広がる世界

mahiro

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「一応、言っておくが、荒巻は一ヶ月以上地方に撮影に出掛けてて、今さっき帰ってきた所だ」

宇佐美さんに面倒そうにそう言われ、繋がっていた電話を切られた。

「お前らの場合、電話じゃなくてしっかりと相手の顔を見て話した方が良いんじゃねーの？」

「顔を見たところで変わりませんよ。俺は」

「お前って結構頑固だな……」

「そうですかね？自分では頑固だと思っておりませんが」

そう俺が言うと、宇佐美さんは疲れたように去って行った。
それからどれくらいたっただろうか。
インターフォンが夜中だというのにうるさいくらいに鳴らされ、慌てて玄関に向かえば、全身黒の格好をした荒巻さんがいつになく真顔で玄関に立っていた。
今まで見てきた荒巻さんは、いつも元気で笑っているような印象が強いのだが、最後に見たあの凍てつくような表情や今のような表情は作り物のように感じられた。

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