあるべき姿に導くことも必要なのだと私は思っています。通常、大切に思っていない方にはそんなことしませんからね」
ドミニク殿下は『私』にそんなことしてくれなかったし、見てみぬふりすらしていた人だ。
最終的に二人の邪魔な者となり、処刑されたこと過去を思い出してみれば、こんな風に直接会話し、どうすべきであるのか促してくれているドミニク殿下は、本当に『彼女』が大切なのだと分かる。
これが『私』と『彼女』の差なのだ。
「そうだぞ。アルレートとドミニク殿下がお互いを思い合っているのを俺とローレンスはよーく知っているし、他のご令嬢たちも知っていたさ。誰かに隙を与えたくない、脅威となる存在を遠ざけたいという気持ちも分かる。だが、アルレートが好きになったドミニク殿下という男は、ドミニクという一人の男でありながら次期王という立場でもある。ドミニク殿下を本当に好きなのであれば、ちゃんとその立場になれるような努力もしなければならないし、そのときの状況判断を正確にし、その場に相応しい行動を取れるようにしなきゃいけない。そうしていれば、今回のようにアルレートとドミニク殿下の間に入り込もうと考えたり、アルレートを消そうとなどする輩は出てこないと思うがな」
縛っていることを良いことにおいおい、と言いながら頬を人差し指でつつくローランドにアルレートはまた怒り出しそうだ。
「アルレート、すまない。俺からも謝ろう。一方的に君を責めてしまっていることは悪いと思っている。だが、やはり無抵抗な人間や人を傷つける言動を俺が許すわけにはいかないし、感謝すべき所に感謝の言葉を言えないのは、アルレートのためにはならない。アルレートが大切だからこそ、言っているんだ。どうか聞いてくれないだろうか」
ドミニク殿下が返答するよりも早く、私が間髪入れずに否定していた。
「ドミニク殿下は実際に起きたことを踏まえ、事実をお伝えしているだけでローレンスだから庇っていただいているわけではございません」
「そんなの分からないじゃない?!」
ローランドが縛っているから身動きが取れていないけれど、これが自由に動けていたらまた突き飛ばされるか頬を叩かれるか何かされていても可笑しくはなかったな、と頭の片隅で思いながら口を開いた。
「分かります。ドミニク殿下のお心は常にアルレート様にございます。好きだから、大切だからと甘やかしたり、見てみぬふりは誰でも出来ます。ですが、ドミニク殿下のお立場からそれは出来ないのです。いつかはこの国を治めるお方であり、アルレート様はそのお方のお隣に寄り添うお方で、ドミニク殿下同様に周りから様々な目で見られるようになります。もし、そのお方が誤った方向や過ちを犯したときにはそれを正すのもドミニク殿下の役割となるのです。好きだから甘やかすのではなく、好きだからこそ、大切だからこそ厳しく接し正しくあるべき姿に導くことも必要なのだと私は思っています。通常、大切に思っていない方にはそんなことしませんからね」
ドミニク殿下は『私』にそんなことしてくれなかったし、見てみぬふりすらしていた人だ。
最終的に二人の邪魔な者となり、処刑されたこと過去を思い出してみれば、こんな風に直接会話し、どうすべきであるのか促してくれているドミニク殿下は、本当に『彼女』が大切なのだと分かる。
これが『私』と『彼女』の差なのだ。
「そうだぞ。アルレートとドミニク殿下がお互いを思い合っているのを俺とローレンスはよーく知っているし、他のご令嬢たちも知っていたさ。誰かに隙を与えたくない、脅威となる存在を遠ざけたいという気持ちも分かる。だが、アルレートが好きになったドミニク殿下という男は、ドミニクという一人の男でありながら次期王という立場でもある。ドミニク殿下を本当に好きなのであれば、ちゃんとその立場になれるような努力もしなければならないし、そのときの状況判断を正確にし、その場に相応しい行動を取れるようにしなきゃいけない。そうしていれば、今回のようにアルレートとドミニク殿下の間に入り込もうと考えたり、アルレートを消そうとなどする輩は出てこないと思うがな」
縛っていることを良いことにおいおい、と言いながら頬を人差し指でつつくローランドにアルレートはまた怒り出しそうだ。
「アルレート、すまない。俺からも謝ろう。一方的に君を責めてしまっていることは悪いと思っている。だが、やはり無抵抗な人間や人を傷つける言動を俺が許すわけにはいかないし、感謝すべき所に感謝の言葉を言えないのは、アルレートのためにはならない。アルレートが大切だからこそ、言っているんだ。どうか聞いてくれないだろうか」
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